優しさに泣ける…『クレヨンしんちゃん』ふたば幼稚園の先生の“子ども思いなエピソード”

アニメ『クレヨンしんちゃん』(c)臼井儀人/双葉社 (c)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK

1992年の放送開始から30年以上続く、臼井儀人さん原作の大人気アニメ『クレヨンしんちゃん』。日本だけではなく世界でも愛される言わずと知れた名作だが、その人気の秘密は個性豊かな登場人物たちや面白いギャグの数々はもちろん、人の優しさを感じてじーんと来るような感動エピソードがあるからではないだろうか。

そこで今回は、主人公・野原しんのすけが通う“ふたば幼稚園の先生たち”に注目。思わず泣ける、優しい先生たちの子ども思いエピソードを紹介したい。

■しんちゃんたち4人が遭難!? 嵐の中を走り出したよしなが先生

まずは、しんのすけのクラス「ひまわり組」の担任、よしなが先生のエピソードから紹介したい。

よしなが先生は、茶髪(原作の漫画では黒髪)のポニーテールがトレードマークの明るい先生だ。本名を吉永みどり、現在は結婚して名字が石坂になっているが、依然ふたば幼稚園では“よしなが先生”と呼ばれ、子どもたちに親しまれている。

そんなよしなが先生だが、アニメ第197話「山でソーナンしちゃったゾ」では泣いて取り乱す様子が見られた。

山での遠足中、しんのすけ、風間くん、マサオくん、ボーちゃんの4人がいなくなってしまったのだ。4人を探すため園長先生は捜索隊の出動を要請するも、最悪なことに天候が悪化、捜索開始は明日の朝からとなってしまう。

そんな状況に責任を強く感じていたよしなが先生は「私、探しに行きます」と、泣きながら雷雨のなかを走り出していく。そんなよしなが先生をまつざか先生がビンタ、そして園長先生が説得し翌朝の捜索開始を待つこととなった。

一方、しんのすけたち4人は、洞窟で雨を凌ぎ、持ってきていたおやつを分け合い食べるなどかなりたくましくサバイバルをしていた。朝になると焚火で狼煙を上げ、捜索を開始していたよしなが先生がそれを見つけるかたちで無事救助されている。

このエピソードでよしなが先生が取ろうとした行動は、決して正しいものではなかったかもしれない。しかし、どれほど彼女が子どもたちのことを思っているのかが分かる印象的なものだった。

■ふたば幼稚園をバカにしたスカウトマンを一蹴! まつざか先生

次は、ばら組の担任・まつざか先生のエピソードを紹介する。

まつざか先生は、よしなが先生のライバル的存在で「美人じゃないけど可愛い先生」のよしなが先生と対して「美人だけど性格が悪い」と、たびたびイジられている。

担当しているばら組は、ヒョウ柄のランニングシャツを着たチーターこと河村やすお君や、天才ゴールキーパーの若林君など、しんのすけのいるひまわり組に負けず劣らずキャラが濃い園児が多く、そんな優秀な園児たちをまとめあげるまつざか先生の先生としての能力は確かなようである。

アニメ第171話「誘われたまつざか先生だゾ」は、そんなまつざか先生が能力を買われ、エレガンス幼稚園にヘッドハンティングされるというエピソードだ。イケメンスカウトマンの「あなたのような美人先生を必要としている」という甘い言葉や、ギャラは今の倍という好条件に気持ちが揺らぐまつざか先生。

連日、喫茶店でまつざか先生を引き抜こうとするスカウトマンだったが「我がエレガンス幼稚園はお金持ちの子どもしか入れません 貧乏なハナタレガキはふたば幼稚園に行けばいいのです」という言葉にまつざか先生の気持ちは決まる。

コップの水をスカウトマンの頭にかけ「お生憎さま! 安月給でハナタレガキがいっぱいいる貧乏幼稚園でくたくたになって働いている そんな自分が結構好きなのよ」と言い、さらにスカウトマンの頭にコップをグリグリ。「二度とその面 私の前にあらわすなよ! うちの子どもたちの前にもね!!」と言い、スカウトマンを追い払った。

ふたば幼稚園とその園児たちをバカにしたスカウトマンを毅然と追い払うまつざか先生は、清々しく非常にカッコよかった。この一部始終を心配で見ていた園長先生、そしてしんのすけとネネちゃんも、このときのまつざか先生の様子を絶賛していた。

■しんのすけをバカにされた…強面で凄む園長先生

最後は、ふたば幼稚園の園長先生のエピソードを紹介したい。

本名を高倉文太、サングラスに天然パーマと派手な黄色いジャケット、そして色黒の強面が特徴の園長先生だ。その怖い見た目とは裏腹に非常に穏やかで子どもたちにも優しく、教育者としてもすばらしい人物である。しんのすけはその見た目から“組長”と呼ばれているが、毎回「園長です」と否定する姿も微笑ましく、ファンの間でも“組長先生”の愛称で親しまれている。

第148話「組長先生はこわいゾ」は、そんな園長先生の教育者としての素晴らしさが感じられるエピソードだ。大阪出張中のひろしに会うため新幹線に乗ったみさえとしんのすけは、偶然にも幼稚園の会合のため大阪へ向かう園長先生と隣の席となった。

途中、車窓から見える富士山に興奮し歌い出してしまったしんのすけに、一人の男性乗客が乱暴に怒鳴る。その男性の横柄な態度もいかがなものかと思うが、みさえは「大勢がいるところでは むやみにはしゃいだり騒いだりしちゃダメなの!」としっかりとしんのすけに注意の言葉をかけていた。

横にいた園長先生も「野原さんいいですねその叱り方。今のお母さんたちは他人になぜ叱られたのかその理由を子どもに教えませんからね。なかには怒った人を悪者にして叱らない人さえいます」と優しく言葉をかけた。

一方、しんのすけを怒鳴りつけた男性乗客は、禁煙車両にもかかわらずタバコを吸いはじめる。今度はしんのすけがそのことを注意すると、男性乗客は「こんなバカなら幼稚園の先生も苦労しているだろうぜ」と逆ギレし、しんのすけを笑い飛ばしたのだ。

その男性乗客の態度に園長先生はスッと立ち上がり「しんのすけ君はユニークな子ではありますが…おバカさんなんかじゃありません!」と強面できっぱり否定。男性乗客は「堪忍してください親分さん!!」とビビり上がり、すっかりおとなしくなっていた。

受け持つ子どもをバカにされたら、どんな相手だろうとしっかり否定し、その場で注意できる園長先生は非常にカッコよく、子ども思いのすばらしい教育者だとあらためて思うエピソードだった。

今回は、優しさに泣けるふたば幼稚園の先生たちの子ども思いエピソードを紹介してきた。

本作は軽快なギャグが飛び交う作品として注目されがちだが、今回紹介したようなエピソードのように、人の優しさを感じるものがたくさんある。今回はふたば幼稚園の先生に注目したが、もちろんそれ以外の登場人物も、それぞれ人としての魅力がしっかり描かれている。そんな丁寧な作りが、本作の人気の秘密かもしれない。

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