トランス男性の友、助けることできたのでは LGBTQ支援に取り組む函館の団体代表

宮本真人さんの写真を見つめる北見伸子さん=4月、北海道函館市

 性的少数者(LGBTQなど)を支援する北海道函館市の市民団体「レインボーはこだてプロジェクト(RHP)」が活動を始めて5年が過ぎた。「二度と同じことを繰り返したくない」。代表の北見伸子さん(51)には、トランスジェンダーの友人を自死で亡くしたつらい経験がある。(共同通信=瀬尾遊)

 北見さんは2008年、市民参加型ミュージカルで、役者をしていた音楽家宮本真人さんと出会った。「みやも」の愛称で呼ばれ、当時21歳。ギターが得意で、周りを楽しませてくれる明るい人柄だった。一緒に劇を作るうちに仲良くなった。

 自認する性が男性だった宮本さんは、女性の体を持っていることへの嫌悪感などからうつ病や難聴を患い、13年11月、27歳で自ら命を絶った。亡くなる3日前にも公演があり「打ち上げの時は全く分からなかった。笑顔の裏で考えられないほどのストレスが積み重なっていたんだと思う」と北見さんは悔やむ。

 宮本さんは自らの苦悩について講演や執筆をするなど、性的少数者の支援活動をしていた。北見さんは宮本さんの母親から活動を引き継がないか打診されたが、専門家ではないからと一度は断った。

 しかしその後、ジェンダー問題に詳しい大学教授と知り合い、好きになる相手の性別に関する指向(Sexual Orientation)と自分の性別に関する認識(Gender Identity)を意味する「SOGI」の概念を知ったことで「性的少数者を巡る課題は自分事でもある」と考え直した。

 18年にRHPの活動を開始した。19年には性的少数者のカップルを公的に認定するパートナーシップ制度の導入を市長に直談判し、22年に実現した。

 北見さんが営む飲食店名物のロシア料理ピロシキをゲイの当事者と一緒に作って食べる交流イベント「ゲイピロ」は北海道内外で15回開催。「社会問題への意識が高い人だけでなく、単にピロシキを作りたい人にも当事者のことを知ってもらえるのが強み」と胸を張る。

 宮本さんが亡くなってから10年がたった。「RHPがあれば、みやもは亡くならなかったかもしれない。函館を誰もが自分らしく生きられる街にしたい」。北見さんは天の友に誓った。

宮本真人さんの著書を手にする北見伸子さん=4月、北海道函館市
宮本真人さんの著書とノート

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