『Destiny』石原さとみ&亀梨和也の美しい笑顔 運命からの“生き直し”が描かれた最終話

12年前、追いかけても追いつけず、トラックが通り過ぎた後、そこに真樹(亀梨和也)の姿がないことを確認するなり膝から崩れ落ちた奏(石原さとみ)。“出会ってはいけない2人が出会ってしまった”ことで訪れてしまった宿命であり運命。

そして全ての謎が解き明かされた今、振り返ってはいけないと別れを告げ真樹の元から立ち去ろうとする奏が、それでも立ち止まって振り向き互いに笑顔で見つめ合う。そしてきっと奏は真樹の元へ駆け寄ったのだろう。運命に抗うように。運命を自ら掴み取るように。それもまた彼らが自らの意志で手繰り寄せた、予定調和でない紛れもない運命のチカラだ。

『Destiny』(テレビ朝日系)最終話は、運命に翻弄され続けた奏と真樹が、運命に立ち向かい、時に抗い生き直す姿が頼もしく描かれた。

野木浩一郎(仲村トオル)の自宅放火事件の犯人である元総理・東忠男(伊武雅刀)の秘書・秋葉洋二(川島潤哉)は、20年前の「環境エネルギー汚職事件」にも大いに関わっていることがわかる。東の息子の東正太郎議員(馬場徹)が収賄に関わっていることを示唆するメールを偽装し、捜査を混乱させるために送信した張本人こそが秋葉だったのだ。

そして、当時メールを送ったガラケーのデータを、秋葉はデータ保存サービスを利用し、ガラケー本体ではない場所にしっかりと残してあった。自分の身に危険が及んだ際に東に“殺されないように”自身を守る唯一の武器として。実際そのおかげで本件についても、野木邸の放火事件についても秋葉だけが罪をなすりつけられるとかげの尻尾切りに終わらずに済んだ。秋葉の思惑とは違ったようだが、ある意味当初の目論見通り、“お守り”にはなったわけだ。

事件が解決に向かうだけでなく、その過程で随分前からボタンを掛け違えたままここまできてしまった野木親子の間にあるわだかまりも、ようやく溶けていく。

「真樹はとんでもない馬鹿だ。だが、あいつの生き方が羨ましいと思う時がある。あいつを死なせたくない。生きていてほしい。どれだけあいつに憎まれていても真樹は私の大切な息子だ」

かなり遠回りしたものの、親子それぞれに命の危機に晒されてようやく素直になれる浩一郎も十分不器用で、やっぱり真樹と似た者同士の親子だ。そして浩一郎からのこの言葉こそ、真樹がずっとずっと心の奥底から希求してきたものだっただろう。その言葉を奏を通して聞けたことも相まってか、驚いたように照れ隠しながらも感激に揺れる真樹役の亀梨和也の表情に胸を掴まれる。

奏が恨みを晴らすためでなく、自身の検事としての仕事を全うするため真相を明るみにしたことで、結果、父・辻英介(佐々木蔵之介)の無念も晴らされ、彼の検事としての矜持は取り戻された。それは英介の嘘偽りのない姿勢と潔白を証明することになり、そして浩一郎にずっとまとわりつく後悔をそっと取り除き、生まれ変わらせた。着実に真実に近づく奏のはやる気持ちと、許しがたい思いを抑え込みながらそれでも職務を全うしようとする凛とした姿は、職業ドラマとの相性も良い石原さとみの真髄が光っていた。

手術後、奏の瞳に映る自分の姿を見て、真樹は自身が生きていることを確認した。いつだって、おかしな方へ、おかしな方へ転がっていく自分の人生や運命を諦めないでいてくれる人がいる。それはどんなに心強いことだろうか。

そもそも奏と真樹だけでなく知美(宮澤エマ)と祐希(矢本悠馬)それぞれを結びつけたのはカオリ(田中みな実)であることがわかり、奇跡に近い出会いにも感謝すべき運命がちりばめられている。運命は連鎖する。良い方にも悪い方にもどちらにも。そして運命は書き換えられるし、塗り替えられる。自らの強い意志さえあれば、逸脱だってできるし運命をも凌駕できる。真樹の手術を医師として執刀した貴志(安藤政信)の姿に、知美が司法試験を受けることを不意に決意したように。

12年前のように、大切な人の元に無邪気に無防備に駆け寄ることができたのだろう奏の姿が本当に美しかった。弾けるような笑顔と共に、そのままの自分で大切な人の元に飛び込もうとする強さがただただ眩しかった。
(文=佳香(かこ))

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