TBSテレビ、俳優・吉永小百合の「原点」となるテレビ初出演ネガを67年ぶりに発掘 / Screens

TBSテレビ美術部記録写真群14万枚の整理確認中に、吉永小百合が俳優デビューを飾ったドラマの写真ネガが67年振りに発見された。写真はテレビ『赤胴鈴之助』(1957年10月~1959年3月)のなかのもので、当時12歳の吉永は着物姿で「お妙」という娘を演じている。

発掘された写真について

吉永本人がこのほど「たしかに私です。」と確認。「あまり、覚えていませんが、なんだか懐かしいですね。」とコメントしている。写真は美術部のセット記録用のため、マイクやセットの端が映り込んだ広角にて撮影。その写真の中で、吉永は赤胴鈴之助役の尾上松助(尾上松也の父)の横に座っている。

写真は全部で7枚。座敷の写真がもう一枚、他に鬘(かつら)をつける様子が2枚、ディレクターの指示を大勢で聞いている写真3枚があった。はっきりと吉永の表情がわかる写真を今回公開。
昭和のエンタテインメントに詳しい娯楽映画研究家の佐藤利明は、「今回発掘された写真でテレビ初出演の頃の小百合さんの、あどけなくも凛とした表情に、青春スターの原点を垣間見ることができます。」と語っている。

娯楽映画研究家 佐藤利明

TBSテレビ・デザインセンター橘野永が発見

写真はTBSテレビ美術部(現デザインセンター)が、テレビ草創期の1957年ごろから部内の記録用にリハーサルや本番をテレビセットを中心に撮影していたもの。ビデオが実用化し映像が残るようになった1960年代後半以降も、美術部独自の撮影は続き、1996年ごろまでに無数のネガが雑然と倉庫の片隅に眠っていた。

吉永の写っていたネガは36枚撮りのネガの一本で、ケースに「S32.10」と書かれていた中に2コマあった。他のネガからもあわせて5コマが見つかった。発見したのはTBSテレビ・デザインセンターの橘野永(64)。彼自身が2003年美術デザイン部長だった際に5000本ほどあったネガの整理をはじめ、断続的に20年がかりでネガのデジタル化と写真の内容確認を進めていた。

なお、TBSテレビ美術部の写真群については、ほぼデジタル化の作業が終了し、このほど総コマ数が14万4400であることがわかった。写真は草創期からテレビ黄金時代の伝説の番組などをほぼ網羅している。

橘野永(2003年当時)

貴重な記録写真群である

これら発掘された写真アーカイブについて、テレビ史に詳しい元中央大学教授の市川哲夫は「テレビ草創期の記録の空白期を埋める貴重な記録写真群である。放送局のこれだけのアーカイブは他に例をみない。20年がかりの多大な労力に敬意を払う。現在では見ることがかなわない生放送のドラマや音楽番組におけるスターたちの知られざる姿や当時のテレビ制作の現場の空気を感じることができる」と話している。

吉永小百合は11歳の時にオーディションで合格し、ラジオドラマ『赤胴鈴之助』に「さゆり」役の声優をつとめ、芸能界への道を歩みはじめた。そして、その写真はよく知られている。一方、テレビ俳優としてのデビューはラジオの9か月後に開始したテレビ版『赤胴鈴之助』だったが、吉永が写る写真はこれまで番宣スティールなど、TBS内にはなかったのである。

写真左から2人目が吉永小百合

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