社説:自治体の離職増加 地域を支える魅力高めたい

 地方自治体を中途退職する公務員の増加に、歯止めがかからない。2022年度に主に自己都合で都道府県や市区町村などを辞めた一般行政職は約1万2500人と、5年前の1.5倍になった。10年前との比較では倍増以上になっている。

 京都や滋賀も同様で、教員や警察などを含めた全職種でみると、京都府で22年度に364人が退職し、5年前の約1.8倍になった。滋賀県は216人で約1.3倍、京都市も192人で約1.3倍だった。

 自治体職員の離職増は公共サービスの低下につながりかねない。住民ニーズや地域特性を踏まえた施策の遂行を損ない、まちの衰退を招く恐れもある。

 総務省は昨秋、自治体の人材確保策を議論する有識者検討会を設けた。離職を誘発するような業務の実態を見直し、選ばれる職場に向けた抜本策に向け、自治体も動いてもらいたい。

 とりわけ深刻なのが、若い世代の中途離職である。22年に全国の自治体を退職した地方公務員の6割超が30代以下だった。地域貢献を志して役所に入りながら、なぜ半ばで去ったのか。構造的な課題を見極めたい。

 総務省の調査によると、21年度に心の不調で1カ月以上の病気休暇を取得したり、休職したりした地方公務員は全国で3万8千人に上った。業務量の多さ、職場の人間関係などが背景にあるとみられている。

 厳しい財政下で職員定数を抑制する自治体は多く、業務量の増加で疲弊し、さらに離職に拍車をかける悪循環が指摘される。本来は効率化につながるはずの業務のデジタル化が、かえって現場の負担を重くしているとの声も高まっている。

 現場に即したデジタル技術の活用や、近隣自治体間での業務協力などを柔軟に進めたい。

 住民から悪質なクレームや過剰な要求を受けるカスタマーハラスメント(カスハラ)対策も重要である。1人の職員に任せず、組織的に対応する体制が求められよう。

 人事制度はどうか。人手不足による「売り手市場」を背景に、近年は若い世代ほど転職へのハードルが低く、民間では終身雇用の意識が薄まりつつある。旧態依然とした年功序列を見直し、意欲や能力、業績に応じた配置、処遇、中途採用などが課題となろう。

 人口減で支え手が減る中、職員が地域のNPO活動で報酬を得るといった兼業を認める自治体も出てきた。首長は慣例にとらわれず、公務員の仕事の魅力を高める策を講じてほしい。

 国の責任も問われる。政権が場当たりで唐突に繰り出す事業が、自治体職員を振り回していることを自覚すべきだ。最近ならマイナンバー活用の性急な普及や、複雑な定額減税の実施は典型だろう。省庁も含めた公務員全体の離職防止策が要る。

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