定年まで勤めるつもりの社員すら“約6割”が転職サイトに登録しているという事実…「転職前提」のキャリアプランを組む若手が増加しているワケ

(※写真はイメージです/PIXTA)

ここ数年、若手の会社員の就労意識はじわじわと変化していました。それに加えて、コロナ禍で多くの人が経験した「テレワーク」という新たな働き方が若手のキャリア観に大きな変化をもたらしたといいます。本記事では、長年蓄積してきた人事業務の経験を活かして数多くのキャリア相談に取り組む木村勝氏による著書『会社を辞めたいと思った時に読む セカンドキャリアの見つけ方』(ビジネス教育出版社)から一部抜粋し、若手のキャリアに対する意識がどう変化しているのかを解説します。

テレワークがもたらした「会社を辞めたい」への影響

コロナ禍は、多くのサラリーマンにとってこれからの自分自身の働き方を改めて考え直す大きなきっかけになりました。

日経によるアンケート調査(「転職への関心が高まった」6割に コロナ禍で急上昇ビジネスパーソン700人調査(上)2020年9月12日 日経電子版)を見るとコロナ禍を経験し、約6割が「転職への関心が高まった」と答えています。

この傾向は、若手だけではなく、ミドルシニア層もキャリアに関して大きく考えが変わったという調査結果が出ています。

例えば、2021年4月から6月にエン・ジャパンが実施した35~59歳のミドル世代を対象にした調査でも55%が「新型コロナウイルス禍で転職意欲が高まった」と回答しています。

こうした意識の変化にはテレワークの影響があります。テレワークを経験したサラリーマンは、一日中フル稼働していたと思い込んでいた自分の仕事時間の中にかなりの隙間時間が存在することや朝夕の通勤時間の無意味さに気がつきました。

こうした実質的に増えた可処分時間を自分の生き方・将来の方向性を探る内省の時間やこれからのキャリアチェンジのためのリカレント(学び直し)の時間に使うサラリーマンが増えていることが先ほどの調査結果の背景にあると推察されます。

「会社を辞めたい」というマインドに関していうと、「通勤ラッシュ無しの働き方」→「ますます強くなる会社へ行って働くことへの嫌悪感・億劫感」→「会社に行かずテレワークで働きたい」→「テレワークで働ける会社に転職したい」という流れです。

また、テレワークにより、「場を同じにする経験が少なくなる」→「仕事の外の付き合い(飲み会・イベント)の減少」→「会社への帰属意識の希薄化」という流れからも転職という行動に繋がってきます。

大きく変わった若い世代のキャリア観

コロナ禍以前から若手の就労意識の変化は進んでいます。そのことを指し示す調査は、数多くありますが、ここではその中から2つの調査結果をご紹介したいと思います。

まずは、1つ目の調査は、日本能率協会が2019年度の入社半年・2年目の若手社員に行った意識調査です。超若手社員の職場や仕事内容に対する考え、現状の満足度を探るための調査ですが、結果は次の通りになっています。

・約半数が転職を検討・活動中で、転職サイトにも登録済み。定年まで勤めるつもりの社員でも6割が転職サイトに登録済み

・約3割が「副業・兼業している」と回答。定年まで勤めるつもりの社員のほうが実施率約5割と高い

・副業・兼業に興味がある/行っている理由は、「収入を上げるため」が多数

すでに若手は、「転職前提」で自らのキャリアをしたたかに考えているのです。

もう1つ調査結果をご紹介します。日本生産性本部が1969年から実施している「新入社員の働くことの意識」という調査からは、時代とともに変化した就労観が読み取れます。

例えば、「働く目的」という質問に関しては、19年のトップは「楽しい生活がしたい」で約40%。かつてはトップだった「自分の能力をためす」は長期にわたって減り続け、10%と過去最低を更新しています[図表1]。

[図表1]働く目的(主な項目の経年変化)

筆者も大学でキャリア教育の授業を担当する中で、学生から受ける印象もこの調査結果に合致しています。

長年1つの会社で働き続けた親世代の長時間労働や伸び悩む待遇が反面教師となり、自分は納得のいく効率的な仕事を選びたいという傾向がこうした調査結果に出ているのではないかと推察します。

若手の時代の変化への感覚は敏感ですので、こうした働くことに関する若手意識の変化は、ミドルシニアにとって、実は先行指標として参考にすべき情報なのかもしれません。

将来の企業活動の担い手となる若手の考え方がこれからの企業経営・人事施策等に影響を及ぼすことは間違いありません。

木村 勝

行政書士
リスタートサポート木村勝事務所 代表

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