拉致問題「何も進まない」 横田滋さん死去4年、88歳早紀江さんが心情吐露

滋さんの印象を語る早紀江さん=4日午後、川崎市川崎区

 北朝鮮に拉致された横田めぐみさん=失踪当時(13)=の父滋さんの死去から5日で4年。めぐみさんを救出するため、滋さんと共に奔走してきた母の早紀江さん(88)=川崎市川崎区=は、「本当にさみしい。明るくて正直な人だった」と悼んだ。早紀江さんは進展しない拉致問題の早期解決へ、言葉を尽くしている。

 滋さんの命日を前にした4日、早紀江さんは報道陣の取材に応じた。

 「なんでこんなに大事なことなのに解決に向かわないんだろうね」

 毎朝、早紀江さんはリビングにある滋さんの遺影に話しかけているというが、「もうため息をつきながらです」と肩を落とす。

 2002年に小泉政権下で拉致被害者5人が帰国してから、20年余り目立った動きはない。拉致問題の再調査などを盛り込んだストックホルム合意から今年で10年がたつものの、北朝鮮は交渉のテーブルにつく素振りをみせない。

 「本当にむなしい。前進がない。何も分からない。なぜ分からないのかということも、分からない」

 早紀江さんは「何でも良いから明らかにしてもらいたい」と憤る。

 政府の姿勢にも不満を感じる。5月には、拉致被害者の帰国を求める「国民大集会」に出席した岸田文雄首相が、「トップ同士が腹を割って話し合う関係の構築が重要」と語った。しかし空転したまま。早紀江さんは「きちんと話し合いができる状況を作ってほしい」と注文をつけた。

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