交流戦で起きた珍事!代打でのひと振りで「1000万円」をゲットした巨人の外野手も…!?

5月28日に開幕したセ・パ交流戦。交流戦が始まった2005年から昨年までの数々の熱戦の中から、「エッ、こんなことがあったの?」と思わず目を白黒させられるような珍プレー、珍事件を紹介する。

代打でのひと振りで、1000万円もの特別ボーナスをゲットしたのが、巨人時代の矢野謙次だ。

2007年5月31日のソフトバンク戦、新垣渚に6回まで無得点に抑えられ、0-3とリードされた巨人は7回、李承燁、阿部慎之助の連打と四球で一死満塁と反撃に転じる。

この場面で、原辰徳監督は投手の福田聡志に代えて左の清水隆行を代打に送ったが、ソフトバンク・王貞治監督も2番手・佐藤誠に代えて左腕・篠原貴行をぶつけてきた。これに対し、原監督も代打の代打に右の矢野を指名した。

◆ 「矢野に1000万円出さないか」

この日の東京ドームでは、巨人・渡辺恒雄球団代表もテレビ関係者とともに観戦中だったが、同席していた滝鼻卓雄オーナーに「ここで本塁打を打ったら、矢野に1000万円出さないか。お前も100万くらい出せ」と冗談めかして言った。

直後、矢野はカウント1-0からの篠原の2球目、外角寄りの直球をフルスイング。左翼席中段に突き刺さる起死回生の逆転満塁弾になった。代打の代打による逆転満塁本塁打は球団史上初の快挙だった。

これには渡辺代表もあとに引けなくなり、「こりゃ出さなきゃいかんな。でも、今日は金がなくてな。オレも10万くらいしか持ってないから、次の査定のときに1000万乗っけるよ。今日の一発は1000万円以上の価値があるから」と約束した。

この結果、同年オフの契約更改の席で、矢野は控え選手としては異例の特別ボーナスの1000万円を含む2000万円アップの年俸5000万円(推定)をかち取っている。

ちなみに矢野は、6月11日の日本ハム戦でも、0-0の8回に代打起用され、武田勝から左越えソロを放っているが、代打本塁打による1点で1-0の勝利も、球団では1949年の藤本英雄以来58年ぶり2人目の珍事だった。

本塁タッチアウトでゲームセットと思いきや、リクエストで判定がセーフに覆り、一転引き分けの珍幕切れになったのが、2021年6月2日の中日VSロッテだ。

8回まで中日投手陣にゼロに抑えられたロッテは、3試合にまたがり、19イニング連続無得点と打線がまったくつながらない。

しかし、0-2で迎えた9回一死からレオネス・マーティン、中村奨吾の連打のあと、ブランドン・レアードのボテボテの三ゴロの間に二死二、三塁と、最後の意地を見せる。

そして、次打者・角中勝也は2ストライクから又吉克樹の3球目、148キロ直球を痛烈なピッチャー返しの中前安打。三塁走者・和田康士朗(マーティンの代走)に続いて、二塁走者・中村奨もヘッドスライディングで本塁を狙った。

だが、センター・大島洋平の好返球でクロスプレーとなり、牧田匡平球審の判定は「アウト!」。1-2でゲームセットと思われた。

直後、井口資仁監督が捕手・木下拓哉のブロックについて「球がそれたとはいえ、危ないプレー」とリクエストを要求。審判団が協議した結果、危険なプレーと見なし、コリジョンルールにより、2点目が認められた。

敗戦を自らの抗議で引き分けに変えた井口監督は「球がそれたとはいえ、奨吾もよく走ったし、リプレーして審判もよく取ってくれた」とホクホク顔だった。

◆ あまりに珍しすぎる「エンタイトル二塁打」

三塁線ギリギリにポトリと落ちた打球が、思いもよらぬエンタイトル二塁打になる珍事が起きたのが、2013年5月19日のソフトバンクVS中日だ。

1点を追う中日は4回、一死から和田一浩、谷繁元信の連続四球と井端弘和の左前安打で満塁と一打逆転のチャンスをつくる。

だが、次打者・藤井淳志は、武田翔太の速球を打ち損じ、フラフラとした打球を三塁線に打ち上げた。ショート・今宮健太がダイレクトキャッチを試み、懸命に追ったが、あと1歩及ばず、打球は三塁線上にポトリ。今宮にとって、さらに不運だったのは、直後、大きく弾んだボールが、福岡ヤフオクドームのファウルグラウンドに設置された観客席に飛び込んでしまったことだった。

フェアの打球がバウンドしてスタンドに入ったので、記録上、エンタイトル二塁打になり、2者が還って、中日は3-2と逆転した。ファウルゾーンが狭い同球場ならではの珍事だった。

ラッキーな逆転2点タイムリー二塁打に、藤井は「気持ちで“落ちろ!”と願いました」と野球の神様のご利益にニンマリ。これで中日が勝利していれば、藤井もヒーローになるところだったが、皮肉にも、至福の時間はほんの一瞬で終わりを告げる。

その裏、先発・朝倉健太が先頭打者の柳田悠岐の打球を右太ももに受けたのが、ケチのつきはじめ。送りバントで一死二塁から細川亨に左前同点タイムリーを浴び、中村晃にも連打されたところで、岡田俊哉にスイッチしたが、二死後、内川聖一に左越え2点タイムリー二塁打を打たれ、3-5。さらに5回にも4点を失い、終わってみれば4-12の大敗で、藤井の“珍打”もすっかり霞んでしまった。

同球場では2007年から交流戦12連敗という相性の悪さに、井上一樹打撃コーチも「理由がわからないよね。方角が悪いのかな」と首を捻るばかりだった。

文=久保田龍雄(くぼた・たつお)

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