「恩返し」はコートで 九州文化学園から活水に転校 バレー女子の山道、4強逃すも前へ 長崎

【バレーボール女子準々決勝、長崎日大―活水】第1セット、スパイクを決めて仲間と喜ぶ活水のMB山道(右)=諫早市中央体育館

 「恩返し」のスパイクを何度も決め続けた。活水のMB山道愛莉(3年)は昨年、本格的な活動を停止した九州文化学園バレーボール部出身。同級生の多くが今大会の第1シード西彼杵へ転校する中、活水への転校を決断した。「自分が選んだ道を正解だと思えるようにしたい」。覚悟を決めてここまで頑張ってきた。
 西彼北小時代は水泳に熱中。西彼中入学後にバレーボールを始めた。試合をできるのがやっとの部員数で、全国的な実績は残せなかったが、身長175センチの高さと力強いプレーが関係者の目に留まった。3年時に県選抜に選ばれた。
 九州文化学園を志すようになったのもこのころ。厳しくも楽しくバレーをする雰囲気に憧れた。「こんな先輩たちになりたい」。15度の全国制覇を誇る伝統校への入学を決意した。
 だが、期待に胸を膨らませてボールを追っていた1年生の夏。井上博明監督が退任すると聞かされた。「これからどうなるんだろう」。みんな動揺した。それから数カ月後、井上監督が西彼杵で指導を続けると知った。徐々に「私たちも転校しよう」と声が上がった。
 「自分も行くべきか…」。迷いに迷った。そして活水への転校は「同級生を裏切る行為にならないか」と苦しんだ。「でも、大好きなバレーを続けて、違う環境で自分を成長させたい」。前に進みたい一心だった。家族も「愛莉が決めた道を応援する」と背中を押してくれた。
 2年生の春に活水に転校。不安もあったが、新しい仲間たちは明るく受け入れてくれた。「活水に行って良かったと言ってもらえるようになろう」。何事にも全力で取り組んだ。その姿は平野智也監督の心にも響いた。「常に向上心を持ってやっている。頼もしい存在になった」。2年生で臨んだ1月の県新人大会、4月の県春季選手権ともに4強入り。努力は結果となって表れた。
 第4シードで迎えた今大会。直前に利き手の右手と腰を痛めた。日常生活に支障が出るほどだったが「この仲間と最後までバレーがしたい」と痛み止めを飲んで出場した。この日の長崎日大との準々決勝も力強いアタック、ブロックでチームに貢献。「自分を受け入れてくれた同級生をここで引退させるものか」。何度ブロックに引っかかっても最後までボールを呼び続けた。
 結果、4強入りは逃した。「自分のせいで負けた…」。涙が止まらなかった。でも、最後まで仲間たちと一緒に戦えた時間は宝物になった。「途中から来た自分を受け入れてくれた。みんなにありがとうと伝えたい」
 他の3年生はここで部活を引退する予定だが、自らは10、11月の全日本選手権(春高)県大会まで頑張ろうと決めている。「次は結果で家族や監督、活水のみんなに恩返ししたい」。自らの意思でまた、前に進もうと思っている。

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