2000年代初頭にも昭和ブームは起こっていた!? R&B、アングラ…現代の昭和ブームとの違いは

2005年撮影。中将タカノリも2000年代初頭に起きた昭和ブームのフォロワーでした。

近年、若者の間で昭和歌謡やシティ・ポップが人気。昭和カルチャーが盛り上がっていますが、なんと20年以上前、2000年代初頭にも昭和ブームが起こっていたそうです。当時の昭和ブームはいったいどんなものだったのか? シンガーソングライター・音楽評論家の中将タカノリと、シンガーソングライター・TikTokerの橋本菜津美が、ラジオ番組で考察しました。

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※ラジオ関西『中将タカノリ・橋本菜津美の昭和卍パラダイス』2024年5月24日放送回より

【中将タカノリ(以下「中将」)】 ここ数年、昭和ブームということで、猫もしゃくしも昭和、昭和……。昭和歌謡やシティ・ポップが注目されていますが、実は2000年代初頭にも昭和ブームは起こっていました。

【橋本菜津美(以下「橋本」)】 そうなんだ! 中将さんがまだ10代のころですね!

【中将】 はい、昭和をフィーチャーした音楽やファッションが注目され、ベルボトムジーンズも流行ってましたね。今のブームでスポットが当たってるのは1970年代、1980年代だと思うんだけど、当時のブームはどちらかと言うと1960年代~1970年代。今のブームはいろんな層に浸透しているけど、当時のはもうちょっとコアというか。音楽、ファッションの感度が高い人が、昭和独得の濃厚さや怪しさを楽しむようなところもありましたね。

【橋本】 同じ昭和でも、今のブームとは少し違うわけですね。

【中将】 はい、埋もれていたR&Bやサイケ、アングラのアーティストをリスペクトするクレイジーケンバンド、大西ユカリさん、渚ようこさん、コモエスタ八重樫さんらが話題になって、それまであり得なかった昭和歌謡のクラブイベントも数々開催されるようになりました。和田アキ子さんの『古い日記』(1974)なんか人気曲でしたね。

【橋本】 あらためて聴くと和田さんすごい上手いですね! あと、モノマネと「ハッ!」の位置が違う(笑)。

【中将】 原曲はめっちゃR&B感あってカッコいいんですよ(笑)。こんな曲が大音量で流れる中、若者たちは昭和ファッションに身を包んで踊っていたわけです。

【橋本】 今のブームでも「踊る」ことは大きな要素になっているので、共通性を感じます。

【中将】 次にお届けする曲も踊れるナンバーで、昭和歌謡イベントの定番の1つ、ローズマリーの『可愛いゝひとよ』(1976)。原曲は1972年に発売されたクック・ニック&チャッキーですが、今回、番組内では個人的に好きなバージョンとしてこちらを挙げます。

【橋本】 めっちゃいい曲ですね! R&Bやソウルっぽいんだけど、ほどよくアイドルっぽさというか歌謡曲っぽさも感じます。中将さんもこの曲でクラブで踊ったりしてたわけですね?

【中将】 はい、いくつかの曲には決まった振り付けもあって、みんなで踊ってましたね。

【橋本】 なるほど! YouTubeで見てみましたが、音楽と言い振り付けと言い現代のアイドルに与えた影響もかなりありあそうですよね。

【中将】 次はちょっと雰囲気の違う曲です。西岡恭蔵さんで『プカプカ』(1972)。西岡さんが親交のあったジャズシンガー、安田南さんをモデルに作ったと言われています。大阪・アメリカ村の三ツ寺会館にも同名のバーがあったりしますが、当時のアングラ界隈の世界観がよく伝わる名曲ですね。

【橋本】 この曲知ってます! ハナレグミさんがカバーされているんですが、それを昔お付き合いしてた方が気に入っていてよく口ずさんでました……あまり思い出したくない過去でした(笑)。

【中将】 あれ……青春を振り返らせてしまいましたか(笑)。なんか『プカプカ』の歌詞って、若さゆえのどうしようもなさがあふれていて、エモさ、チルさごちゃ混ぜ……まさに青春って感じです。

【橋本】 今も水たばこやシーシャが流行っているので、若い人たちがプカプカしながら聴くのに向いてるかもしれないですね。

【中将】 では、次の曲が最後になります。敏いとうとハッピー&ブルーで『星降る街角』(1972)。
ムード歌謡の代表みたいな名曲ですが、このジャンルの中では特にダンス要素の高いラテン歌謡。映画『メゾン・ド・ヒミコ』(2005)でダンスフロア一杯のクラバー達がこれを踊るシーンは圧巻でした。

【橋本】 すごそうなシーンですね! 当時の昭和ブームも相当楽しそうですが、その後どうなっていったんですか?

【中将】 2005年に放送された長瀬智也さんの主演ドラマ『タイガー&ドラゴン』(TBS)がかなり昭和要素の高い作品で、一般にも人気だったんですが、これくらいをピークにブームは少しずつ沈静化していきました。でもその後、徳永英明さんの『VOCALIST』に代表されるカバーブームが起きて、別の角度から昭和歌謡に光が当たっていったという感じですね。ひと口に昭和と言ってもいろんな軸があるので、面白いですね。

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