26歳は、大卒なら社会人4年目、高卒なら8年目。仕事に慣れて余裕が出てくる時期です。投資に挑戦したり、副業を始めたりする人も多いでしょう。また、結婚や出産といったプライベートの大きな決断をする機会も増えます。しかしこの時期に、お金の知識をしっかりと持っている人はどれほどいるでしょうか。20代の税理士は0.6%しかいない中、23歳で税理士となった安江一勢氏の著書『26歳の自分に受けさせたいお金の講義』(すばる舎)より、一部を抜粋して紹介する本連載。安江氏が、人生における重要な選択の際に後悔しないためのお金の知識について解説します。
「老後のための貯金」は必要ない
「将来、受け取れる年金とは別に2000万円の貯金が必要」
これは、2019年に金融庁が発表をした報告書で明らかになった「老後2000万円問題」の大まかな概要です。当時ニュースなどでも大々的に取り上げられ、多くの人が「老後のお金を準備しておかないといけないんだ」と感じたことでしょう。
ただ、この報告書を読み解いてみると、前提条件に「マイホームを持っていること」「住宅ローンは払い終わっていること」「老人ホームなどの費用は含まれていないこと」などが設定されているため、この条件を満たしていない人たち(つまり、ほとんどの人たち)にとっては、老後資金は2000万円では足りません。
いまの20代の方が年金を受給する時期に、どれくらいの年金を受け取れるかが不透明であると考えると、老後資金を国に頼ることは期待せず、自分で準備しておいたほうがよいでしょう。
では、この老後資金を準備しようと考えたとき、あなたはどのような方法を取りますか?
このとき「それなら、老後のために貯金をしよう!」となった方は要注意です。老後のための貯金ほど、ムダなものはないのです。
老後資金を準備する方法は「貯金」だけではありません。老後でもお金が入ってくるような仕組みをいまから準備しておいたり、老後で使うお金を運用で準備しておいたりと、いろいろな方法があります。
そして、さまざまな方法のなかで、老後のために銀行や現金で貯金をすることがもっとも悪手です。これから物価が上昇し、貨幣価値が下がっていくことを考えると、何十年先に使うお金を現金で貯めておくことは、貯金をすればするほど損をしてしまうということです。
多くの人が「とりあえず貯金」をする理由
老後のための貯金は必要ありません。とくに、20代では過度な貯金をする必要はないのです。貯金をするくらいなら、使って、経験や体験に変えていったほうが後々の人生において財産となります。
まして、老後のために貯金をして、いまそのお金を使えないのであれば、あなたは老後のためにいまを生きていることになります。そんな無機質な生活は自分らしい人生とは言えないのではないでしょうか。
老後の備えは、貯金以外の方法でしっかりとおこないつつも、老後の生活はまた老後が差し迫ったときに考えましょう。
時代は、いまから想像ができないほど、技術も考え方も働き方も変わっているでしょう。そんな不確定な未来よりも、いまとちょっと先の未来をどれだけ充実させるかを考え、お金を配分していきましょう。
なお「貯金をしておけばいい」というのは、ひと昔前の古い常識です。いまの時代、その選択はお金の知識がある人からすれば、むしろ非常識な行動です。
多くの人が「とりあえず貯金」をするのは、それが正解だからではなく、その方法しか知らないからです。知識がないからこそ、取らざるを得ない選択になってしまっているのです。それでは損をしてしまいます。
貯金をすることで損をしてしまわないためにも、現代の貯金の常識を学び、正しい貯金の考え方を身につけていきましょう。
安江 一勢
税理士