豪軍、外国籍の永住者の入隊認める方針 人手不足解消が狙い

オーストラリア国防省は4日、豪軍兵士の採用基準を7月から緩和し、一部の外国人の入隊を認める方針を発表した。同国は新兵不足に悩まされており、それを解消する狙いがある。

オーストラリアは地域的な脅威が高まっているとして、軍の強化を図っている。

今年7月からは、オーストラリアの永住権を持つニュージーランド国籍保持者が入隊を申請できるようになる。来年からはイギリス、アメリカ、カナダなどに対象国を拡大するという。

リチャード・マールズ国防相は、同国とニュージーランドには第1次世界大戦の「ガリポリの戦い」で共に戦った歴史があり、長年にわたる「ANZAC(アンザック)の絆」で結ばれていると述べた。ANZACとは、第1次世界大戦中に編成されたオーストラリア・ニュージーランド軍団の頭文字。

オーストラリアは近年、イギリスやアメリカとの関係強化も図っている。2021年には、インド太平洋地域における中国の軍拡に対抗することを目的とした広範な防衛・安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」を構築した。

オーストラリア、イギリス、アメリカ、カナダ、ニュージーランドは「ファイブ・アイズ」(五つの目)と呼ばれる同盟のもと、情報共有においても緊密に連携している。

4400人が不足

豪軍兵士の採用については、これらの国々からの採用に重点が置かれているが、マット・ケオ国防人事担当相は来年1月1日からは永住権保持者なら「誰でも」申請できるようになるとしている。

豪政府は中国政府の強気な姿勢について懸念が高まっていると繰り返し表明している。

昨年公表されたオーストラリア国防軍(ADF)の戦略に関するレビューは、そうした懸念に対抗するための重要措置として、「高度に熟練した国防要員の強化と保持」が必要だと指摘している。

スコット・モリソン前政権下の2020年には、2040年までに380億豪ドルを投じ、国防要員を30%増やすと発表した。

しかし、ケオ氏によると、同国では失業率が低く、採用が「非常に困難」な状況だという。最新の政府データは、ADFがすでに約4400人不足していると推計している。

オーストラリアは過去に、少数の同盟国から何人かの軍人を受け入れたことはある。しかし今回示された新たな入隊資格規定は、入隊の可能性のある人材の枠を大幅に広げることを目的としている。

入隊するには、ADFの入隊基準と安全保障上の要件を満たすだけでなく、1年以上オーストラリアで暮らす永住者であること、そして過去2年間に外国の軍隊に所属していないことが条件となる。

また、オーストラリア市民権の取得資格があることも必須となる。入隊から90日後に市民権の付与が提示されることが「見込まれる」と、ケオ氏は説明する。

野党の外務担当スポークスマンは、野党はこの計画に反対ではないが、政府の防衛戦略はADFの信頼と士気を低下させていると述べた。

「私たちはオーストラリア人がオーストラリアの軍服を着ている姿を見たい。それが理想だ」と、サイモン・バーミンガム上院議員(野党・自由党)はスカイニュース・オーストラリアに語った。

(英語記事 Australian army to allow recruits from foreign nations

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