世界初の「木造人工衛星」、6月4日にJAXAに引き渡し–土井隆雄氏や住友林業が開発

京都大学と住友林業は、世界初の木造の人工衛星である「LignoSat」を完成させたことを発表した。6月4日にJAXAへ引き渡し、9月にケネディ宇宙センターからSpaceXのロケットで国際宇宙ステーション(ISS)に打ち上げられる予定。京都大学の「有人宇宙学研究センター」特定教授で、元JAXA宇宙飛行士の土井隆雄も開発に携わった。

完成した木造人工衛星「LignoSat」のフライトモデル(出典:京都大学)

LignoSatは、2020年4月より取り組んできた「宇宙木材プロジェクト(LignoStella Project)」において、約4年かけて開発した木造人工衛星。1辺が100mm角のキューブサット(超小型衛星)で、NASAやJAXAの安全審査を経て、宇宙での木材活用が世界で初めて公式に認められたという。

木材宇宙曝露実験では、温度変化が大きく強力な宇宙線が飛び交う過酷な宇宙の環境下でも、割れ、反り、剥がれなどはなく、木材の優れた強度や耐久性を確認したと説明。そのほかの地上試験でも、木材は宇宙飛行士の健康や安全、精密機器や光学部品などに悪影響をおよぼさないことが分かったとのこと。

今回打ち上げる木造人工衛星の実機(フライトモデル)の構体には、住友林業紋別社有林で伐採したホオノキ材を選定。構体の構造はネジや接着剤を一切使わず精緻かつ強固に組み上げる「留形隠し蟻組接ぎ(とめがたかくしありくみつぎ)」と呼ばれる日本古来の伝統的技法を採用した。

2024年9月のISS到着から約1カ月後に「きぼう」日本実験棟より宇宙空間に放出される予定。木造人工衛星から送信されるデータ解析を通じて、木の可能性を追求するとしている。また、従来の金属製衛星は、大気圏に再突入させて燃焼させる際に「アルミナ粒子」と呼ばれる微粒子が発生し、地球の気候や通信に悪影響をおよぼす可能性があるとされている。木材は大気圏再突入で燃え尽きるため、この影響の低減も期待できるという。

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