【ポッドキャスト文字起こし】世界で「ハイブリッドカジュアルゲーム」が人気を集める理由とは?【GameBusiness.fm: Select & Start #1】

【ポッドキャスト文字起こし】世界で「ハイブリッドカジュアルゲーム」が人気を集める理由とは?【GameBusiness.fm: Select & Start #1】

GameBusiness.jpは、ポッドキャスト番組「GameBusiness.fm: Select & Start」をスタートしました。ゲームに携わる全てのビジネスパーソンに向けて、国内外のゲーム市場の動向を紹介しながら、次世代のゲームビジネスのヒントとなる情報を発信していきます。本稿では、配信第1回の文字起こしをお届けします。

出演者

Game Server Services 代表取締役 CEO
丹羽 一智

GameBusiness.jp 編集部
多賀 秀明

配信第1回のテーマ:「ハイブリッドカジュアルゲーム」とは?

――今回はどのようなテーマでお話しいただけるのでしょうか。

丹羽今回は、最近伸びているカテゴリーである「ハイブリッドカジュアルゲーム」についてお話ししたいと思います。

近年はモバイルゲームの市場が伸び悩み、日本市場はもう飽和しているとすら言われている状況です。モバイルゲームの開発ラインを減らし、コンソールやPC向けのゲーム開発にリソースを回すケースが増えているのではと思います。

しかし、コンソールやPCの市場規模はモバイルの1/4程度しかありません。そこに向かって各社がリソースを振り向けると、より一層レッドオーシャンに向かっていくのではないかという危惧も見られます。

一方で、今回お話しするハイブリッドカジュアルゲームは市場が年々拡大しており、過去2年で2倍に成長しました。すでに世界のゲーム市場の2~3%がハイブリッドカジュアルゲームの売上となっているほどで、今後、この数字が5%、10%という規模になっていく可能性もあると考えています。

しかし、日本ではチャレンジされていないゲーム会社も多いかと思います。ハイブリッドカジュアルゲームは日本のゲーム会社にこそチャンスがある市場だと思っているので、ビジネスチャンスをしっかりつかんでいただけるよう、ヒントになる情報をこれから数回にわたってお話ししていきます。

「広告収益」と「ゲーム内課金」のハイブリッドでマネタイズ

――そもそも「ハイブリッドカジュアルゲーム」とはどのようなゲームなのでしょうか?

丹羽ハイブリッドカジュアルゲームは、ハイパーカジュアルゲームから派生した発展形といえるジャンルのゲームです。

ハイパーカジュアルゲームは、広告で獲得したユーザーに遊びながら広告を見てもらうことで収益を上げるビジネスモデルなのですが、顧客獲得のための広告単価がどんどん高くなってしまい、ここ5~6年で収益性が大きく落ちてしまいました。この状況を改善すべく二つのビジョンが掲げられました。

一つ目は「ユーザーのゲーム継続率を改善する」というものです。このジャンルのゲームは名前の通りとてもカジュアルなので、獲得したユーザーの多くが翌日にはアプリを起動しなくなります。一週間も経つと「(広告で新規に獲得した)ユーザーがほとんど残っていない」というような状態になる程です。ユーザーにもっと長く遊んでもらい、その分広告を見てもらう回数を増やせば収益性が改善されるはず……というわけです。

二つ目は「ゲーム内課金システムの実装」です。広告以外の収益源を用意することで、広告だけに依存しない収益体制を確立するのが狙いです。

このような経緯や目的から「広告In-app purchase(アプリ内課金)という2つの要素を収益源とするカジュアルゲーム」がハイブリッドカジュアルゲームと呼ばれています。

日本でおなじみのマネタイズが海外で新鮮なものとして捉えられている

丹羽今挙げた「ユーザーの継続率を保って長く遊んでもらう」、「ゲーム内課金でマネタイズをする」という二つのビジョンは、ソーシャルゲームから派生した日本のスマホゲームがすでに向き合い、解決している課題でもありますね。

ですので、日本の人がハイブリットカジュアルゲームを遊ぶと、普通のカジュアルなゲームに見えます。しかし、こうしたマネタイズにそこまでなじみがない海外の人からは、これがまったく新しいビジネスモデルに見えるわけです。

――日本人からすればなじみのあるスタイルのゲームが、海外では新しいマネタイズモデルとして盛り上がっているということですか?

丹羽そうなんです。ガチャがあったり、すぐにはクリアできないような局面もコツコツと強化すると1週間後にはクリアできるようになっていたり。そういう、日本人からすると当たり前に見えるプレイサイクルを作ることがハイブリッドカジュアルゲーム制作の要になっています。

代表的なタイトルは『ダダサバイバー』と『キノコ伝説』

――今、海外でハイブリッドカジュアルゲーム市場がどのように動いているか具体的に教えてください。

丹羽ハイブリッドカジュアルは北米と東アジアを中心に市場を拡大させています。年商100億円を超えるタイトルが次々と出てきており、一部には年商1,000億円を超えるタイトルも見られます。近年は『原神』が北米でも大ヒットしているという話もよく耳にしますが、ハイブリッドカジュアルの上位タイトルはその『原神』よりもさらに上をいっています。

また、『原神』は開発費もすさまじい金額が投じられていますが、ハイブリッドカジュアルはゲーム内容のカジュアルさゆえに、開発費はそこまで高騰していません。その分リスクを抑えられるということでもありますから、そういう観点でも非常に魅力的であると思います。

ハイブリッドカジュアルの有名どころとしては『ダダサバイバー』と『キノコ伝説:勇者と魔法のランプ』が挙げられます。

『ダダサバイバー』は2022年7月にリリースされ、2年間で580億円の売り上げを出しています。アプリ内課金はガチャが採用されていますが、ダウンロード数のトップは北米市場であるのもおもしろいところです。北米だけで2,000万ダウンロードくらいですね。日本でも配信されているゲームですが、ダウンロード数でも売り上げでも、北米は日本の倍以上の数字になっています。

今までは「ガチャ(を採用したゲーム)は北米市場ではウケない」というイメージが強かったと思うんですよ。そもそも、日本でもDeNAさんやGREEさんがソーシャルゲームを始めたばかりの頃はまだガチャに否定的なイメージがありましたが、今では受け入れられています。それと同じように、北米でもそろそろ受け入れられつつあるのかもしれません。

もう一つの『キノコ伝説』ですが、国内でも最近さまざまなところでニュースになっていますので、耳にしたことがある方も多いかと思います。韓国や中国で5カ月ほど前にローンチされ、日本でも1カ月前にローンチされました。そして直近1カ月の売り上げが100億円を超えています。(※2024年4月5日収録。2023年11月に台湾と香港、2023年12月に韓国、2024年2月に日本でローンチ)

このゲームが出てくるまでは「有名なハイブリッドカジュアルゲームはなんですか」と聞かれたら私は『ダダサバイバー』の名を挙げていましたが、日本ではすでに『キノコ伝説』の方がダウンロード数で勝っており、このジャンルを説明する際の代表的なタイトルになっていくのではないかと思っています。

『キノコ伝説』は韓国や中国で5カ月間に235億円の売り上げを記録しましたが、日本ではリリース1カ月で100億円の売り上げを出しました。このことからも、日本で大きくウケているタイトルであるといえます。その後は北米でもローンチされましたが、北米でのダウンロード数はそんな日本市場をすでに超えています。

『ダダサバイバー』と『キノコ伝説』はどのようなゲームなのか?

――これも北米で人気があるんですね。『ダダサバイバー』と『キノコ伝説』は、簡単にいうとそれぞれどのようなゲームなのでしょうか。

丹羽『ダダサバイバー』は、Steamで登場して人気を博している『Vampire Survivors』のフォロワーゲームです。周囲から迫ってくる敵を倒し続けて、一定時間生き残れればステージクリアとなります。ガチャで武器を強化したり、デイリークエストをクリアして強化素材を入手したりという、日本のスマホゲームではおなじみのゲームサイクルが組み込まれています。

『キノコ伝説』は、おなじくハイブリッドカジュアルである『スライム伝説』というゲームをベースした作品です。ベルトスクロールアクション……というほどではないのですが、同じようなアングルでキャラクターがオートで右方向に進んでオートで敵を攻撃するゲームになっており、キャラを強化することで少しずつ先に進めるようになります。強化のために必要なスキルをガチャで入手したり、いわゆる限界突破の概念があったりと、こちらも日本ではおなじみのシステムですね。

――シンプルなゲーム性と、ガチャを含むキャラ育成などに関わる課金要素。これがハイブリッドカジュアルゲームの特徴的な部分なのですね。

『MONOPOLY GO!』が示した、海外モバイルゲーム市場の可能性

――他に、海外で人気が出ているモバイルゲームがあれば教えてください。

丹羽ニュースや広告でご存じの方もいるかと思いますが、まずは『MONOPOLY GO!』ですね。ちょうど1年ほど前にローンチされたタイトルでダウンロードは北米が8割を占めているのですが、すでに年商1,500億円となっています。これは『パズル&ドラゴンズ(パズドラ)』や『モンスターストライク(モンスト)』のピークでも出せていなかった数値だと思います。

編集部注:『パズル&ドラゴンズ』は2014年12月期に、コンシューマー向けやキャラクターグッズなどを含む「『パズドラ』関連売上高」としては1,580億円の売上を記録しています。詳細はガンホー・オンライン・エンターテイメントの「2014年12月期 有価証券報告書」をご参照ください。

北米のモバイルゲーム市場は『キャンディークラッシュ』とカジノゲームしかヒットしていない……というような状態が長らく続いていましたが、本作の大ヒットによって市場はまだまだ死んでいないことが示されてきていると思います。

ハイブリッドカジュアルというよりは従来のマッチ3パズルに近いですが、北米では『ロイヤルマッチ』も大ヒットタイトルですね。王様が助けを求めている動画広告でご存じの方も多いと思います。

あとは、これも広告をよく見かけますが『ホワイトアウト・サバイバル』でしょうか。この辺が北米市場における代表的なタイトルになると思います。

――海外のモバイルゲームに関するレポートなどでも、いつも上位に名を連ねていますね。

丹羽ハイブリッドカジュアルは2019年にリリースされた『アーチャー伝説』というゲームがジャンルの走りだと言われており、広告収入だけだったハイパーカジュアルゲームにゲーム内課金の要素を入れるチャレンジをして大きな成功を上げました。それに続く形でさまざまなタイトルがリリースされるようになり、一昨年~去年あたりから新たなジャンルとして花開いていると感じます。

――ここまでお聞きいただき、ありがとうございました。次回以降も引き続きハイブリッドカジュアルゲームをテーマに、より深掘りしたお話をうかがいます。

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