ベトナムで住宅開発に携わる海外開発事業部の駐在員に聞く!現地での働き方・暮らし方

国内のみならず、東南アジアやアメリカなど海外5カ国で23の不動産開発プロジェクトを手掛けている西鉄。今回は、大規模な住宅開発が進んでいるベトナム・ホーチミンに駐在する社員をクローズアップする。

2015年にベトナムに進出した西鉄は、2020年までに3つの開発プロジェクトを完了。さらに現在は5つのプロジェクトが進行中だ。現地でどのように働き、暮らしているのかリアルな声を聞いた。

ベトナム駐在社員の働き方

現在ベトナムの事務所に駐在しているのは、ベトナム駐在員事務所長兼アセアン事業統括の春山さんと、係長の西村さんの2名。ほか、現地スタッフ2名を採用し、西鉄はナムロン社(現地法人)と現地で設立した共同事業会社で開発事業を進めている。

2023年1月に西鉄に入社した西村さんは現在33歳。若くして開発の最前線に立つ西村さんに、働きがいや駐在生活について話を聞いた。

「MIZUKI」。分譲マンション約4,000戸、戸建て約100戸。敷地面積は約26ha。ベトナム国内でも大規模な開発(阪急阪神不動産およびナムロン社との共同事業)
ホーチミン市中心街より車で約30分の「AKARI」。2019年から販売を開始。分譲マンション約5,000戸、敷地面積は約8.5ha(阪急阪神不動産およびナムロン社との共同事業)
左から西村さん、春山さん、辰巳さん。「WATERPOINT(ウォーターポイント)」のモデルハウス前で

現地ではどんな業務を担当しているのですか?

(西村さん)
現地で設立した共同事業会社の事業パートナーであるナムロン社さんや阪急阪神不動産さんとともに、複数のプロジェクトを進めています。なかでも西鉄は、共同事業会社における資金(予算)管理を主に担当しています。

具体的にはどんな業務を?

(西村さん)
日本では、一般的に住宅事業と言えば用地取得、企画、開発、販売、管理、アフターといった部門ごとに部や課を置くことが多いかと思いますが、ベトナムの駐在員は2人なので、事業に関わるすべての工程をマネジメントしています。

今後のプロジェクトを左右する重要な役割ですね。

(西村さん)
プロジェクトの一部は、共同事業パートナーであるナムロン社さんに業務委託をしているので、行政との交渉や、設計業務、建築・販売計画の策定および顧客との窓口は彼らが担っています。
西鉄の駐在員は、ファイナンス面の業務が中心ではありますが、工程や予算の管理、建築・販売における改善提案や各種方針決定など、多岐に渡ります。ほかにも、内容に応じて現地で判断可能なものは瞬時に判断し、本社へ報告・承認が必要なものは丁寧に本社へ報告し、意思決定を仰ぐ必要があります。マーケットの動きに置いていかれないように推進していくことを心がけていますね。

1日のスケジュールを教えてください。

オフィスでの業務の様子

(西村さん)
基本的には、日本で働くのと同じです。朝は8時ごろ出社して、業務が落ち着けば18時ごろに退社。現場が動いているので、基本的には毎週各プロジェクトの状況を確認しています。また、ナムロン本社の一区画に事務所を構えていることもあり、定期的な会議以外にも頻繁にナムロン社さんと打ち合わせをしています。

建設現場を視察する西村さん

(西村さん)
日本との時差はマイナス2時間(日本より2時間遅れ)なので、日本とオンライン会議がある時は、朝7時(日本時間9時)に業務がスタートすることもあります。最初は慣れなかったのですが、今ではすっかり日常です。

現地では英語? 日本語?

(西村さん)
共同事業会社で日本語を話せる秘書を雇っているので、彼女らがいる会議の場合は日本語を使用することもありますが、ナムロン社さんとの会話は基本的に英語で行いますし、駐在員事務所採用の現地スタッフとのコミュニケーションはすべて英語ですね。阪急阪神不動産さんの担当者は日本人なので当然日本語です。

会議中の西村さん(右)と春山さん(左)

コミュニケーションで大変なことはありますか?

(西村さん)
日本もベトナムも英語が公用語ではないので、お互い英語で話す時はコミュニケーションに苦労することもあります。特に、法律や建築に関する専門的な話になると複雑なのですが、母国語ではない言語を使っている状況はどちらも同じ(笑)。だからこそ、互いに相手の言いたいことや想いを汲み取ろうと配慮しながらやり取りをする空気ができていて、良い関係性が築けていると感じています。
また、ナムロン社のスタッフさんにはベトナム語しか話せない方もいらっしゃるので、そんな時は西鉄のベトナム人スタッフに通訳をお願いしています。

事務所スタッフとの集合写真
開発に携わるメンバーと食事へ
スタッフのTanさん(左)とTrinhさん(右)

実は、西鉄に入社する以前は、私鉄系の企業で国内外の住宅および都市開発に従事していたことがある西村さん。

西鉄に入社した理由は?

(西村さん)
前職で担当したさまざまな開発事業のなかで、海外での住宅開発も経験し、そこで初めて海外事業の面白さや難しさに直面しました。しかし、他業務との兼務という形での関わり方であったり、事情があって海外事業を縮小することになったりと、自分の中で自信をもってやりきったと言える状態になる前に、駐在を経験することなく海外事業の業務から離れることになり、心残りがありました。
そこから数年後、ある時、2022年1月に西鉄に入社して、ベトナムに駐在しながら東南アジアの事業統括をしている春山さんから「西鉄でいっしょに海外開発事業を進めてみないか?」と声を掛けてもらったんです。
春山さんは、実は前職でもお世話になっていた元上司。また、香山さんをはじめ西鉄の社員には前職の時からお世話になっていました。こんなチャンスはなかなかないと思い、転職を決めました。

迷いはなかった?

(西村さん)
自分自身の迷いよりも、家族の存在のほうが大きかったですね。「妻はどう思うかな?」とか「子どもにとってどうだろう?」というのはもちろん考えました。でも、妻に相談してみたら「そんな風に言ってもらえることなんて滅多にないんだし、駐在となれば子どもにとっても良い経験になるはずだし、いいんじゃないかな?」と賛成してくれて。
その言葉のおかげで、自分の中でも改めて決意ができた気がします。

現地での生活はどう?

駐在生活で気になることと言えば、現地での暮らし。実際にどんな場所に住んで、どのように生活しているのだろうか。

どんな所に住んでいるんですか?

(西村さん)
ホーチミン7区にあるマンションに住んでいます。この「7区」は近年開発が進んでいて、日本人学校もあることから、駐在員も多く暮らすエリア。私たちが普段出社しているナムロン本社も7区にあり、通勤にも便利な場所です。

主な交通手段は車?

(西村さん)
ベトナムと言えばバイクのイメージですが、安全面の観点から私たち駐在員は車移動です。自家用車ではなく、主に「Grab(グラブ)」という配車サービスを使って移動しています。アプリでスムーズに配車できて、料金は日本のタクシーの3分の1以下。かなり割安で便利なので、通勤だけでなくプライベートでも使っています。

食事はどうしてますか?

(西村さん)
家では妻が日本食を作ってくれます。ホーチミン市内にも一応日本食が買えるスーパーはあるのですが、3倍以上の値段がするので帰国したついでに食材を調達することもよくあります。しょう油やみそなど、調味料は特に重要ですね。

ベトナムの食材を買うことはある?

(西村さん)
生鮮食品については、安全と判断できる百貨店のスーパーなどで購入することはありますが、衛生面の懸念からいわゆるローカルのスーパーマーケットや路面の市場などで買うことはないですね。豚肉や鶏肉は、スーパーで購入するほか、冷凍で手に入るお店を見つけたのでまとめて購入してストックしています。

(西村さん)
お米の麺で作る「フォー」やベトナムのサンドイッチ「バインミー」、甘い味わいの「ベトナムコーヒー」など魅力的なグルメがたくさんあり、日本人に合う料理も多いと思います。

お休みの日はどう過ごしていますか?

(西村さん)
年中暑いのと、安全な場所が限られるため、場所を選びますが、子どもたちが遊べる場所で過ごすことが多いですね。遊具があるキッズカフェやキッズスペースもあり、知り合い家族と会って交流することもあります。

海外駐在後の変化、良かったことは?

ベトナムに来てよかったことは?

(西村さん)
ひと言でいうと、仕事面でもプライベートでも考えがシンプルになりました。「ベトナムで働く」という軸ができてから無駄がなくなったというか、雑音を気にせず目の前のことに集中できるようになった気がします。以前は周囲に気を遣いすぎな部分も多少ありましたが、そうした無駄な不安もなくなったと思います。

業務面ではいかがですか?

(西村さん)
表現が難しいのですが、オン・オフをうまく切り替えられるようになったともいえますし、時にはオン・オフという考え方そのものをなくして生活することも多く、業務とプライベートという枠を考えなくなったのが大きな変化かもしれません。
また、なるべく簡潔かつストレートに相手に表現するように意識するようになりました。日本だと、忖度や、時には遠回しに表現したほうが伝わる場面も少なくないと思います。しかし、こちらでは、臆せずはっきり伝えたほうが良い場面を多く見てきました。「言いすぎかな?」と思っていても、後で相手から感謝されることもあります。
ベトナムでは春山さんをはじめ、優秀な現地スタッフや共同事業パートナーのメンバー、国内との橋渡し役になっている辰巳さんなど、限られた人数だからこそ、密なコミュニケーションを取りながら事業を進めています。そのため、日本にいるときより同僚との距離感が近く、恵まれた環境で働いていると実感します。

今後のライフプランや実現したいことは?

ホーチミンに駐在して2年目に入った西村さん。ベトナムでの駐在期間は厳密には決まっていないが、ベトナム以外の国への異動や帰国の可能性もある。今後実現したいことやキャリアプランについても尋ねてみた。

駐在か帰国か、この先のキャリアプランや人生プランはありますか?

(西村さん)
しばらくはベトナムで今の仕事を進めていると思いますが、5年後、10年後はどこにいるか、今の時点では強くイメージしないようにしています。まずは自分がここにいる意味・価値をベトナムで表現して、他者からももちろんのこと、自分自身でもやりきったと思えるまでベトナムの事業に邁進していきたいと考えています。
一方、長い目で見たときには、ASEANのプロジェクトは親和性も高いと思いますので、他の国に行く可能性もあると思います。
とはいえ、将来のことを考えるときは自分の意思ももちろん大事ですが、それと同じ以上に家族の考えも尊重したいです。
そのタイミングにおいて、どんな生活が自分自身、そして家族にとってベストなのか、どんな時でも確実な将来というものはないと思っておりますので、その都度考えることになると思います。

仕事面で、ベトナムで実現したいことはありますか?

「WATERPOINT」ショールームでプロジェクトについて解説する西村さん

(西村さん)
ホーチミンに来て濃密な1年を過ごしましたが、自分が経験したいこと、そして成し遂げたいことがあります。「なりたい自分」になれるまでは正直まだまだ遠い気がしています。
達成したいことは、細かな面では数えきれないほどありますが、一つあげるとすれば、現在進行中のプロジェクト「WATERPOINT(ウォーターポイント)」にたくさんの住民を呼び込んで、その人々が実際にそこで生活している姿をこの目で見ること。大規模な開発なので、「プロジェクトが終わった」と言えるのは何年後になるかはわかりませんが、まだ知らない未来だからこそ楽しみで期待が膨らみます。

2019年から段階的に販売が開始した「WATER POINT」ショールームにて。敷地面積355ha(うち投資対象は165ha)、総戸数8,000戸超の大規模開発
「WATER POINT」の戸建て住宅(一部)
「WATER POINT」の住宅建設予定地の一部
「WATER POINT」にて。今後住宅が建ち、2025年以降に完成予定のエリア

(西村さん)
また、現在ベトナムの不動産事業は住宅開発事業が中心ですが、それ以外の事業領域への拡大も目指し、ベトナムのまちづくりへの貢献を通して収益を上げていきたいと考えています。同時に「法人化」という目標があり、現在の駐在員事務所がベトナム法人になる日を、今のメンバーといっしょに迎えられたらうれしいですね。

現地スタッフたち

西村 晋二さん

西日本鉄道株式会社
海外開発事業部 係長
私鉄系企業で都市開発や海外事業に携わり、2023年1月に西鉄に入社。パートナー企業とともにベトナム・ホーチミンで進行中の複数のプロジェクトを進めている。

© 西日本鉄道株式会社