【コラム・天風録】裏金化の黒幕は?

 ミステリーならば、迷宮入りしそうな事件の核心を知ると目された人物が、実は黒幕だったということか。自民党安倍派の政治資金パーティー裏金事件で、議員への資金還流が復活した経緯の一端が明らかになった▲パー券の売り上げを収支報告書に記載せず裏金化する還流は、安倍晋三元首相が2年前の4月に中止を指示した。ところが7月に安倍氏が銃弾に倒れた後、同派幹部の協議を経て再開された。腹心の下村博文元政調会長が事務局長に要求したという▲実態解明に向けた衆参の政治倫理審査会で、幹部らは「知らぬ存ぜぬ」を連発。下村氏も関与を否定した。「うそ偽りなく丁寧に説明する」と出席前は見えを切っていたのに▲元派閥会長の森喜朗元首相との確執を抱える下村氏。くだんの協議の後、派閥の新体制から排除された。それでもなお、安倍派が裏金の還流を続けたのはなぜか。もやもやを晴らすには関係者の証人喚問しかあるまい▲還流復活は下村氏のせいなのか。森氏は還流の起源に関わっていたのか。安倍氏は違法性を認識していたのか…。聞きたいことは山ほどある。ミステリーにつきものの伏線回収を抜きに、事件の幕引きは許されない。

© 株式会社中国新聞社