小池都知事の“エジプトの父”が政府系新聞に明かした「14歳の彼女を養女にした」の真意【小池百合子と学歴詐称】

ジャーナリストの浅川芳裕氏(C)日刊ゲンダイ

【小池百合子と学歴詐称】#9

浅川芳裕(ジャーナリスト)

元側近の告発による、小池都知事の学歴詐称疑惑の再燃を受け、改めて調査して導き出した答えは「小池はエジプト政府のエージェント同然」という見立てだった。浅川芳裕氏は1990年代にカイロ大に留学。その経験を基にした現地取材に加え、エジプト発の報道も精査して分かったことがある。卒業疑惑だけでなく、小池の「入学」に至る経緯も超異例なのだ。

◇ ◇ ◇

「『女帝』(石井妙子著)によると、留学中の小池知事の後ろ盾は、当時、エジプト政府の副首相兼文化・情報相だったハーテム氏だと分かっています。それは、ハーテム氏が情報相として統制し、最高執行委員も務めていた政府系最大手紙アハラームの報道からも明らかです。2016年の記事には〈小池氏はハーテム氏の支援で卒業〉〈ハーテム氏は小池氏を自分の子供のようにみなしていた〉とある。小池知事自身も同紙のインタビューでハーテム氏について〈私のエジプトの父〉と語っています。ハーテム氏が卒業のみならず、入学に際しても影響力を発揮したのは間違いないでしょう」

浅川氏の目を引いたのは、04年の同紙のある記事だった。

「記事では、ハーテム氏が自ら設立したエジプト日本友好協会を通じて行った活動の1つをこう紹介しています。〈1970年に日本の首相からの要請で、当時14歳だった小池百合子という日本人の女の子を養女にしたこと〉というものです」

驚きの内容だが、不可解な点がある。52年生まれの小池は70年当時、18歳だ。14歳の時に養女にしたのなら、66年でなければおかしい。

「年齢は合致しませんが、気になる点があります。当時の佐藤栄作首相の著書『佐藤栄作日記』によると、佐藤氏とハーテム氏は66年と70年にそれぞれ官邸で面会している。直接会ったのはその2回だけです。ハーテム氏は『アラブ世界のプロパガンダの父』と呼ばれた人物で、同紙の報道は虚実が織り交ぜてある。エジプト政府に都合の良い、ある意味での“公式記録”です。『14歳』との表現も単純ミスではなく、後世が核心を解くための鍵として埋め込んだ情報だったのかもしれません」

■「エージェント枠」でエジプト政府に採用された?

〈養女にした〉という表現にも意図があるようだ。

「これは〈子飼いにした〉〈採用した〉と意訳することもできる。アハラーム紙がエジプト政府の『政治機関紙』であることを踏まえると、〈エージェントとして採用した〉と超訳するのが最もしっくりきます。ハーテム氏が同紙で小池知事について語り始めたのは、彼女が環境相として初入閣した03年以降。“弱みを握っている”と、ほのめかしたのでしょう」

つまり、小池は70年に「エージェント枠」でエジプト政府に採用された可能性があるわけだ。公式プロフィルでうたうカイロ大入学時期は72年。「女帝」には73年に2年生で編入したとある。実は、同時期に特例で編入学を可能にする法律が現地で制定されている。

「当時のサダト大統領が制定した大学組織法には〈極めて必要かつ不測の事態の場合、教育大臣は、共和国大統領の決定により発行された規則及び規定に従って、学生を編入させることができる〉と記されています。日本の総理からの要請は、まさに〈極めて必要かつ不測の事態〉と言える。同法を根拠に、小池知事の編入学が認められた可能性は十分ある」

(小幡元太/日刊ゲンダイ)

▽浅川芳裕(あさかわ・よしひろ) 1974年生まれ。エジプト・カイロ大文学部セム語専科中退。ソニー中東市場専門官、「農業経営者」副編集長を経て独立。著書は「“闘争と平和”の混沌 カイロ大学」など多数。

© 株式会社日刊現代