“新しいマス”として期待のTVer、クリエイティブ視点で考える動画広告コミュニケーション戦略とは?〜TVer Biz Conference 2024<その3> / Screens

株式会社TVer(以下、TVer社)のオンラインカンファレンスイベント『TVer Biz Conference 2024』が、2024年4月25日に開催。民放公式テレビ配信サービス「TVer(ティーバー)」(以下、TVer)のサービス概況をはじめ、TVer広告の開発ロードマップ紹介、広告主や放送局の担当者らを交えたトークセッションが行われた。

この中から本記事では、トークセッション「クリエイティブ視点で考える動画広告コミュニケーション戦略」をレポート。アサヒビールの「アサヒ生ビール 通称マルエフ」におけるテレビCMの展開事例をもとに、広告主、広告会社、プラットフォーマーそれぞれの立場から、動画広告におけるクリエイティブ戦略を語る。

登壇者は、アサヒビール株式会社 マーケティング本部 コミュニケーションデザイン部 担当副部長・大場洋右氏、株式会社電通 クリエイティブディレクター/コピーライター・郡司 音氏。司会進行を株式会社TVer 広告事業本部 営業部部長・次郎丸達也氏が務めた。

TVer Biz Conference 2024レポート<その1>

TVer Biz Conference 2024レポート<その2>

■「日本に、ぬくもりを。」寄り添いのメッセージと“懐かしのナンバー”が生んだ人気

アサヒ生ビール 通称マルエフ」は、長らく一部の飲食店のみで愛され続けてきた生ビールを、約28年ぶりに缶で復活させた商品。2021年9月に発売された。

本商品のCMでは、竹内まりやさんが歌う「元気を出して」をテーマソングに、イメージキャラクターの芳根京子さん、松下洸平さんが「日本のみなさん、おつかれ生(なま)です。」「どんなに忙しくたって、ゆったりとした気持ちは忘れないように」と優しく語りかける内容が高い好感度を得ている。

「『日本に、ぬくもりを。』というマルエフのブランドパーパスを体現するコミュニケーションを作りたいと考え、郡司氏にCMの企画を依頼した」(大場氏)

アサヒビール株式会社 コミュニケーションデザイン部 担当副部長 大場洋右氏

「ビールは、飲んで元気になるのも一つの魅力だが、一日がんばったときに『ふ~』と息を抜ける、ハートを暖かくしてくれる存在でもある。ここからブランドパーパスと商品イメージを結びつける言葉として『Heart Warming Beer』というキーワードを導き、『日本のみなさん、おつかれ生です。』というコピーにつなげた」(郡司氏)

株式会社電通 クリエイティブディレクター/コピーライター 郡司 音氏

テーマソングの候補となった曲は100件超。その中から選ばれた「元気を出して」はいわゆる“失恋ソング”だが、郡司氏はラストのサビにあたる「人生はあなたが思うほど悪くない」というフレーズに着目。ブランドパーパスに通ずる寄り添いと肯定のメッセージを見出し、採用を決めたという。

「40代以上の方にとっては懐かしさを感じる曲だが、若年層の間でシティポップブームが再来しているいま、リアルタイム世代ではない20〜30代の方にとっても『なんかいい、懐かしい感じがする』と思ってもらえるのではないかと想像した」と大場氏。「失恋ソングとはいえ、あくまでCMとして割り切って、使用するワンフレーズでぬくもりが与えられれば、気にすることはないと考えた」と語る。

こうしたメッセージ戦略が功を奏し、「マルエフ」は発売から3日目にして一時休売せざるを得ないほどに注文が殺到。各種ブランドサーベイでも「ぬくもりや癒やしを感じる」という反応が多く見られたという。

■訴求シーン別、地域別、媒体別…… 売上につながるクリエイティブの出し分け

「“寄り添い”の形はブランドメッセージの表現そのものにとどまらず、デモグラや媒体ごとのクリエイティブを作り分けるというアプローチにも現れている」と次郎丸氏は述べ、これまでに行われたキャンペーンの事例をVTRで紹介する。

芳根京子さんが登場する「ちょこっと常連おつかれ生です」編では“馴染みの店”を舞台にマルエフを楽しむシチュエーションを描き、「ハーフ&ハーフ」編では同じアサヒ生ビールブランドである黒生とブレンドする飲み方を紹介。松下洸平さんが登場する「まろやかにおつかれ生です」編では味わいを印象的な言葉で表現するなど、消費者の親近感と欲求をかきたてる。

昨年12月からは「マルエフ」のリアルイベントとして、全国各地域に商品の意匠をほどこしたマルエフカーが出向く「出張マルエフ横丁」キャンペーンを展開。CMでもこれと連携する形で、各地域バージョンのクリエイティブが制作、放映された。それぞれ、地域の街中を移動するマルエフカーの風景と「マルエフ」で乾杯する街角の人々が描かれ、最後に芳根さんが「四国のみなさん、おつかれ生です」など、各地域の地元に向けて直接呼びかける内容となっている。

「より消費者のみなさんの近くに行って、手と手で伝わるぬくもりを感じていただきたいという思いから、リアルイベントとエリア別クリエイティブというアプローチをとった」と大場氏。さらに「それぞれCMで描かかれるシーンはすべて現地ロケにこだわった」という郡司氏の言葉をうけ、次郎丸氏は「いろいろな地域の方々それぞれに寄り添い、飽きさせない工夫がなされている」とコメントする。

株式会社TVer 広告事業本部 営業部部長・次郎丸達也氏

視聴媒体の特性に寄り添った対応として、CMメイキングの縦型動画バージョンを並行して配信する取り組みのほか、リアルタイムに起きた時事トピック(阪神タイガース日本一)をいちはやく取り込んだケースも。

大場氏も「CM配信後、関西のとあるスーパーでインストアシェアが約1.5倍となるなど、商品の出荷量も前年比100%を大きく超える勢いで増えた」とし、「トレンドが一気に変わるのを感じた」とコメント。「すごく売りに直結する広告となった」と振り返る。

■これからは「寄り添いと包摂の両輪」多様化時代の“新しいマス”として期待されるTVer

「マルエフ」CMは、TVer配信でも特徴的なクリエイティブを展開。ドラマの最終回配信の中で芳根さんが「キャストのみなさん、おつかれ生です」とキャスト陣に呼びかけるものや、11月22日“いい夫婦の日”限定で松下さんが「いい夫婦の日、マルエフでゆったり過ごしませんか?」と呼びかけるバージョンが制作された。

「TVerは、配信される番組と芳根さん・松下さんのようにブランドイメージをまとったキャスト、そして広告との三位一体で効果的な展開を行いやすい媒体であるとかねてから思っており、その効果をピンポイントで発揮する形を狙った」と郡司氏は語る。

視聴体験の多様化がいっそう進む中、「マルエフ」が今後目指す動画コミュニケーションの形とは何か。次郎丸氏の問いかけに大場氏は「動画コンテンツをとりまく視聴環境や媒体の特性、トレンドを捉えていきたい」と話す。

「メーカーとして、さまざまな消費者コミュニケーションを通じて価値提供をしていきたい。その結果、商品を購入いただき、売上が上がっていく形を目指せたら」(大場氏)

一方、「明日朝起きたら、極端に言えば30分後に時代が変わっていてもおかしくない今、マルエフが提供するぬくもりの形も柔軟に変わり続けていかなければならない」と郡司氏。「ブランドパーパスの大事な部分は変えず、ぬくもりを時代にアジャストさせていくためにも、媒体を上手に活用していきたい」と力を込める。

「さまざまな価値観へ細分化して寄り添える時代だからこそ、個々の価値観へ寄り添うエンタメと、社会に対してあらゆる価値観を包みこむ“大きなエンタメ”を媒体社と一緒につくっていきたい」(郡司氏)

「出稿主の立場からすると、TVerが持つ3500万UBというリーチの大きさ、広告の完視聴率の高さは強い魅力」と大場氏。「我々の商品特性の1つは、買おうと思えば毎日でも買える商品であること。日常と密接なテレビの存在感は、私たちにとってはまだまだ大きい」と強調し、「テレビとTVer両方での重複接触や、逆にそれぞれでのクリエイティブの出し分けなど、いろんな楽しみを増やしていくアプローチを一緒に手掛けていきたい」と展望を述べる。

これを受けて郡司氏は、媒体としてのTVerを「デジタル時代における最適化のアプローチとテレビのメディアパワーを併せ持つ、まさにデジタルとマスの融合媒体」と評し、「希望的観測として、“より新しいマス”となってほしい」とコメント。次郎丸氏も「いただいた期待にお答えできるよう、我々も日々精進していきたい」と意気込みを述べ、セッションを締めくくった。

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