『美味しんぼ』栗田ゆう子、「聖人君子」ではない説を検証 読者を驚かせた厳しすぎる発言といえば?

昨今公式YouTubeチャンネルでアニメ版が公開され、Xではダイジェスト動画がアップされている料理漫画『美味しんぼ』。刺激的な発言や内容が話題となり、かつてのファンはもちろん、連載当時を知らない世代からも支持を集めている。

そのなかで話題となっているが、主要人物の1人である栗田ゆう子の発言だ。栗田は山岡士郎や海原雄山、富井副部長、大原社主などクセの強いメンバーのなかで「聖人君子」のようなイメージを持つ人も多いが、実はかなり強気な発言をすることも。Xでは「ちょっと厳しい栗田さん」というハッシュタグでまとめられているほど話題となっている。今回はそんな栗田の厳しい発言の一部を紹介したい。

「山岡さんはここのおスシを食べる資格ないわねっ」

銀座の寿司屋「銀五郎」のオヤジが、客に高圧的な態度を取り続けたうえ、栗田に「スーパーのパックの寿司でも食ってりゃいいんだ」と吐き捨てたことに激怒した山岡。元銀座一と言われた名職人で、現在は佃島の「しんとみ寿司」を営む富二郎と対決させ、おごり高ぶった銀五郎の鼻をへし折った。

その後、山岡と栗田、大原社主とともに富二郎の寿司を味わうことに。富二郎が銀座から佃島に店を移したことについて「社用族や食通相手ではなく、気心のしれた人たちに質素で飾り気のない真心のこもった商売をしたいと思った」と語ると、栗田は感銘を受け「おじいさんに握ってもらうと、すごくくつろいで楽しい気持ちになってくる」と笑った。
山岡はこれを受けて「食い物は心さ。究極のメニューなんて言うが、その心をメニューにどう表せというのか。表せっこない!」と当時発足してなかった「究極のメニュー」をバッサリ切る。

すると栗田は「山岡さんはここのおスシを食べる資格ないわねっ。このおじいさんは真心を握ろうと一生懸命やっているのに、山岡さんはどうなの。グータラでなにもしないで、えらそうに能書きたれているだけじゃないの」と新入社員にもかかわらず、先輩社員を「ボロカス」に叩きのめしてみせた。

「究極のメニュー」発足以前の山岡はグータラで尊敬されない社員だったようだが、それでも歳の離れた先輩を「ボロカス」にやりこめてしまうのは、相当な気の強さを持っていないと、できないのでは。

「山岡さんもさめ皮でおろすといいんじゃないかしら!」

縁談がまとまりかけていたものの、父親同士の揉め事で破談になってしまった会社社長の佐橋。会食の席で庄田が突然怒り出したことから大原社主を頼り、山岡に相談が回ってくる。

庄田はわさび園を経営しており、佐橋がわさびを醤油に溶かしたこと、わさびおろしで擦ったことに腹を立てたことが判明。鮫皮のわさびおろしを使う、刺身の上に載せて食べるなどすることで、誤解が解け、和解。縁談もまとまった。

文化部で谷村部長が「縁談がまとまったそうだ」と話すと、お局軍団の荒川絹江(当時田畑)が「人のことよりそろそろ自分のことを考えても良いころないのかしらね?」と嫌味を放つ。富井副部長も「山岡はピリっとしたところがない。縁談はまとまらない」と追い打ちをかけた。

すると栗田も「山岡さんも鮫皮で下ろすといいんじゃないかしら」とポツリ。この嫌味に山岡は新聞を丸め、叩こうとしていた。これは6巻のエピソードであり、栗田はまだまだ新入社員の域を出していない。それでも嫌味をぶつけてくる精神力の強さは凄まじいものがある。

「典型的成金根性ね」

大原社主の紹介で料亭にて鶴森運輸の鶴森会長と食事をすることになった山岡と栗田。鶴森は古九谷の高価な皿や純金の鍋を見せびらかす。

純金の鍋について鶴森が「純金は熱伝導が高いから鍋にもってこいなんです」と胸を張ると、大原社主は「古九谷の大皿に純金の鍋か。これは鶴森会長だからできることです」と歯の浮くようなお世辞を口にする。

鶴森が「百万石の大名でもこんな凄い鍋は持ってなかったでしょうな」と高笑いすると、栗田は心の中で「私たちを招待したかったのは、この鍋をじまんしたかったからなのね。典型的成金根性」と厳しい言葉を浴びせていた。鶴森が成金根性を持っていることは間違いなさそう。心の中とはいえ、それをバッサリ指摘するのは、なかなかできないことではないか。

物語序盤に見せたかわいらしさと、時折見せる厳しさと気の強さ。栗田は男性が好きになる要素をたくさん持っている。

(文=佐藤俊治)

© 株式会社blueprint