エッフェル塔近くに「ウクライナのフランス兵」と書かれた棺 ロシア関与の疑いと仏当局

フランス・パリのエッフェル塔近くで1日、フランス国旗がかけられ、「ウクライナのフランス兵」と書かれた五つの棺(ひつぎ)が置かれているのが見つかった。仏情報当局は、ロシアが関与しているとみている。

現場では1日午前9時ごろ、バンに乗ってやって来た3人が目撃された。3人が置いていった棺の中には、袋に入った石膏があった。

警察はすぐにバンの運転手を逮捕した。運転手はほかの2人から40ユーロ(約6700円)を受け取り、棺を運んだと主張している。運転手は前日にブルガリアからパリに到着したばかりだったとされる。

警察はその後、パリ中心部のベルシー・バス乗り場からドイツ・ベルリン行きのバスに乗ろうとしていたとされる残りの2人を拘束した。

2人は400ユーロ(約6万7000円)と引き換えに棺を運んだと警察に話したと、仏メディアは伝えた。

運転手はブルガリア人、ほかの2人はウクライナ人とドイツ人だと、警察は明らかにした。

検察当局は、3人について「計画的な暴力行為」に関する司法調査が開始されるとしている。「海外からの組織的犯行かどうかを判断」するという。

世論に揺さぶりか

今回の事案は、昨年10月以降に起きた、仏警察がロシアの工作員の関与を疑った二つのケースを思い起こさせるものとなっている。それらはいずれも、世論を操作する目的だったとみられている。

昨年10月のケースでは、イスラム組織ハマスがイスラエルに前代未聞の攻撃を仕掛け、約1200人を殺害し、数百人の人質を取った後、パリとその近郊で、ユダヤ人を象徴する「ダビデの星」の落書きが相次いで見つかった。仏当局は「反ユダヤ主義的」な行為だとして捜査を開始し、モルドヴァ人のカップルを逮捕した。2人はロシアの情報機関から金銭を受け取っていたと、仏当局は見ている。

今年5月のケースは、パリの第2次世界大戦中のユダヤ人などの大虐殺(ホロコースト)の犠牲者を追悼する「ショア記念館」に、赤い塗料で手形が描かれているのが見つかったというもの。警察は犯人が海外に逃亡したと考えている。

仏紙ル・モンドは捜査関係筋の話として、棺に絡んで1日に拘束されたうちの1人は、赤い手形の事件で指名手配されてるブルガリア人容疑者と電話で連絡を取り合っていたと報じた。同紙はこの容疑者は34歳のゲオルギ・Fだとしている。

ロシア政府は5月、エマニュエル・マクロン仏大統領が繰り返し、ウクライナに仏兵士を派遣する可能性を否定しなかったことに憤りを見せていた。

先週にはウクライナ当局が、仏軍の教官の派遣について話し合いがもたれたことを認めた。

こうした動きが、今回の事件の背後にあるのかもしれない。フランスがウクライナでの戦争に深く関与することに、ロシアの情報機関が強く反対していると示そうとしていると、捜査当局は考えている。

ダビデの星と赤い手形の事件では、犯行集団にカメラマンが含まれ、現場の写真が事件後にロシアのプロパガンダと関連のあるインターネットサイトに掲載されている。

(英語記事 Russia link suspected in Eiffel Tower coffin mystery

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