“ドキドキ”楽しかった全米女子OP 2勝目の笹生優花さんのすごさ、渋野日向子さんの笑顔に思う【原田香里のゴルフ未来会議】

全米女子オープンで単独2位になった渋野日向子(撮影:ALBA)

ゴルフを愛するみなさん、こんにちは。原田香里です。いやぁ、全米女子オープン、すごかったですねぇ。まだ興奮の余韻が残っています。

日本勢が21人も出場しているということで初日からずっと気にしていたのですが、最後まで本当に楽しく、ドキドキしながら見ていました。2021年に続いて優勝した笹生優花さんは、本当にゴルフが抜きんでていました。ドライビングディスタンスは4日間の平均で280.7ヤード。出場選手中第3位です。優勝争いを映像で見ているだけでも、他の選手とはセカンドショットの景色がまったく違いました。

飛距離だけでなく、パワーがあるので球の高さも十分。スピンの効いた球でグリーンを狙っていけることが大きなアドバンテージになっていたのはまちがいありません。飛距離に注目が集まる笹生さんですが、ショートゲームも上手。絶妙なアプローチ、パターを何度も目にしました。

19年に日本のプロテストに合格した笹生さんは、コロナ禍で世界中のツアーが一旦止まった20年にプロデビュー。多くの試合が中止になるなか、この年の開催も、笹生さんのデビューからも2試合目となった「NEC軽井沢72」で初優勝。2週後のニトリレディスでも勝って2試合連続優勝し、圧倒的な存在感を見せてくれたことをよく覚えています。そういえば、「ニトリレディス」の小樽CC(北海道)、軽井沢72北コース(長野県)は、どちらも洋芝のコースですね。

日本でプレーしていた頃、理事だった私は接点がありましたが、当時の笹生さんはまだ10代。それでも「考え方がしっかりしている」という印象があります。天真爛漫だけど、やるべきことはきちんとやる、という感じでした。
今大会を見ていても、気持ちの切り替えが上手なことはとてもよくわかりました。

無意識にそれができているのではないでしょうか。最終日にも6番で4パットのダブルボギーを打っているのに、そこからズルズルと崩れることなくパーを重ね、バックナインに入って一気にスコアを伸ばしています。それでも一つ集中力アップに役立っているのかな、と思ったのがショットの合間にサングラスをかけるシーンです。

サングラスをかけることによって、曇り空でも明るく見えるレンズがあり、その効果ももちろんあります。でもそれだけではないのかもしれません。あくまで私の想像ですが、サングラスをかけると周囲から表情が見えなくなります。自分の世界に入りやすいのです。どうでしょうか。

全米女子オープン優勝は、2度目のタイトルとしては22歳11カ月13日で史上最年少。米国選手以外での複数回優勝は、アニカ・ソレンスタム(スウェーデン)、カリー・ウェブ(オーストラリア)、インビー・パーク(韓国)に続く4人目だそうです。本当にすごい。今後がまた楽しみになってきました。

もう一人、注目したのが単独2位になった渋野日向子さんです。ファンのみなさんも、久しぶりに映像にたくさん出てきた渋野さんの笑顔を見て、一安心したのではないでしょうか。私も同じ気持ちです。

19年の「全英女子オープン」優勝以来の後、21年から米ツアーを中心にプレーをしていますが、不振にあえいでいました。スイング改造を重ねたり、コーチを変えたりと試行錯誤していたのですが、なかなか結果につながらずに苦しんでいました。

今季も、この試合まで9試合に出場して予選通過は3回だけ。ベストフィニッシュは50位タイという状況でした。それが一転して単独2位。全米女子オープンで72ホールを終えてアンダーパーだったのは、勝った笹生さん(トータル4アンダー)と渋野さん(トータル1アンダー)の二人だけだったのですから、笑顔が出るのもわかります。

調子が悪いときには、周囲はいろいろと勝手なことを言うものです。でも、渋野さんはそのなかで、コツコツと自分でやるべきことを続けてきたということ。プレーしている身体を見ても、そのことが伝わってきてうれしくなりました。

今大会には笹生さん、渋野さんを含めた21人の日本勢が出場していました。古江彩佳さんが6位タイ、小祝さくらさん、竹田麗央さんが9位タイと5人がトップ10入りを果たしています。予選通過も14人と、それぞれが実力を発揮しています。今回、出場しなかった選手たちにも大きな刺激になったに違いありません。

海外で多くの選手が活躍するのを見ると、日本選手のレベルアップが感じられますが、さらに上を目指すために、試合のセッティングなどをもっと考える必要があるのではないか、ということも感じました。これは、開催コースさんのご協力を仰がなくてはならないのですが、女子だけでなく、日本のゴルフ界全体でやっていくべきことだと思うのです。

さまざまな経験を積んで、自分を磨いていく選手たち。そのチャンスを増やすことも大事な仕事です。素晴らしい戦いを見て、その思いをより強くしました。選手のみなさん、お疲れ様でした。どうもありがとう!

■原田香里(はらだ・かおり)
1966年10月27日生まれ、山口県出身。名門・日大ゴルフ部で腕を磨き1989年のプロテストに合格。92年の「ミズノオープンレディスゴルフトーナメント」でツアー初優勝。93年には「日本女子プロゴルフ選手権大会」、「JLPGA明治乳業カップ年度最優秀女子プロ決定戦」勝利で公式戦2冠を達成。通算7勝。その後は日本女子プロゴルフ協会の運営に尽力し21年3月まで理事を務めた。

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