モディ首相の3期目が確実に、与党大勝とはならず インド総選挙

インド総選挙が4日、開票され、与党・インド人民党(BJP)を中心とする与党連合が過半数を維持し、ナレンドラ・モディ首相が3期連続で政権を握ることが確実になった。事前には与党側の大勝も予想されたが、実際には接戦となった。モディ氏は勝利を宣言した。

議会下院の543議席が争われた。最終結果はまだ出ていないが、モディ氏率いるBJPが、過半数議席を確保できないものの、240議席近くを取って第1党となる見通し。連立を組む政党の議席と合わせると272議席を超え、与党連合・国民民主同盟(NDA)として過半数を維持するとみられる。

モディ氏は支持者らを前に勝利を宣言。「今日の勝利は世界最大のものだ」、「インド人の勝利だ」と述べた。また、過去2期10年の「よい仕事」を継続するとし、貧困が「この国からなくなる」までやめないと誓った。

モディ氏は連立を組んで、連続3期目の政権を掌握する見込み。インドの初代首相ジャワハルラール・ネルー氏の記録に並ぶことになる。

ただ、今回の結果はモディ氏にとって打撃となった。同氏はグジャラート州首相時代から、選挙では常に過半数を確保し、ここ10年間は国の政治を支配してきた。

一方、最大野党・国民会議派を軸とする野党連合・インド国家開発包括同盟(INDIA)にとっては、驚異的な「復活」となった。獲得議席は190を超えており、投票前の情勢調査や、投票所での出口調査に基づく議席予想を大きく上回った。

選挙は7週間にわたり、6億4000万人以上が投票した。選管当局は「世界記録」だとしている。投票者の半数近くは女性だった。

与党はなぜ議席を減らした

BJPが改選前から議席を50以上減らすことは、モディ氏の3期目への期待が薄れていることを示している。モディ氏は与党連合で400議席を目標に掲げていた。

この大幅な議席減は、高い失業率、物価上昇、不平等の拡大、物議を醸している軍の採用改革などが関係しているとみられる。特にイスラム教徒に厳しい言葉を浴びせ、分裂を招くようなモディ氏の選挙運動も、一部地域で有権者を遠ざけた可能性がある。

一方、モディ氏の支持者らは、同氏が3期目を確実にしたのは、安定した統治実績、継続性への期待、効率的な福祉対策、インドのイメージを世界的に高めたことなどが理由だとしている。

選挙結果から読み取れること

BBCのスーティク・ビスワス・インド特派員は、今回の選挙の結果から、以下のことが読み取れると解説する。

「モディ」ブランドにかげり

モディ氏の人気は、日常的な出来事をスペクタクルに変える巧みなブランディングと、抜け目ないメッセージ発信にも起因している。

しかし今回の結果は、その「モディ」ブランドが輝きを失ったことを示している。モディ氏といえど、一般的な現職批判の影響を受け、無敵ではないということであり、野党に新たな希望をもたらした。

連立政治への回帰

BJPは、2014年や2019年の選挙では単独過半数を確保し、全能と思われていた。しかし、今回は過半数を下回り、政権樹立のためには他党を頼りにしなくてはならなくなった。

インドでは連立政権が混乱を招いた歴史がある。ただ1990年代前半と2000年代には、経済改革で重要な役割を果たした連立政権もあった。

BJPは今後、他党との協議や熟慮がより求められることになる。連立を組む相手が軽視されていると感じれば、協力関係は崩壊のリスクが高まる。

野党の復活

野党連合INDIAにとっては、活力を得る結果となった。

INDIAは2月、主な指導者の一人のニティシュ・クマール氏が離党し、BJPに復帰したことで混乱状態に陥った。

しかし、ラフル・ガンジー氏が率いる野党側は、党派色の強いメディアを前に、少ない資源にもかかわらず気迫のこもった選挙運動を展開し、与党側との差を縮めた。

インドでは今後1年2カ月で5州の選挙が予定されており、いずれも激しい争いになる可能性がある。

モディ政権3期目の意味――ビスワスBBCインド特派員

モディ氏の政権3期目は何を意味するのだろうか。

インドが必要としているのは、もっと多くの仕事と癒やしだ。

政府支出に支えられた経済は上向きだ。しかし格差は拡大している。民間投資と消費が拡大しなくてはならない。消費を増やすためには、貧困層と中間層の収入を増やす必要がある。

十分な仕事がなければ、それは実現しない。野心と不満が渦巻くインドでは、若い有権者はBJPから離れる可能性が高い。人口10数億人の4割近くは25歳未満だ。

モディ氏は、インド最大の少数派であるイスラム教徒を疎外し、暴力の矢面に立たせたとして、批判されている。同氏の政権も、野党有力者をでっち上げの罪で投獄するなどして反対派を抑圧していると非難されている。

多くの指導者にとって、3期目は不安定なものとなることが珍しくない。予測や予期ができない出来事によって、政権とその計画が吹き飛ぶこともある。

(英語記事 Why India's Modi failed to win outright majorityModi-led alliance wins closer-than-expected Indian election

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