粗大ごみの王様・布団が注文殺到の「寝袋」に進化 「羽毛は100年使える資源」老舗寝具店の新たな挑戦

テレビ愛知

行政のごみ問題で一番負荷がかかっている「布団全般」。東京都23区で出された粗大ごみの品目別ランキングでは、2022年度までの過去10年間、1位のほとんどが羽毛布団を含むふとんでした。そんな環境問題の解決に乗り出したのが、豊川市の老舗寝具店。羽毛布団を「寝袋」に再生させる新たな取り組みを取材しました。

何の変哲もない四角形のクッション。じつは中身を開くと「寝袋」が入っています。しばらく放置するとフカフカになりました。

実際に記者が寝てみると、生地がやわらかく、包まれるような暖かさといいます。

記者:
「ぐっすり眠れそうです」

使われなくなった羽毛布団を寝袋に

この寝袋を手がけたのは、豊川市にある1921年創業の寝具店「快眠館」。社長の田中邦幸さんに、寝袋の秘密を聞きました。

快眠館 社長 田中邦幸さん:
「この寝袋は羽毛布団から作られています。使っていた羽毛布団、古くなっていた使えなくなってしまった羽毛布団を、お客さまから預かって寝袋に再生します」

客から預かった布団は、中の羽毛が長年の使用でニオイや汚れが染みついているといいます。これを専門の業者で解体。その後、取り出した羽毛を徹底的に洗浄します。

田中社長:
「(羽毛は)きちんと手入れをすれば、100年は循環して使える資源といわれています」

洗浄後の羽毛はボリューム感が増し、保温性についても新品同様に戻るといいます。続いて、よみがえった羽毛を専用の機械で寝袋の生地に充填します。

田中さんがこまめにチェックするのは手元のモニター。充填する羽毛の量がグラム単位で表示されます。多すぎてもダメ、少なすぎてもダメ、適正量を慎重に見極めながらの作業を行います。

羽毛だけでなく、生地にもこだわりがありました。

田中社長:
「寝袋は上の生地と下の生地が縫い付けてあるものが多いです。羽毛布団ではよりふっくらさせるために、立体キルトといって上と下の生地の間にちょっと高さを持たせるメッシュ状の布地を挟み込んでいます。それによって立体的になるので、より羽毛が空気をたくさん含みます」

こうして老舗寝具店ならではの寝袋が完成。羽毛布団を預けた客へと引き渡します。

田中さんがこの事業を始めた理由の1つが、環境問題です。行政のごみ問題で一番負荷がかかっているのは布団全般。東京都23区で出された粗大ごみの品目別ランキングを見てみると、2022年度までの過去10年間、1位のほとんどが羽毛布団を含む「ふとん」でした。その多くはリサイクルされることなく焼却処分となります。

田中社長:
「物も大きいですし、羽毛自体は燃えにくい素材なので、それだけでエネルギーがたくさん必要になります。多くの皆さまが羽毛布団を作り直せるというのを知らず、古くなったら捨ててしまうことに心を痛めていました。『羽毛の資源を再生して利用できないか』は、ずっと考えていました」

快眠館では羽毛布団を寝袋に再生するサービスを2024年2月からスタート。事業としても急成長しています。

田中社長:
「4月の頭から注文が殺到している状態で、(4月は)全体の売り上げの半分くらいが寝袋の売り上げになっています。1人でも多くの方に寝袋を通じて、いまお手持ちの羽毛が無駄にされないように再生して使っていただきたいです」

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