画面上の被爆者とAIで疑似対話 広島市が装置開発へ 2025年度導入、原爆資料館などに常設

広島市役所

 広島市が人工知能(AI)を活用して画面上の被爆者と疑似対話ができる装置を開発することが4日、分かった。中区の原爆資料館と国立広島原爆死没者追悼平和祈念館に常設するほか、学校への出張展示を想定。2025年度の導入を目指している。被爆者の高齢化が進む中、「あの日」の記憶を伝えるツールの一つとして位置付ける。

 複数の関係者によると、装置は利用者の質問をAIが瞬時に分析し、事前に撮影した多様な被爆者のインタビュー映像の中から適切な回答を選んで再生する仕組み。日本語と英語の計5台を作る。

 被爆者は、広島平和文化センター(中区)が任命する被爆体験証言者5人に協力を求める。本年度に事業者の選定やインタビューを進め、来年度に装置の完成と利用開始を予定する。予算枠をあらかじめ確保するため、18日に開会予定の市議会定例会へ提出する本年度一般会計補正予算案に6800万円の債務負担行為を盛り込むという。

 被爆者の平均年齢が85歳を超え、体験を自ら伝える時間が限られる中、市は本年度一般会計当初予算で被爆体験記など既存の資料をAIが検索するシステムの構築に向けた検討費も計上。29年度以降の運用開始を予定している。

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