『禁じられた遊び』はホラーだけど“怖くない”!? 橋本環奈と重岡大毅の“掛け合い”は必見

「ねえパパ、トカゲの尻尾を埋めたら尻尾からトカゲが生えてくるの?」

小さな息子に、そんなかわいらしい質問をされたとしたら? つい、からかいたくなって、「“ある呪文”を唱えたら、生えてくるんだよ」と小さな嘘をついてしまう気持ちも分かる。まさか、その嘘がのちのち自分を追い詰めることになるなんて……。

橋本環奈と重岡大毅がW主演を務めたホラー映画『禁じられた遊び』(2023年)が、6月5日にBlu-ray&DVDとして帰ってくる。

本作は、妻子と幸せに暮らしていた直人(重岡大毅)と、彼に淡い恋心を寄せていた元同僚・比呂子(橋本環奈)が、子どもの純粋な思いが引き起こした恐るべき怪奇に巻き込まれていくホラーエンターテインメント。人を愛するということは、美しく尊いものだと教えられてきたけれど、本作を観ると“愛”ほど人を狂わせるものはないのではないだろうか……とゾッとする。

比呂子と直人を追い詰める最凶モンスター・美雪(ファーストサマーウイカ)は、夫の直人を心の底から愛していた。それも、重すぎるほどに。だからこそ、裏切られたときの反動が凄まじい。事故死した美雪の指を土に埋めたら、彼女がよみがえってきた……なんて、現実離れをしている設定のようだが、その核にはリアルすぎるほどの人間の感情が渦巻いている。嫉妬、恨み、執念。どんな人の心にも存在するであろう邪気をすくい取っているからこそ、本作は人間ドラマとして観ても面白い。

ちなみに、筆者はホラー映画が大の……とまではいかないが、ちょっぴり苦手。中田監督の以前の作品『スマホを落としただけなのに』(2018年)を観たあとはしばらく引きずったし、今でも“あの”衝撃的なシーンを思い出すとゾワっとなる。そのため、『禁じられた遊び』も覚悟を決めて鑑賞したのだが、怖すぎてむしろ怖くないというか。グロテスクなシーンもあるのだが、なぜか笑えてきたりする。“おも怖”(=おもしろ怖い)をアピールしてきただけあり、ホラー映画が苦手な方でも楽しめる作品になっている。

また、重岡大毅の“良きパパっぷり”を堪能できるのも嬉しい。『#家族募集します』(TBS系)、『単身花日』(テレビ朝日系)と、さまざまな媒体を通して、重岡×子どもの親和性の高さは証明済み。『禁じられた遊び』でも、妻を愛し、幼い息子を大切に育て、家族の幸せのために頑張って働いているパパ役がとてもハマっている。

爽やかでカッコいい面だけでなく、だんだんと狂っていくような思い切りのある演技ができるのも、重岡の強みだ。これは、橋本環奈にも通ずるところがある。本作において橋本は、同僚の直人に淡い恋心を寄せていたとき、会社を辞めて映像ディレクターになったとき、そして美雪の死後……と段階によってまったく違う表情を見せている。最初は、“THE 正統派ヒロイン”という感じの愛らしくピュアな雰囲気を纏っていたが、次第にやさぐれモードに入り、最終的には恐怖の渦に巻き込まれていく。

そして、ホラー映画の成功の鍵を握っているといっても過言ではないのが、出演者のリアクション。撮影が始まる前、中田監督に「ホラーはこれでもかっていうくらい驚いたり、恐怖のお芝居をしないと、観ていて自然に見えない」とアドバイスを受けていた橋本。その期待に応えるように、全力のリアクションを披露していた。

そのほか、ファーストサマーウイカの“怪演”にはMVPを捧げたい。序盤は家族を愛する良き妻であり、良き母……というように見えるのだが、どこかに毒を潜めているような。生きているのに、どこか浮世離れしているような。“何か”あるぞ、と少しずつ匂わせていく繊細な演技が印象的だった。そして中盤以降は、その毒をバーンと爆発させていく。本作は、ファーストサマーウイカが演じる“令和のホラーアイコン”美雪のおかげで、ビジュアルとしても楽しめる作品に仕上がっている。

6月5日発売のBlu-ray&DVDでは、あの“おも怖”を何度も蘇らせることができるのが嬉しい。また、特典映像も充実度が高い。とくに、メイキング集「豪華キャストの撮影日誌」は、重岡が息子役の正垣湊都と戯れているシーンがたくさんあり、観ているだけで癒された。虫いじりや手遊びをして緊張をほぐしてあげたりと、撮影の合間にも“良きパパっぷり”を披露していた重岡。橋本と重岡が繰り広げるテンポの良い掛け合いも、ホラー映画のメイキングなことを忘れてゲラゲラ笑ってしまう。さらに、ファーストサマーウイカの4時間を超える特殊メイクの秘密や、ホラー映画が完成するまでの“裏側”をたっぷり観られるので、キャストファンはもちろん、ホラー映画を愛する人にはぜひチェックしていただきたい。

(文=菜本かな)

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