国交省/改正都市緑地法で民間の緑地開発促す、大日本印刷が本社敷地での取り組み紹介

5月に成立した改正都市緑地法で、民間事業者による緑地の整備を国土交通相が認定する制度が盛り込まれた。緑地確保の価値を「見える化」することによって、投資家や金融機関の再評価を促し、資金の呼び込みにつなげる狙いがある。緑地の開発は収益につながりにくいとの認識が民間には依然として根強い。地方自治体の財政状況が厳しさを増す中、民間の投資を活性化させる起爆剤として期待がかかる。
新制度は改正法が公布された5月29日から6カ月以内に施行される。国交省は新制度の施行を前に、民間による緑地創出のモデルとなる事業の啓発活動に力を入れている。5月31日には大日本印刷と共同で報道向けの見学会を開催。同社が東京・市ケ谷にある本社敷地内で開発している緑地「市谷の杜」について、担当者が取り組みを説明した。
全体敷地の約6万平方メートルのうち約2万平方メートルを緑化する計画で、既に1・5万平方メートルの整備を完了した。緑地は人工地盤の上部を自然土で覆い、広葉樹や落葉樹、常緑樹など約40種を植樹。「武蔵野の雑木林」をイメージした自然の森を都心部に作り出した。
同社サステナビリティ推進委員会事務局の鈴木由香局長は「ともに変化してきた市ケ谷でさらに成長していくため、地域にきちんとなじんだ力となるものを作っていきたかった」と話す。
緑地の維持管理を外部に委託せず、自社の社員で担っているのも特徴。完成当初から植物などの成育状況を社員の目で確認し、記録を残す取り組みを続けてきた。データが蓄積した現在では前年度の成育状況との比較も可能になり、植栽の維持管理に役立てている。
緑地には通り抜けが可能な通路を整備し、地域に常時開放している。都市構造を学ぶ周辺大学の学生が見学したり、保育園が散歩ルートに活用したりして地域に貢献。鈴木局長は「非常に緑地が少ない都心部で、周りの人たちに少しずつ溶け込んできている」と手応えを語る。
国交省は新たに創設する認定制度を通じて、こうした民間による緑地の開発事例を増やしていきたい考えだ。認定事業には、国による都市開発資金の無利子貸し付けを実施。緑地を新たに創出するだけでなく、既存の質を高める取り組みも支援対象にし、質・量の両面から緑地の確保につなげる。

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