「65歳までに1,000万円」&「利回り4%の高配当株」のセットで“平均的な老後生活”を手に入れる方法【経済誌元編集長が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

公的年金の支給が始まる65歳までに1,000万円貯め、4%の配当利回りの株式で運用できれば平均的な老後生活は確保できる…こう語るのは、『一生、月5万円以上の配当を手に入れる!シニアが無理なく儲ける株投資の本』(日本実業出版社)の著者である川島睦保氏。さらに、65歳時点で2,000万円の資金を貯めることができれば「ゆとりある老後生活」も射程圏に入ってくるとも言っています。その理由や方法を書籍から一部抜粋しご紹介します。

死ぬまで月6万円の資金を手に入れる方法

私が推奨する投資手法は、超優良銘柄(株式)へ投資し、「値上がり益」ではなく高利回りの「配当」を得るというものだ。配当金を着実に積み上げることができれば、老後の生活資金の補充にもなる。

もし公的年金の支給が始まる65歳の時点で1,000万円の資金(しかも不要不急のおカネ)を貯めることができたとしよう。それを元手に配当金利回り4%の銘柄で運用できれば年間40万円(税引き前)の配当金を得ることができる。

新NISAを活用すれば税金はかからない。しかも投資した企業はいずれも日本を代表する企業だから倒産する可能性は低い。複数の銘柄に分散して投資すれば、リスクはさらに軽減される。

年間の配当金40万円を12カ月で割ると月当たり3万円強となる。現在の基礎年金は月額6万5000円だから、その半分に相当する。

さらに日経平均株価は過去10年のあいだ(2012年の終値と2022年の終値を比較する)で2.5倍に上昇している。すべての銘柄が日経平均と同じ動きをするわけではないが、65歳時点の元金1,000万円が10年後には2,500万円へ膨らんでいる。

メインの賃金ではなくボーナスとしての位置付けだった値上がり益(あくまで予想)は1,500万円に積み上がり、これを1年間当たりに換算すると150万円となる。これを12カ月で割ると月当たり12万円強の計算だ。

この値上がり益から毎月3万円を現金化し、月当たりの配当金3万円と合計すれば、基礎年金6万円がもう一つできあがる。

65歳時点で1,000万円&配当利回り4%で平均的な老後は確保

毎月3万円の現金化を図るには年間36万円の株式の売却が必要になるが、この程度の切り売りなら、年間の値上がり益のほうが上回っており、当初の1,000万円の元本が目減りする可能性は低い。

1,000万円の元本が維持できれば、それ以降の年間配当金40万円も安定的に確保できる、という計算になる。しかも1,000万円の元本は死ぬまで失われることはない。老後生活にかかる金額例は以下の通りだ。

平均的な老後生活の場合

不足額(約6万円)=生活費(約28万円)-公的年金(22万円)

ゆとりある老後生活の場合

不足額(約14万円)=生活費(約36万円)-公的年金(22万円)

平均的な生活でよいと考える場合、毎月約6万円が不足する。1年に換算すると6万円×12カ月=年間72万円の老後の準備資金が必要になる。

夫婦2人とも健康で65歳から20年間、つまり85歳まで生きるとすると、72万円×20年=1,440万円を準備しなければならない。

以上をまとめると、公的年金の支給が始まる65歳の時点までに1,000万円の資金を貯めて、4%の配当利回りの株式で運用できれば、「平均的な老後生活」は確保できる。老後の資金として1,440万円も準備する必要はなく、85歳以上長生きしても資金が枯渇することはない。

65歳の時点で2,000万円の資金を貯めることができれば、4%の配当利回りの株式運用だけで「ゆとりある老後生活」も射程圏に入ってくる。両方のケースとも定年退職後は老後の生活費を補うために働く必要がない。悠々自適の生活を送ることができるのである。

飛行機の操縦席(コックピット)のような計器は不要

高配当利回りの銘柄にうまく投資できたとしても、すべてが順調に運ぶとは限らない。

たとえば、投資したときには高配当利回りだったとしても、10年のあいだに投資した銘柄の株価が大きく値下がりしたり、配当が減配や無配になったりするかもしれない。倒産や合併で、投資した銘柄の株価が紙くず同然になっているかもしれない。

そうしたリスクを減らすための最も有効な対処法は、投資の対象を「業界のトップ企業」に絞り込むことだ。業界のトップ企業といっても千差万別である。今後予想される急激な技術革新やグローバル競争の荒波と無縁ではない。

しかしどの業界でも、トップ企業には資本力や経営ノウハウ、人材がそろっている。下位の企業に比べ生き残れる可能性が高い。

たとえば繊維やカメラの銀塩フィルムのようにグローバル化や技術革新で業界全体が斜陽化しても、東レや富士フイルムのような業界トップ企業であればあざやかな業態転換によって企業としての生き残りをはかることができた。

業界のトップ企業のあいだで分散投資を行なえば、株価の変動や減配・無配のリスクを大きく減らすことができる。

さらに言えば、高配当利回り銘柄への投資の大きなメリットは、経済や投資に関する小むずかしい理論や知識、用語、財務指標など知らなくても高いパフォーマンスをあげることができる点だ。経済の素人にはうってつけの手法だ。

配当利回りは、すぐに計算できる。『会社四季報』のページをめくって年間の予想配当金を調べ、それを株価(時価)で割るだけだ。『会社四季報』にはROE(株主資本利益率)、ROA(総資産利益率)、CF(キャッシュフロー)、PBR(株価純資産倍率)、PER(株価収益率)などの指標がたくさん記載されている。

しかし株式投資の素人にはその意味や活用法がよくわからない。計算方法も面倒そうだ。だが心配しなくてよい。こうした細かな指標はプロ向けの情報である。個人投資家は知っておいて損はないが、知っているからといって投資のパフォーマンスが上がるとはかぎらない。

こうした数値は、飛行機の操縦席(コックピット)の無数の計器が発するデータと同じだ。専門のパイロットが最新鋭の大型旅客機を安全運航させるときには不可欠だが、私たちが自動車を運転する場合はハンドル、アクセル、ブレーキの位置とその使い方さえ知っておけば十分だ。

プロのディーラーやファンドマネジャーが短期間で多くの銘柄に投資しなければならない場合には必須の道具となるが、少数の銘柄しか投資できない私たち個人投資家には、ほとんど必要ないツールといっても言い過ぎではない。

トップ企業ならROE、ROAなどをクリア

私たちが知っておくべきは、株式投資したおカネが年間の配当金でどのくらいの利益を生み出すか(=配当利回り)という投資尺度だ。

この「利回り」というものは金融商品に共通の尺度だ。配当利回りが債券利回りや預金金利に比べていかに有利か、不利かを知っておけばよい。配当利回りが高ければ株式投資に資金を振り向け、配当利回りが低ければ株式投資から資金を引き揚げて、別の有利な金融商品に投資すればよい。

株式の値上がり益は、「おまけ」、あるいは「臨時ボーナス」程度に考えておけば、投資で大やけど(大幅な損失)を被ることはない。株価の変動に惑わされて、短期売買を繰り返すことがないからだ。

こうした見方に対して、「株式の値下がりリスクはどうしてくれる」という反論があるかもしれない。

しかし10年単位の長期投資、つまり配当を取りながら10年間、株を保有し続ける投資では、そうした値下がりリスクは無視してよい。それでも経済は生き物だ。何が起こるかわからない。それだからこそ、有能な人材がそろっていて経営体力のある業界トップ企業に絞って投資するのである

どの業界でもトップ企業は、ROE、ROA、CF、PBR、PERなどの数値は、ほとんど合格の水準に達している。業界のトップ企業なら、個人投資家は『会社四季報』を購入し、時間をかけてこうした数値などいちいち調べる必要はない。

もし収益性や財務の健全性で重大な疑義があれば、証券のアナリストや経済記者が素早く嗅ぎつけて、すでに警鐘を鳴らしているはずだ。

トップ企業ほど「炭鉱のカナリア」が多くいる。高配当利回りの業界トップ企業へ長期投資することは、個人の投資家が、最少の努力で、最大のパフォーマンスをあげる最良の投資手法なのだ。

川島 睦保

フリージャーナリスト、翻訳家

※本記事は『一生、月5万円以上の配当を手に入れる! シニアが無理なく儲ける株投資の本』(日本実業出版社)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。

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