牛久沼、越水対策進む 堤防かさ上げ、監視カメラ 茨城

牛久沼周辺で進められる測量作業=龍ケ崎市稗柄町

昨年6月の大雨で1938年以来85年ぶりに越水した茨城県の牛久沼(谷田川)で、堤防かさ上げに向けた準備が進められている。越水の主要因が堤防部の地盤沈下とされたためで、県は本年度内に地質調査や設計を終える予定。堤防には監視カメラも新設するなど、ハード・ソフト両面の対策を急いでいる。

牛久沼の越水は、同県の龍ケ崎とつくば両市の計3カ所で発生。被害は龍ケ崎市で床上浸水2件、床下浸水20件。このほか、両市とつくばみらいの3市で水田計約200ヘクタールが水に漬かった。

有識者でつくる県の「牛久沼越水対策検討委員会」は昨年11月、越水の原因を堤防の沈下と結論付けた。地盤変動で越水した3カ所を含む計6カ所で、堤防が最大約70センチ沈下していたと指摘。当時は牛久沼から小貝川へ流れる八間堰(はっけんぜき)の水門工事が進められていたが、「浸水の主要因ではない」と判断した。

このため、県は沈下した堤防全6カ所のかさ上げを決定。現在は測量事業が進んでおり、地質調査や設計も本年度中に終える見通しだ。県は着工や完成の時期は未定としながらも「早めに取り組みたい」(河川課)と対応を急ぐ。

これらハード面に加え、地盤沈下した堤防周辺の4カ所に河川監視カメラを新設し、今月上旬からウェブ上で公開。八間堰には7月に水位計を1基増設し、計5基で監視・点検体制を強化する。

龍ケ崎市との協議を踏まえ、水防団の活動や住民避難のため避難発令の基準水位(暫定)も新設。湖面水位の上昇に応じ、市が「高齢者等避難」などの指示を出せるようにした。市は本年度に水のうや止水板などの資機材を配備する予定という。

牛久沼は洪水で大きな被害を及ぼす可能性のある河川に指定されておらず、越水当時は県と流域自治体で十分な情報共有ができていなかった。気候変動に伴う大雨は今後も続くとみられ、市防災安全課は「県との連携や情報共有を強化していきたい」としている。

牛久沼に隣接するうなぎ店店主、鈴木哲さん(60)は、越水で設備が水に漬かり現在も休業中。「土のうがあるから大丈夫だろう」と越水リスクの低減を感じているが、営業再開のめどは立っていないという。

© 株式会社茨城新聞社