音大生以外、団体戦、家族連弾… 個性派大会でピアノ普及 エルフラット・岩倉孔介さん 横浜市都筑区

書家の金澤翔子さんの揮毫したスポーツ大会を彷彿とさせるパンフレット

参加対象は「音大生以外」の大学生・大学院生・専門学生という一風変わった国内初のピアノコンクール「第1回全国大学生ピアノ選手権(NUPC)」が神奈川県立音楽堂=西区=で行われた。コンクールを主催したのは、株式会社エルフラット=茅ケ崎南2の20の5=代表の岩倉孔介さん(41)。

※※※

武蔵野音大でピアノ講師を務める岩倉さんは、コンクールの審査員を頼まれることがあるという。クラシック音楽のコンクールは「プロの登竜門」としての位置づけで捉えられ、参加者は「アマチュア以上、プロ未満」(岩倉さん)。ただアマチュアの定義も曖昧な中、大学生部門は、プロを目指す音大生が主役になる風潮があるという。岩倉さんは「音楽に対する情熱は音大生に負けない一般学生も多く、彼らが主役となるコンクールを作りたい」とNUPCの開催を思い立った。

岩倉さんが代表を務めるエルフラットは、ピアノの調律や修理、販売などのほか、チェロやバイオリンなど弦楽器のレンタルを行う会社。一方で全日本ピアノ指導者協会(ピティナ)主催のコンクールなどコンクールの企画・運営も受託しており、ノウハウは熟知している。岩倉さんは数年前から構想を温め、新型コロナが落ち着き、会場を借りられる目途が立ったことから、参加者の募集を開始した。

ヒントは「駅伝」

一般学生を主役にすると同時に岩倉さんが掲げた目的の一つが「クラシック音楽の普及」。クラシック音楽の魅力と面白さを伝え、裾野を広げるための工夫として、ヒントになったのが「大学駅伝」だった。

クラシック音楽のコンクールは独奏が基本だが、NUPCは、大学やサークルごとに3人1組で出場するチーム戦。演奏はピアノソロのリレー方式で、審査は3人の演奏が終了した時点で、チームでの評価となる。「たとえ1人がミスをしても、ほかの2人でカバーできる」(岩倉さん)のが特長。また大学やサークル名でエントリーすることで、卒業生や地元校といった理由での応援や興味から、演奏に触れる機会が生まれるのでは、との思惑もあった。

コンクールの名称もスポーツ大会のように「選手権」の名を冠した。第1回のパンフレットには、書家の金澤翔子さんが揮毫しており、文字通り伝統あるスポーツの大会を彷彿とさせるパンフレットに仕上がっている。

審査員にもこだわった。審査委員長はロイヤルアカデミー名誉会員のパスカル・ドゥヴァイヨン氏、他にもピアニストで前ベルリン芸術大学講師の村田理夏子氏など「大会開催の時点で日本のコンクールで最も豪華な審査員」(岩倉さん)を集めた。

オンライン動画による予選には北海道から沖縄まで全国各地から応募があった。予選を勝ち抜いた11団体による本選では、東京大学ピアノ会が初代王者に輝いた。同チームは「普段一人で弾くものと思って練習しているピアノをチームで演奏する機会は中々なく、とても新鮮。曲順や構成に時間をかけた。このような演奏機会をいただき感謝したい」と語った。

岩倉さんは昨年10月にも連弾のみのコンクールを実施。年齢構成に合わせた部門に加え、4親等以内の家族でコンビを組むファミリア部門を設けるなど、クラシック普及のための新しい取り組みに挑戦している。

※※※

第2回のコンクールの参加申込みはすでに始まっている。締切りは10月16日(水)。本選は来年3月16日(日)、今度は関内ホールで開催される。また8月18日(日)には、第1回入賞者による記念(ガラ)コンサートを青葉区民文化センターフィリアホールで開催する。

クラシック普及に力を入れる岩倉さん

© 株式会社タウンニュース社