英MI6、中国政府職員をスパイに勧誘か 中国が非難

中国の国家安全省は3日、イギリス対外情報部(MI6)が中国政府職員2人をスパイに勧誘していたと非難した。両国はここ数カ月、スパイ活動を行っていると互いを非難し合っている。

同省によると、中国政府職員の男女2人がMI6に雇われた。MI6の工作員が男性の「金銭に対する強い欲求」を利用し、2人を雇うことに成功したとしている。

この男性は「ワン」という名前で、パートナーの「ジョウ」をイギリスのスパイに一緒に加わるよう説得したとされる。

イギリスでは数週間前、中国のためにスパイ活動をしていたとして男性2人が訴追されている。

2人は「物品、メモ、文書、情報」を外国に提供した罪に問われている。中国はこの疑惑について、「悪意のある中傷」だとしている。

先月にはイギリスで、香港の情報機関に協力していた罪に問われていた元英海兵隊員が遺体で見つかった。

「徹底的な調査」で判明と

中国は男女2人が関与する事案を突き止めた経緯は明かさず、「徹底的な調査」の結果とだけ説明した。

いまも調査が続いているとし、2人が訴追される可能性については明言しなかった。

BBCが英政府に説明を求めたところ、同政府は情報機関に関する主張については肯定も否定もしないとした。

中国国家安全省は今回の男性について、2015年に中英交換プログラムで英国留学していた際に、MI6がスパイとして育て始めたと主張している。

また、MI6の工作員が男性を「特別扱い」し、「男性の興味と弱点をより良く理解する」ために夕食会やツアーに招待していたとした。

工作員は卒業生を装って大学内で男性と親しくなり、男性に「有償コンサルティングサービス」をさせたとされる。

MI6の工作員は男性を介して女性もスパイに勧誘したと、同省は主張。2人は国家機関で「中核的な機密任務」を担っていたとも付け加えたが、任務内容や場所については詳細は明かしていない。

「ワン氏は当初は躊躇(ちゅうちょ)していたが、(工作員の)度重なる説得や誘惑、さらには強要に抵抗できず、最終的に同意した」と、国家安全省はチャットアプリ「微信(ウィーチャット)」に声明を投稿した。

「ワン氏が強く駆り立てたことで、ジョウ氏は情報収集活動に同意し(中略)夫婦はイギリスのスパイとなった」

中国政府がこの事案を公表することにした理由は不明だと、米カーネギー国際平和財団のシンクタンク「カーネギー・チャイナ」の学者チョン・ジャイアン氏は指摘する。報復のため公表した可能性はあるが、中国は過去にもスパイ行為が疑われる人物を逮捕したことはある。

さらなる詳細なしに、中国政府の主張の真偽を確かめるのは難しいと、チョン氏は言う。

「時には、それが明るみにならないこともある。司法制度も含めた(中国共産党の)不透明さが、とりわけスパイ事件に関しては、事件の詳細を理解するのを特に難しくさせる可能性がある」

国家安全省は昨年8月の公式チャンネル開設以降、頻繁に最新情報を投稿している。

今年1月には、国民を外国のスパイ機関に誘い込もうとする「エキゾチックな美女」に警戒するよう促した。

このほか、軍事装備の撮影を禁止したり、中国の飛行データを他国に送信する「航空愛好家ボランティア」を募る組織に警戒するよう発信している。

(英語記事 China says MI6 recruited Chinese couple as spies

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