日本第一熊野神社 第四殿屋根修理見学会(2024年5月18日・19日開催)〜 貴重な文化財を後世に残すために

ゴールデンウィークも終わり、新緑が美しい季節になりました。また春まつりの時季ということもあり、各地の神社で祭礼が催されています。

市内でも有数の由緒ある神社「日本第一熊野神社」でも、2024年5月18日・19日の2日間、春まつりが開催されました。

今回は春まつりに合わせて開催された「第四殿屋根修理見学会」、および文化財を後世に残していくための取組について紹介します。

「日本第一熊野神社 第四殿屋根修理見学会」について

日本第一熊野神社(日本第一熊野十二社権現宮)は、倉敷市郷内地区にあり通称は「熊野神社(くまのじんじゃ)」と称されます。

「日本第一熊野神社 第四殿屋根修理見学会」は以下の日程で開催されました。

  • 2024年5月18日(土)
    午後4時30分〜、午後5時〜、午後5時30分〜
  • 2024年5月19日(日)
    午前9時〜、午前11時〜、午後12時〜、午後1時〜、午後2時〜

普段は見ることのできない本殿第四殿を、見学できる貴重な機会でした。また、催事として備中神楽などの上演もあります。

見学会に足を運びました

5月19日の午後1時前に現地に到着。
工事現場に入るので、受付にてヘルメットを受け取り待機します。

定刻の午後1時になり、見学会開始です。この回は私を含め6名が参加していました。

スロープを上がると屋根に組まれた足場があり、間近に工事中のようすを見られました。
現時点では、これから傷んだ屋根材(檜皮(ひわだ:ヒノキの樹皮))を取り替えていく前準備の作業をおこなっている状態です。

また、施工業者のかたから、檜皮葺きと現状の屋根の状態について以下のような説明がありました。

  • 前回の葺き替えから50年以上の月日が経過し、雨漏りも出てきており、屋根をトタン板で応急処置している痛々しい見た目となっていた
  • 岡山県や倉敷市からの補助、氏子や参拝者からの勧進により修繕がおこなわれる運びとなった

檜皮葺きについて

今回の屋根修理に用いられる「檜皮(ひわだ)葺き」について、聞いたことあったとしても、実際どのようなものなのかは分からないですよね。

私も、ヒノキの樹皮を使っているくらいのことしか知らなかったのですが、見学会で模型や実際の屋根を見ることで理解を深められました。

このように、檜皮を何層にも重ねて、厚みのある屋根にしていくことで檜皮葺きの屋根ができ上がります。

檜皮の固定には竹で作った釘を利用して、ベースとなる木に打ち付けていくそうです。竹もヒノキ同様に水に強く、鉄のように錆が出ないので屋根にとっても理想的な材料だとのことでした。

隣の社殿は数年前に葺き替えの工事を終えていたので、まだ新しさを保っていました。葺き替え前の屋根と見比べると、状態の違いは一目瞭然でした。

揚屋工法について

今回の工事にあたり、揚屋工法(あげやこうほう)という方法で、社殿を通常の高さより1mかさ上げして作業をしています。

実際にジャッキアップしている現場にて説明を聞きましたが、1日あたり20cm、5日間かけて地面から1mの高さまで上げたと話していました。

こちらの作業の目的は、檜皮葺きの端面をカットする際に、通常の高さだとカッターを入れられないので、1mかさ上げしているとのことでした。

なお、この状態で建物を別の場所に移設する工事のことを曳家(ひきや)といい、文化財の移設保存などで時折使用されています。

備中神楽

素戔嗚尊(スサノオノミコト)

見学会と同時に、備中神楽保存振興会による「備中神楽」が上演されていたので、帰りに鑑賞して帰りました。

近年、アニメやお笑いの影響もあってかにわかに注目が集まっているような気がします。

ちょうど「大蛇退治」の演目が上演されていました。
素戔嗚尊(スサノオノミコト)が八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を退治し、三種の神器の一つである草薙剣(くさなぎのつるぎ)を賜るというお話で、備中神楽のなかでは有名な演目です。

途中に大蛇に飲ませる毒酒を造るくだりがあるのですが、その時に出てくるのがこちらのユニークなお面をかぶった酒の神「松尾明神」。

ご当地ネタや時事ネタを交えた、コントのような掛け合いをしながらの口上は軽妙で面白かったです。

おわりに

一連の見学を終え、記念品として檜皮の古材を漉き込んだお守りをいただきました。

また、今回の屋根修理に際してのクラウドファンディングについても、氏子総代のかたからアナウンスがありました。

岡山県指定の重要文化財なので、修繕工事費大部分は県や市からの補助金が充当されます。
しかし、すべてをまかなえるわけではなく、また近年の物価や資材高騰のあおり、少子化に伴う氏子の減少を受けて修繕費用の捻出に苦労しているとのことです。

古来「新熊野山」と呼ばれ、紀州(和歌山県)にある熊野本宮大社の昔の神殿の姿を残す唯一の神社として、多くの人々によって守られてきた熊野神社を未来へつないでいくためにも、微力ながら協力しようと思います。

貴重な文化財保存工事の現場を見学させていただき、ありがとうございました。
古の社に未来幸多からんことを願います。

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