【F1チーム代表の現場事情:バスール/フェラーリ】チームの印象を変えた愛すべき人物。ライバルの祝賀にも飛び入り参加

 大きな責任を担うF1チーム首脳陣は、さまざまな問題に対処しながら毎レースウイークエンドを過ごしている。チームボスひとりひとりのコメントや行動から、直面している問題や彼のキャラクターを知ることができる。今回は、フェラーリのチーム代表フレデリック・バスールに焦点を当てた。

2024年F1第8戦F1モナコGP シャルル・ルクレール(フェラーリ)の優勝で表彰台に上がったフレデリック・バスール代表

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 マイアミGPでランド・ノリスが優勝し、チームが祝賀ムードに沸いていた時、意外な人物が参加して、その場にいた人々を楽しませた。マクラーレンが記念撮影をする際に、大勢のフォトグラファーやテレビのカメラマンが待ち構えるなか、フェラーリ代表フレデリック・バスールが混ざっていたのだ。

 気づいたマクラーレンCEOザク・ブラウンがマクラーレンのキャップを投げてよこすと、バスールはそれをかぶって、ノリスにシャンパンを浴びせて、初優勝を祝福した。

2024年F1マイアミGP マクラーレンのキャップをかぶったままインタビューに応じるフェラーリのフレデリック・バスール代表

 このエピソードはこれで終わりではない。翌戦エミリア・ロマーニャでノリスは2位に入り、ブラウンがレース後のインタビューに応じていた時のことだ。フェラーリはホームレースで3位にとどまったにもかかわらず、バスールはユーモアのセンスを忘れておらず、ブラウンの背後に忍び寄り、彼の頭にフェラーリのキャップをかぶせたのだ。そうして、ブラウンはフェラーリのキャップをかぶったまま、インタビューを受け続けるという、ちょっと奇妙な映像が国際映像で流れた。

 こうした愛すべきエピソードを2戦にわたって作り出したバスールだが、シャルル・ルクレールの母国モナコでは、緊張が張り詰めるシーンが見られた。ルクレールがポールポジションを獲得した後、当然のことながら、バスールは大勢のメディアに取り囲まれた。そのなかに、イギリスの『チャンネル4』のクルーとともにデイビッド・クルサードも控えていた。

2024年F1第8戦モナコGP PPのシャルル・ルクレール(フェラーリ)、2番手オスカー・ピアストリ(マクラーレン)、3番手カルロス・サインツ(フェラーリ)

 クルサードは、バスールに対して、エイドリアン・ニューウェイと契約する可能性について尋ねようとした。ニューウェイの将来は旬の話題なので、これは驚くことではない。ただ、うわさでは、フェラーリに加入する可能性が高いともいわれているが、実際には、ニューウェイには多数のオファーが来ているため、具体的なことは決まっていないようだ。そんななかで、バスールは、広報担当者に対し、ニューウェイの話題を出さないようメディアに徹底して依頼するよう指示をしていた。

 それにもかかわらず、クルサードが質問してしまったことで、ひと悶着起きた。カメラの前ではプロフェッショナルな振る舞いを見せたバスールだが、答え終わるやいなや、他のメディアに対してコメントすることなく、立ち去ろうとして、広報担当者と口論になった。そのシーンをファンが撮影しようとして、バスールがやめるよう頼むという、気まずい瞬間もあったが、結局バスールは戻って、他のインタビューを受け続けた。

 フェラーリのチーム代表であることに伴うプレッシャーは信じられないほど大きなものであり、陽気なバスールであっても、こういった表情を見せることがあるのは当然のことだ。しかし、バスールが前任者たちよりもはるかに、メディアやファンを大切に扱っていることは間違いない。

 これまでのフェラーリチーム代表の多くは、もっと閉鎖的で近寄りがたい存在だった。しかしバスールは、チームの雰囲気をオープンにした。彼は話している時間の95パーセントは冗談を言っているような、とても親しみやすい人物だ。しかしもちろん、その裏には決然とした競争者としての顔がある。それをモナコの土曜日に、彼はのぞかせた。

 モナコ決勝後、バスールは再び陽気な表情を見せた。ルクレールのモナコ初優勝の祝賀ムードに浸り、ふたりでモナコの港に飛び込んで喜びを分かち合った。

 バスールはこの数戦で、いくつかの側面を見せた。そのすべてが組み合わされて、彼がフェラーリで成功を収める助けになっているように感じる。

2024年F1第8戦F1モナコGP 勝利を祝い、海に飛び込むシャルル・ルクレール(フェラーリ)とフレデリック・バスール代表
2024年F1第8戦F1モナコGP 勝利を祝い、海に飛び込んだシャルル・ルクレール(フェラーリ)とフレデリック・バスール代表

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