大津市の経営者殺人事件、捜査本部設置1週間 被害男性は保護司として奔走した「温厚で真面目な人」

遺体が見つかった民家周辺を調べる滋賀県警の捜査員ら(大津市仰木の里東6丁目)=27日午後5時24分

 大津市仰木の里東6丁目の民家で、住人の新庄博志さん(60)が遺体で見つかった殺人事件は、滋賀県警が大津北署に捜査本部を設置して3日で1週間となった。新庄さんは、琵琶湖畔にあるフレンチレストランの経営に加え、保護司として20年近く更生保護活動のボランティアに携わってきた。生前を知る人は「温厚で真面目な人。恨みを買うような人ではない」と口をそろえる。

 県更生保護事業協会によると、新庄さんは2006年ごろ保護司となり、更生保護を推進してきた。6年前に協会の事務局長に就任後は、関係機関が連携して地域社会全体で犯罪をした人の立ち直り支援に取り組むネットワークの実現に向けて奔走。医療や就労、教育など各機関をつなぎ、地区ごとに「要」となる人を配置する構想で、「滋賀KANAMEプロジェクト」と名付けた。

 この構想は、更生保護に長く関わる中で新庄さん自身多くの悩みを抱えた経験から、「複雑な相談内容を保護司が一人で抱え込まないように」と考え、発案したものだった。

 大津市の元男性保護司によると、十数年前、新庄さんの担当だった保護観察中の人が罪を犯して再び収監された際、新庄さんはひどく落ち込んだという。「いいところまでいっていたのに、と力ない声で話していた」。こうした過去があったからか、新庄さんは事務局長時代の事業報告で「代替えのきかないボランティアを孤独にさせないことが大事」と強調していた。

 協会で活動を共にした男性保護司は、新庄さんが遺体で発見される3日前に会議で同席した。「普段と変わらない前向きな様子に見えた。再犯がないようにしたい、各機関とスムーズに連携をとりたい、と頑張っていた」と悼んだ。

 新庄さんは、大津商工会議所青年部や大津市男女共同参画審議会の会長も務め、分野を越えて社会活動に情熱を注いだ。趣味のガーデニングで自宅や職場に見事なバラを咲かせ、自ら漬けたふなずしを振る舞うなど多くの人に慕われた。

 20年来の知人で、新庄さんが代表を務めた「おおつ男性会議」で共に男女共同参画を学んだ男性は、「見識があり、社会貢献に一生懸命な人だった」と振り返る。新庄さんと面識があった佐藤健司大津市長も、先月29日の会見で「幅広く市政に参画いただいた。本当に悲しいし、残念です」と語り、早期解決を願った。

新庄さんが中心となって進めていた「滋賀KANAMEプロジェクト」のパンフレット

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