「戦争はまだ続いています」ウクライナの窮状を憂える女子テニス選手スビトリーナが、ウインブルドンに対し支援を要望<SMASH>

現在開催中のテニス四大大会「全仏オープン」に出場したエリーナ・スビトリーナ(ウクライナ/世界ランク19位)が、エレーナ・ルバキナ(カザフスタン/同4位)に敗れた4回戦後の会見で、ウインブルドンに対しウクライナの選手たちへのサポートを訴えた。

今なおロシアによる軍事侵攻にさらされているウクライナでは、当然ながらテニス選手たちの窮状も続く。7月に開催されるウインブルドンの主催者「オールイングランド・ローンテニス・アンド・クローケー・クラブ」(AELTC)へ向けて、スビトリーナは宿泊代などの支援を期待していると呼び掛けた。

「戦争はまだ続いています。ウクライナの選手たちは皆、国のために多くのことをしています。ですから、以前してくれたように、ホテル代や追加の部屋を提供してくれたら、本当に信じられないほどうれしいことです」

AELTCは昨年、ウクライナの選手たちへグラスコートシーズンのホテル代(2部屋分)と練習施設を提供。さらに、チケット1枚につき1ポンドをウクライナの救済基金に寄付、ウクライナからの避難民を1日1000人無料招待していた。しかし、今年はいまのところそうした支援策が発表されていない。戦争が長期化する状況下、ウクライナに関する議論が減っていることについて問われたスビトリーナはこう述べている。
「もちろん、とても残念なことです。友人や知り合いの多くが今まさに最前線にいて、この恐ろしい戦争で命を落としていることを私は知っているから。人々やメディアがこのことについて話していないのは悲しいです。

確かに世界では他の戦争も起こっているし、他の出来事も起きている。でも、私の親しい友人や毎日話している人たちが今まさに戦っているのですから」

ロシアによるウクライナ侵攻が始まり、精神的なストレスを理由にツアーから離れていたスビトリーナ。2022年にはガエル・モンフィス(フランス)と間にスカイちゃんを出産し、ウクライナ支援のチャリティー活動も精力的に行なっていた。昨年2月には、産婦人科の病院への訪問と寄付などのため、母国へ一時帰国も果たしている。

そして昨年4月にツアー復帰を果たすと、5月の「ストラスブール国際」ですぐに優勝し、賞金の全てをウクライナの子どもたちに寄付。さらにウインブルドンでは、ビーナス・ウィリアムズ(アメリカ)やソフィア・ケニン(アメリカ)、ビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)に加え、世界1位のイガ・シフィオンテク(ポーランド)まで倒してベスト4に進出した活躍が記憶に新しい。

母親となり戦争も経験し、新たな原動力と共に戦う彼女の声は、ウインブルドンに届くだろうか。

文●中村光佑

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