森林破壊ゼロへ ユニ・チャームが国内初、生理用ナプキンにPEFC認証パルプ採用

吸収体など特殊な技術を用いたさまざまな紙を組み合わせて製造される生理用ナプキンは、認証パルプ100%とすることが難しかった

衛生用品大手のユニ・チャームは6月5日の世界環境デーに合わせて、生理用品ブランド「ソフィ」の原材料に、国内の生理用品で初めて、持続可能な森林管理を促進する世界最大規模の森林認証制度の一つであるPEFC認証パルプを採用する。同社は2030年に向けた環境目標の中で、調達対応において「森林破壊に加担しない」を掲げ、紙ナプキンや紙おむつなどの原料の「認証パルプ」への100%切り替えを目指しており、2022年11月に同認証制度に加盟する日本の財団法人と「持続可能な森林の利用と保護の共同推進に関する覚書」を締結したことなどを背景に、今回の初採用が実現。これを機に切り替えを進め、2030年には目標を達成する見通しだ。(廣末智子)

ユニ・チャームが国内の生理用品で初めて、PEFC認証パルプを原材料に使用した『ソフィ はだおもい』と『ソフィ はだおもいORGANIC(R)』シリーズ

PEFC(Programme for the Endorsement of Forest Certification)は、世界各国の森林認証制度の自主性を尊重し、それらを統一的かつ高レベルで確立・運用する認証プログラム。1999年発足の欧州11ヵ国による「汎ヨーロッパ森林認証」を前身とし、現在、加盟する50以上の国と地域の森林認証機関が、それぞれの森林認証制度を相互認証する形で運用している。日本では一般社団法人緑の循環認証会議(SGEC=Sustainable Green Ecosystem Council)が2014年にPEFCに加盟し、2016年に相互承認されている。

同じく世界的な持続可能な森林認証制度であるFSC(Forest Stewardship Council)が、世界共通の規格に基づいて審査されるのに対し、PEFCは、各地の認証制度とPEFCによる承認を通じてグローバルな要素とローカルな要素の融合をモットーにしたビジネスモデルを提唱しているのが特徴。適切な森林管理を審査・認証する「FM(Forest Management)認証」と、加工・流通過程を審査・認証する「CoC(Chain of Custody)認証」の2つで構成する点は共通する。

2020年にFSC100%からPEFC100%に目標切り替え

ユニ・チャームは、紙おむつや生理用品などの衛生用品を約80の国と地域に展開する。「持続可能な原料調達」を巡っては、事業活動における環境問題への取り組みの一環として、早い段階から力を入れ、2015年の段階で、「森林由来の原材料調達ガイドライン」を策定するとともに、2020年には「紙・パルプの調達先の第三者認証」を100%とする目標を立てていた。

もっとも当時はFSC認証の採用を模索していたが、国ごとにFSCの普及率が異なるなどグローバル企業ならではの難しさがあり、目標の実現が難しかった。このため、「2050年ビジョン」を策定した2020年に対象をPEFC認証材に切り替え、改めて2050年の「自然森林破壊“0”社会の実現」を掲げるとともに、2030年の「自社工場のPEFC・CoC認証取得100%」と「PEFC認証材の調達比率100%」の目標を設定し直した経緯がある。

パッケージに「PEFC認証ラベル」を掲示した日本の赤ちゃん用おむつ(上)と、韓国の赤ちゃん用おむつ

同社によると、これまでに赤ちゃん用の紙おむつ製品では、PEFC「CoC認証」を取得した工場で生産し、パッケージに「PEFC認証ラベル」を付けた商品を販売しているが、生理用ナプキンでは未対応となっていた。このほど公開された「サステナビリティレポート2024」によると、全体の紙パルプの原料調達における、PEFC認証材の調達比率は、2021年が76.0%、2022年は72.3%、2023年度は72.6%(いずれも目標は75%)と70%台前半で推移している。

また上記レポートによると、同社の製品の「吸収体」で使用されているパルプの多くは、北米および南米のFM認証林の針葉樹から作られており、生物多様性に著しい影響を与えるHCVF(High Conservation Value Forest、保護価値の高い森林)やHCSF(High Carbon Stock Forest、泥炭地のような炭素貯留量の多い森林) から伐採された原材料は使用しないよう、サプライヤーに要請している。その結果、2023年度の森林由来原材料(パルプ)の原産地トレーサビリティ比率は、グループ全体で99.2%に達したが、2024年度にはこれを100%とする目標だ。

こうした現状を踏まえ、PEFC認証パルプの調達比率をさらに加速させるため、同社は2022年11月に緑の循環認証会議(SGEC/PEFCジャパン)との間で、PEFCラベルの使用や露出を増やす、サプライチェーンへ持続可能な森林利用の働きかけを行う――などを項目とする「持続可能な森林の利用と保護について共同で推進する覚書」を取り交わした。その際、SGEC/PEFCジャパンは同社を「PEFC認証制度を支持し、自社の製品にPEFCラベルに誇りを持って使用し、PEFCと提携・共同して普及をけん引していくメーカー、ブランド」を指す「チャンピオン企業」の第1号に認定し、これが契機となって、今回、国内の生理用ナプキンで初めて、「ソフィ はだおもい」と「ソフィ はだおもいORGANIC(R)」シリーズの原料にPEFC認証パルプを採用することが実現したという。

世界初、使用済み紙おむつの水平リサイクルブランドの展開も

使用済み紙おむつからから新しい商品をつくる同社独自の水平リサイクルブランド、「RefF」のロゴマーク

同社は2015年から鹿児島県志布志市と大崎町との協業の下、使用済み紙おむつ(紙パンツ)の水平リサイクルプロジェクトに取り組み、2022年には世界で初めて、使用済みの紙パンツを脱水・裁断・洗浄し、独自のオゾン処理を施して清潔なパルプを再生し、新たな紙パンツを作り出すことに成功。「Recycle for the Future」の頭文字をとった、同社独自の水平リサイクルブランド、「RefF(リーフ)」として一部の病院や介護施設で介護用紙パンツとして展開するほか、今年4月には一部の地域や店舗で同ブランドの大人用紙パンツのほか、赤ちゃん用の紙パンツ、ペット用シートなども販売している。

こうした国内外における環境に対する活動を生活者に知ってもらうことを目的に、同社はこのほど「ユニ・チャームが考える、今できるサステナブルキーワードは、えらぶ・つかう・めぐらせる」と題した特設サイトを公開。また7月中旬まで、取引先小売業22社と共に、環境に配慮した商品の売り上げの一部を地域の植林や間伐などの森林整備活動を行う団体に寄付する「“未来へつなぐ『えらぶ・つかう・めぐらせる』”キャンペーン」を展開中だ。

今回、国内で初めて生理用品にPEFC認証パルプを採用したことの意義について、同社の広報担当者は、「より多くの生活者にサステナブルな商品の選択肢として認証パルプを使用したソフィ商品を認知していただき、『えらぶ・つかう・めぐらせる』ことへの気づきを深めてほしい」と話している。

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