授業料を半額補助、フリースクール利用に自治体が支援 「ひとりひとりの子どもに焦点をあてたい」 愛知

不登校児童生徒の“受け皿”となる、フリースクールに通う子どもたちを支援する動きが滋賀、京都、東京など全国に広がっています。

愛知県では、2024年度から大府市がフリースクールの授業料の助成を始めました。背景には、不登校児童生徒の数が5年間で2倍以上に増えたことにあります。 2022年度の小・中学校における不登校児童生徒の数(2023年10月に文部科学省が公表)は29万9048人で、5年前の14万4031人から2倍以上に増えています。 愛知県大府市(人口約9万3000人)では、2017年度に100人だったのが、2022年度は240人にまで増加し2.4倍になっています。 大府市教育委員会によりますと、こうした状況から、不登校児童生徒の支援を拡充するため、スクールソーシャルワーカーを増員したり、アバター(分身)が仮想空間で授業などを受けられる「教育メタバース」を活用し、子どもたちの居場所作りに繋げたりするなどの取り組みを実施しています。

愛知の自治体が授業料の半額を助成

大府市は、2024年度から「フリースクール等授業料補助金」制度をスタートさせました。 入会金や年会費、交通費は補助の対象外ですが、フリースクールを利用した児童生徒1人につき、授業料の半額が補助される仕組みで、月額2万円(年間24万円)が上限です。 教育委員会が定める指導要綱の基準に照らし、学校長が認めればフリースクールに通うことは「出席扱い」にもなります。 文科省の調査によれば、フリースクールの月額使用料は平均3万3000円。 大府市教育委員会は、補助額を月額2万円を上限にした根拠について、文科省の調査結果や、先行事例である京都・滋賀の自治体の金額を参考にしながら決めたと話します。

「ひとりひとりの子どもに焦点を」

4月のスタート時点で制度への申請件数は1件ですが、申請は増えてくるかもしれないと話し、年度途中でも随時受け付けていくということです。 大府市教育委員会の担当者は、今後もひとりひとりに行き届いた施策を展開したいと、声を強めます。 「子どもに力を入れる施策はどんどん進めていきたい。文科省がすべての児童生徒が安心して学ぶことができるよう策定した『誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)』」の考え方に、大府市も賛同している。ひとりひとりの子どもに焦点をあてた行き届いた施策を進めていきたい」(大府市教育員会・伊賀友信 指導主事)

フリースクールの授業料は家計負担にも

この補助金制度の利用を始めた、大府市内の中学校に在籍する男子生徒(中3)の家族は、「学外のフリースクールへの補助金は経済的負担を軽くするので有難い」と話します。 男子生徒は、勉強がついていけないことなどから中学1年生の頃から不登校がちになり、大府市に隣接する名古屋市内のフリースクール「カシオペア」に通っています。 頻度は月に3回程度。学習への集中力を高めるため、5~10分間学習した後は、5分間の休憩をはさむサイクルを繰り返しながら、1時間半程度すごします。 数学や国語でつまづいている部分までさかのぼり、学び直しをしています。 男子生徒の家族によりますと、費用は月に1万2000円(交通費は別)ほどで、これまで2年弱通って約22万円支払ってきました。 大府市の授業料補助は、助かるとしながらも、不登校の子どもを作らない対応を求めたいとしています。 同じく、「カシオペア」に通う名古屋市内在住の小学6年生の女子児童の母親は、名古屋市にも大府市と同様の助成があればよいと話します。 「ここは(カシオペア)は、学習の理解が遅れている部分をしっかり向き合って教えてもらえるので、通う回数を増やしたいけれど、(経済的な面で)躊躇してしまう。大府市のように助成があれば、子どもを通わせやすくなる」(女子児童の母親) 女子児童の母親は、不登校になった後、フリースクールなどの情報をどのように入手してよいか長い間迷いました。自分で調べるのにも限界があるとし、行政や学校に親が安心して相談しやすい環境を整えて欲しいと願っています。

教育の在り方が見直される時期

名古屋市熱田区にあるフリースクール「カシオペア」。 現在、小学生から高校生まで10人ほどの子どもたちが月2~3回のペースで通っています。読み書きが苦手な発達障害「ディスレクシア」で学校の授業ペースについていけない…学校には行きたいけれど生活のリズムが合わない…など、様々な理由で学校から足が遠のいている子どもたちです。 「カシオペア」の理事長・中久木俊之さんは、以前から、フリースクールの利用クーポン券のようなものを発行するなど、自治体が、利用世帯に補助する仕組みが、愛知県にも必要だと主張してきました。 愛知県内で大府市のような事例が、政令指定都市の名古屋市などにも拡大していくことを期待しています。 その上で、補助金制度も大事だが、不登校児童生徒を1人でも減らせるよう、教育の在り方、そのものが見直される時期にきていると話します。 「ひとりひとりの子どもに合わせる、学び方を柔軟に認めていくことが重要。例えば、書いて覚えることが難しい子どもは、耳で聞いて、ICTも使って覚えればよい。それを担任の先生たちが認めていく。授業に自由度を持たせ、午後は課題学習や探求の時間にしてあげるなど、学校で学ぶことを楽しくしてあげれば、子どもたちは学校に行けるようになると思う」(フリースクール「カシオペア」中久木俊之 理事長) (メ~テレ 加藤歩)

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