Intel、Lunar LakeはSnapdragon X Eliteにあらゆる点で優位とアピール

by 笠原 一輝

第3四半期に投入するLunar Lakeを高く掲げるIntel CEO パット・ゲルシンガー氏

Intelは、COMPUTEX TAIPEI 2024の開幕初日となる6月4日(台湾時間)の午前に、パット・ゲルシンガーCEOによる基調講演を行ない、最新製品となる「Xeon 6」や、第3四半期に投入を計画している次世代薄型ノートPC向けSoC「Lunar Lake」に関しての各種発表を行なった。

Intelは現在カンパニースローガンの1つとして「AI Everywhere」を打ち出しており、クラウド・データセンターからPCまで、AIを活用できる環境をユーザーに提供していくことを掲げているが、基調講演もそうしたIntelの社是がタイトルになっている。

第2世代Xeonに比べて2.6倍の電力効率を実現するXeon 6 6700E

Intel 286(当時の製品名は80286)を掲げるパット・ゲルシンガー氏

Intel CEO パット・ゲルシンガー氏は、Intelと台湾の関わりは1985年から39年におよんでいると述べ、その頃にIntelが販売していた製品としてIntel 286(当時は80286)を手に取り、「当時この286は10万トランジスタと、当時としてはものすごい製品で、私のキャリアにとっても重要なステップになった製品だ。それに対して我々が今販売しているのは10億トランジスタにもおよぶチップで、1兆トランジスタなんていう製品が実現するのもまもなくだ」と述べ、最近のゲルシンガー氏の決め台詞の1つである「ムーアの法則は生きている、そしてさらに進化している」を繰り出して、半導体産業がこれからも止まることなく進化していくと強調した。

Sierra ForestことXeon 6 6700Eを紹介するゲルシンガー氏

続けてクラウド・データセンターについて話し始めた。今回Intelは開発コードネームSierra Forestという、Eコアだけで構成された144コアのデータセンター向けCPUを「Xeon 6 6700E」として正式発表し、第3四半期には開発コードネームGranite Rapidsで知られる「Xeon 6 6900P」を投入。そして来年の第1四半期には、288コア版のSierra ForestとGranite Rapidsのコア数が少ないバージョンが投入される。

わずかなサーバー機器で、左のフルラックな第2世代Xeonの性能を実現
288コア版のSierra Forest
Granite RapidsことXeon 6 6900P

「Xeon 6 6700Eは第2世代Xeonに比較して電力効率が2.6倍になっている。必要となるラックも大きく減らすことができる」と述べ、第2世代Xeonではラックをフルに埋めないと実現できなかった性能が、Xeon 6では少ないサーバー機器でそれが実現できる様子をデモした。

Gaudi 3を紹介
Gaudi 3を搭載したOEM/ODMメーカーのシステム

また、ゲルシンガー氏はAIアクセラレータGaudi 3に関してもアップデートを行ない、Gaudi 3を8つ搭載したシステムの価格が12万8,000ドルであることを明らかにした。そしてGaudi 3で動いているLLMベースのAIに、競合他社との価格差を調べさせると、AIが競合「他社の3分の2」だと答えることで、高いコストパフォーマンスを持っていることをアピールした。

Lunar LakeはCPUも、GPUも、NPUも競合のSnapdragonを上回り、前世代と比較して40%の電力削減とゲルシンガー氏

Lunar Lakeなどが搭載されたノートPCを紹介するゲルシンガー氏

講演の後半ではLunar Lakeに関して紹介した。Intelは、MicrosoftがCopilot+ PCを発表したのと同じタイミングでLunar Lakeを第3四半期に投入することを明らかにしており、今回はその技術的な詳細が明らかにされている。

上記の記事で紹介しているようなLunar Lakeの技術概要を説明し、ゲルシンガー氏は「Lunar LakeはCPUも、GPUも、AI(NPU)も競合のSnapdragon X Eliteを上回っており、ソフトウェアの互換性問題もなく好きなアプリケーションを走らせることができるし、消費電力も40%削減している強力な製品だ」と述べ、高い競争力をもっているとアピールした。

Intelの製品ロードマップ
Panther LakeのコンピューティングタイルはIntel 18Aで製造されると明らかにされた

そしてLunar LakeがTSMCで製造されることについて触れ「このLunar Lakeは台湾との協力で作られる製品だ」と台湾の象徴企業であるTSMCとIntelのコラボレーションでLunar Lakeが成り立っていると述べると、詰めかけた台湾の聴衆から拍手が起きた。

今後のIntelのロードマップについては、2025年にLunar Lakeの後継としてリリースされるPanther Lakeはさらに性能と電力効率を改善させると述べ、Panther Lakeのコンピュートタイルは、Intel 18Aで製造されることになり、既に来週にテストチップの生産を開始すると明らかにした。

ASUS 会長 ジョニー・シー氏
Acer CEO ジェーソン・チャン氏
AcerのLunar Lake搭載薄型ノートPC

また、ASUSのジョニー・シー会長、Acerのジェーソン・チャンCEOの二人を順番にステージに呼び、両社がLunar Lake搭載PCを準備していることなどを話あった。既にASUSはLunar Lake搭載次世代ノートPCを発表しているほか、Acerのチャン氏は開発中のLunar Lake搭載薄型ノートPCを公開した。

Whatever has been done can be outdone(なされたことは、いつの日か何でも打ち負かされる)

講演の最後にゲルシンガー氏は、かつての自身の上司でもあるゴードン・ムーア氏の有名な言葉「Whatever has been done can be outdone」(何かが成し遂げられたなら、それを超えていくこともできる)を紹介し、ゲルシンガー氏的に少しモディファイすると「Whatever has been done will be outdone」(なされたことは、いつの日か何でも打ち負かされる)になると述べ、常識を疑ってこれまで成し遂げてきたことを捨ててでも新しいチャレンジをしていくべきだとまとめて、講演を終えた。

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