一見上手な「薔薇の精霊」のイラスト、プロの添削でどう変化? “しっくり来ない”原因を解きほぐす解説動画がスゴい

「ポケモンカード」公認イラストレーターで、イラスト上達法に関する多くの著作を持つさいとうなおき氏が、自身のYouTubeチャンネルで「添削動画」を展開している。最新の動画は「しっくり来ない原因はコレです!!」と題されたもので、なぜか完成した絵が「しっくり来ない」という、イラストレーターの“あるある”ともいえる問題を解決する内容だ。

今回取り上げられた添削希望作品のタイトルは「薔薇の精霊」。このイラストを手がけたクリエイターは、動画タイトルの通り「絵がしっくり来ない」という悩みを抱えているという。薔薇のイメージにぴったりの可憐なキャラクターに仕上がっているように見えるが、プロの目線ではいったいどんな課題があるのか。

さいとう氏はいつものように、作品の長所から解説。「色がバッチリ決まって見やすい」「薔薇の精霊というコンセプトがよく伝わる、分かりやすい色使いができている」と、彩色のセンスを評価した上で、「しっくり来ない」のはクリエイター自身の感覚であり、究極のところ、その原因は本人にしかわからないと語った。「しっくり来ない」状態を解決する一番の方法は、違和感がなくなるまでじっくり調整し、自分がしっくり来るポイントを突き止めること。さいとう氏は「それができるようにお手伝いしたい」として、解説をスタートした。

詳しくは動画をチェックしていただきたいところだが、さいとう氏がこのイラストの「しっくり来ないポイント」と考えたのが、「形の取り方」だ。コンセプトも色合いもよく、構図もわるくないのに「しっくり来ない」のは、薔薇や目をはじめとする様々なパーツの「形」が不完全だからだという。さいとう氏は「逆にいうと形を丁寧に取るだけで、その他に何も変えなくても超“しっくり来る”絵になると思う」と語り、実際にイラストに手を加えていくことに。

「形の取り方」とはどういうことか。例えば、元のイラストは向かって左側の目(右目)が少し大きく、それが全体のバランスを崩しているという。そう聞いて、さいとう氏が実際に調整して見せると、なるほどしっくり来る。まつ毛の濃さなども左右で差があり、その辺りの形を整えることで、どこかチグハグだった印象が改善していく。左右で重みが変わるクリエイターのクセを分析した上での的確なアドバイスが送られた他、「薄目でぼんやり見てみる」など、アンバランスや違和感に気づくための一般的なポイントも解説された。

その後も、瞳の中に入ったハイライト、輪郭から鼻と口、髪の毛、服に薔薇と、ポイントを解説しながらそれぞれの形を丁寧に整えていく。そうして全ての添削を終えたイラストは、画面全体の構成や印象は変わらないまま、確かに「しっくり来る」プロクオリティの作品に生まれ変わっていた。「雑に描いてしまった形をもう少し丁寧に描いてみる」というのが、この「しっくり来ない」問題への一つの解答ということになりそうだ。

各種SNSやウェブサービスの拡充により、漫画やイラストを世の中に届けやすくなった昨今。独学で優れた作品を生み出し、商業的に成功するクリエイターも増えているが、一方で、独学ゆえに自分ではなかなか気づけない問題を抱え、それがボトルネックになってしまっている人も多そうだ。特に今回のテーマになった「しっくり来ない」という曖昧な問題については、こうして実演も交えて解きほぐしてくれるプロの存在は貴重なものだ。プロのイラストレーターを目指しているクリエイターはもちろん、思わず唸らされるプロの発想や技術に触れたい人も、ぜひ動画をチェックしてみよう。

■参考動画:https://www.youtube.com/watch?v=2ooAK4_udz0

(小原良平)

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