川崎一筋12年、ニック・ファジーカスの引退試合をリポート。背番号22は永久欠番に!

2023-24シーズン限りで現役を引退した川崎ブレイブサンダースのニック・ファジーカス選手の引退試合が、5月30日に川崎市・とどろきアリーナで開催された。

川崎のみならず日本バスケ界に多大な影響を与えたレジェンド選手の引退試合とあって、そうそうたるメンバーが顔をそろえた。ファジーカス選手と川崎でチームメイトの篠山竜青選手、藤井祐眞選手、長谷川技選手らをはじめ、過去に川崎に所属していた辻直人選手(群馬クレインサンダーズ)、大塚裕土選手(アルティーリ千葉)、さらには日本代表で共闘した田中大貴選手(サンロッカーズ渋谷)、ベンドラメ礼生選手(SR渋谷)、そしてサプライズで登場した渡邊雄太選手。ほかにもファジーカス選手とゆかりのある多くの選手が集結し、思い思いのプレーでファジーカス選手と最後の試合を楽しんだ。

この日の主役はもちろんニック・ファジーカス選手。試合のために「5日前からトレーニングを始めて、筋肉痛になった(笑)」というファジーカス選手は、前半はチームレッド、後半はチームホワイトで合計40分間プレーし、得点は驚異の73得点! 代名詞のフローターシュートや3ポイントシュートなど、多彩なシュートを連発。引退する選手とは思えないほどの得点力で会場のファンを魅了した。

篠山選手や辻選手など、Bリーグ屈指のエンターテイナーが集まったゲームは期待通りに見る人を楽しませてくれるプレーを連発。第2クォーターの途中にはオールスターゲームでバズった、辻選手の“連続フェイク”も再現され、会場は大盛り上がり。

試合終盤、残り22.2秒と2.2秒のタイミングで、それぞれタイムアウトが取られた。電光掲示板の残り時間を、ファジーカス選手の背番号「22」と合わせるという粋な演出も。最後は、ファジーカス選手と篠山選手のコンビプレーからファジーカス選手の得点、そして、辻選手の3ポイントシュートをファジーカス選手がブロックして試合終了。ファジーカス選手のいるチームホワイトが104-105でチームレッドを倒して勝利を収めた。

試合後、ファジーカス選手は「1年目か2年目以来、久しぶりに40分フルで試合に出場したので、明日歩けるかどうか不安ですが(笑)、すごく楽しかったです」と充実の表情であいさつ。「アリーナに足を運んでくれるファンがいたからこそ僕の12年間はすごく特別でしたし、やっぱりファンがいなければコートでプレーしても特別な感覚にはならないと思っています。最後まで僕のことを応援してくださって、本当に12年間ありがとうございました」と、アリーナを埋め尽くした満員のファンに感謝を伝えた。

そしてセレモニーで、北卓也GMから「ニック・ファジーカス選手、背番号22番、クラブ4人目の永久欠番に決まりました!」と発表。会場は大きな拍手と祝福の声で包まれた。

イベント終了後の取材で、今季まで5シーズンにわたりヘッドコーチを務めた佐藤賢次氏は「ニックのようにシュートタッチがよくて、パスもさばけて、賢い選手というのが、どれだけ試合に影響力を持っているのかということ。それに勝つために、いろんなチームがニックに対抗できる長身の動ける外国籍選手を獲得して、そこからまたレベルがどんどん上がっていったような気がします。リーグ全体の発展と成長と、日本バスケのレベルアップに大きく貢献した選手」と、ファジーカス選手が日本バスケ界に与えた影響を語った。

10年間、川崎で共に戦ってきた藤井選手は「今日は一緒に楽しもうという気持ちでした。10年間一緒にプレーしてきて、本当に楽しかったですし、ここまで自分を育ててくれたというか、成長できたのはニックのおかげだと思っているので、本当に感謝したいです。一番リスペクトを送りたい人なので、『ありがとう』という気持ちでいっぱいです」と、心からの感謝を述べた。

川崎の顔として苦楽を共にしてきた篠山選手はファジーカス選手の第一印象について聞かれると「最初は不安だったんですよ。さえない感じで歩いて入ってきて(笑)。ヨレヨレのネバダ大のTシャツに眼鏡をかけて。歩き方は今も昔も変わらずで…。それでも開幕戦で30点近い活躍を見せて、本当にすごい選手が来たんだなと思いました」と当時を振り返る。

それから12年間という長い間、ともにプレーできたことについて篠山選手は「どの競技を見渡してみても、10年以上同じチームで一緒にやり続けるというのは、なかなかないレアなケースだと思います。本当に家族みたいなもので、仲がいい、仲が悪いという言葉だけでは表現できない関係性だと思います。ニックを中心に、このブレイブサンダースの歴史を築けたというのは、自分にとってもありがたくて、バスケット人生というよりは、一人の人生の経験として、非常に貴重な12年を彼とともに送れたんじゃないかなと思います。日本代表でも勝者としてのメンタリティーを植え付けてくれました。(日本代表が)アジアで勝てない中で、ニックが加わって『僕がいる日本代表をオーストラリアは倒したことがない』という言葉から始まって、本当にどこが相手でも勝つという、意志と決意をもたらしてくれたと思います。そういうメンタルはあのオーストラリア戦(2018年のW杯アジア地区予選)で日本代表にガシッとハマったのかなと思います」と語り、クラブ、そして日本代表でファジーカス選手が果たした貢献度の大きさを強調した。

最後にファジーカス選手の会見が行なわれ、川崎一筋でやってきた理由を問われると「僕の世代は、コービー・ブライアントやティム・ダンカン、ダーク・ノビツキーなど、一つのクラブでやり続ける選手が主流で、そういうこだわりを持ち続ける世代に生まれたからこそ、それを貫き通したというのもあります。もちろんビジネスの世界ですから、移籍の可能性もありました。ただ、幸せには値段を付けられません。僕自身が川崎にいることにすごく幸せを感じていましたし、その幸せをお金や他の条件に変えてまで手放そうとは思いませんでした。それに加えて、『川崎といえばニック、ニックといえば川崎』と思われることが、僕の中でも誇りでもある」と、自らのスタイルを語ってくれた。

スペシャルゲストで渡邊雄太選手が参加したことは、当日までファジーカス選手も知らなかったようで「本当にサプライズゲストだったので僕自身も知らなくて、アリーナに来てから知りました。彼には、Bリーグでプレーする姿を僕自身が見られないというのは少し寂しいと伝えました。それから、今までバスケをやってきて、あまり疲れたことはなかったでしょ、と。来季Bリーグに帰ってきたら、めちゃくちゃシュートも打てるし、プレータイムも伸びるし、バスケをして疲れるようになるよという話をしました(笑)」と明かした。

今後については、「まずはゆっくりして、ゴルフを極めたい(笑)」としつつも、「何をやるかは未定ですけど、育成世代にかかわっていきたい。日本バスケを次のレベルにもっていく手伝いができればと思っています」と意欲を見せた。

ファジーカス選手から受け継いだ「勝ちにこだわる」バスケットで、来季、川崎ブレイブサンダースがどんな戦いを見せてくれるのか、今から楽しみだ。

※所属チームは、引退試合当日5月30日時点の情報です。

2024‐25シーズンのB1・B2所属クラブ
【B1】 24クラブ
東地区:北海道、仙台、秋田、茨城、宇都宮、群馬、☆越谷、千葉 J
中地区:A 東京、SR 渋谷、川崎、横浜 BC、三遠、三河、FE 名古屋、名古屋 D
西地区:☆滋賀、京都、大阪、島根、広島、佐賀、長崎、琉球

【B2】 14クラブ
東地区:青森、山形、福島、A 千葉、★富山、☆福井、★信州
西地区:静岡、神戸、奈良、愛媛、福岡、熊本、☆鹿児島
(☆印:昇格クラブ ★印:降格クラブ)

【バスケットボール男子日本代表 試合予定】

日本生命カップ 2024 (北海道大会)
バスケットボール男子日本代表国際強化試合
<GAME 1>6月22日 午後1:30(ティップオフ予定)
AKATSUKIJAPAN 男子日本代表 vs 男子オーストラリア代表
<GAME 2>6月23日 午後3:00(ティップオフ予定)
AKATSUKIJAPAN 男子日本代表 vs 男子オーストラリア代表

SoftBank CUP 2024 (東京大会)
バスケットボール男子日本代表国際強化試合
<GAME 1>7月5日 午後7:00(ティップオフ予定)
AKATSUKI JAPAN 男子日本代表 vs 男子韓国代表
<GAME 2>7月7日 午後7:30(ティップオフ予定)
AKATSUKI JAPAN 男子日本代表 vs 男子韓国代表

バスケットLIVE(https://basketball.mb.softbank.jp/)では、全試合配信。

■パリオリンピック男子グループフェーズ
7月27日 AKATSUKI JAPAN 男子日本代表vsドイツ
7月30日 AKATSUKI JAPAN 男子日本代表vsフランス
8月2日 AKATSUKI JAPAN 男子日本代表vs OQT(ラトビア開催)
※準々決勝は8月6日、準決勝は8月8日、決勝戦および3位決定戦は8月10日に開催予定。

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