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ジャイアント馬場さんがこの世を去ってから、2024年で25年が経つ。2mを超える長身からくり出される「16文キック」や「脳天唐竹割り」といったド迫力の大技で国民的人気を博し、アントニオ猪木さんとともに昭和プロレスを牽引した伝説は、令和になっても色褪せることはない。
そして「ジャイアント馬場」のビッグネームは漫画にも及んでいる。彼をモデルにした漫画キャラはとても多く、なかには本人の半生を描く伝記風フィクションもあるほどだ。
今回は偉大なレスラーを振り返る意味も込めて、馬場さんをモチーフにしたキャラが登場する漫画を紹介しよう。
■主人公の刃牙を苦戦させた“マウント斗羽”『刃牙』シリーズ
まずは格闘漫画のトップランナー『刃牙』シリーズ(板垣恵介さん)からだ。本作には実在の格闘家をモデルにしたキャラが複数存在し、馬場さんは“マウント斗羽”というキャラにアレンジされて登場している。
名前こそ違うが、2mを超える長身やプロレス界に君臨してきた経歴、なにより観客を圧倒するパワフルな戦いぶりはジャイアント馬場さんそのものだ。
マウント斗羽は、主人公の範馬刃牙とも対戦している。167cmと小柄な刃牙を身長差とパワーで攻め立て、何度反撃されても倒れないタフネスで圧倒。最後は刃牙の格闘センスの前に敗れたが、バーリトゥード(なんでもあり)でも通用するプロレスの凄まじさを見せつけた。
ほかにも猪木さんモチーフのアントニオ猪狩と夢の“BI対決”をおこなうなど、マウント斗羽の活躍の場は多い。板垣先生の馬場さんへの思いが感じられるキャラだ。
■本人への取材をもとにした半生記風フィクション『ジャイアント台風』
かつて日本中を巻き込んだ“ジャイアント馬場ブーム”。その熱狂に一役買ったといわれているのが、1968年に『週刊少年キング』(講談社)で連載を開始した『ジャイアント台風』(原作:高森朝雄(梶原一騎)さん・作画:辻なおきさん)だ。
馬場さんがプロ野球の二軍選手からプロレス界のスーパースターへ登り詰めるまでの半生を描く本作は、馬場さん本人への取材をもとに執筆されている。
ファンにはわからない本人の苦労や悩みが克明に描かれており、素朴でまっすぐな青年としての馬場さんが見られるのが本作の特徴だ。読んでいると「東洋の巨人」とまで呼ばれた彼が、なんだか等身大の青年に見えてくるから不思議である。
一方で、高森先生お得意のオーバーなスポ根描写もふんだんに盛り込まれている。
たとえば作中で、全身にバーベルを縛りつけられた馬場さんのもとに、蜂の巣を投げこまれるトンデモ特訓が出てくる。
蜂の大群が体中を刺してくるのに、重いバーベルでちっとも身動きがとれない。絶体絶命のピンチから脱出する根性が試される試練なのだが……さすがに「ありえないだろ!」とツッコミたくなる。だが、絵面に凄みがあるのでなぜか楽しめてしまうのだ。
『ジャイアント台風』は事実とフィクションがほどよく混ざりあっており、馬場さんの半生をエンタメとして昇華した名作といえよう。
■アントニオ猪木視点から見たジャイアント馬場『プロレススーパースター列伝』
スターレスラーを題材にしたドキュメンタリー風フィクション『プロレススーパースター列伝』(原作:梶原一騎さん、作画:原田久仁信さん)7、8巻では、「なつかしのB・I砲! G馬場とA猪木」と称して、馬場さんと猪木さん2人のヒーローのプロレス人生が描かれている。
事実をもとに本人の半生を描くスタイルは『ジャイアント台風』と同じだが、本作では制作協力の猪木さん視点がメインとなっている。つまり「あのアントニオ猪木から見たジャイアント馬場は何者だったか」が楽しめるのがポイントだ。
出世のスピードでは、馬場さんに一歩譲った猪木さん。師匠の力道山さんに気に入られ猛スピードで成り上がっていくライバルに、猪木さんは「今に差をちぢめてやるぞ!!」と対抗心を燃やしまくる。かと思えば、その才能を前に「これほどの男と競争しようなんて、たしかに十年はやいのかッ!?」と焦ったりと、さまざまな感情を向ける。
猪木さんにとって、馬場さんがいかに大きな存在だったか読み取れるのが面白い。
迫力あるプロレス漫画としてだけでなく、同じ時代を生きた2人の“プロレススーパースター”のドラマとしても完成度の高い漫画だ。
ジャイアント馬場さんをキャラクターに昇華した漫画を紹介してきた。当時の熱狂を肌で感じることはもうできないが、当時の漫画にはあの頃のぬくもりが残っている。逝去から25年の節目を迎えた今年こそ読んでみてもいいかもしれない。
これは余談だが『浦安鉄筋家族』(浜岡賢次さん)には“大巨人”と呼ばれる主人公・小鉄の忠実な子分が登場する。長身で、とても強いプロレスラーで、口癖が「ババー」なのだが……あえて言うまい。