豚熱まん延防止の取り組みとは? 野生イノシシに免疫を付けるためワクチン入りの餌を地中に埋める 豚熱対策や有害駆除の現場

5月に岩手県内で初めて養豚施設で豚熱が確認され、県は殺処分などの防疫措置を進めています。養豚施設での豚熱は野生のイノシシが感染源の一つと考えられています。イノシシの豚熱対策や有害駆除の現場を取材しました。

雫石町の猟友会の会員で構成する鳥獣被害対策実施隊の久保田功さんです。4日、メンバーで手分けをしてイノシシの出没が多い町内5か所で経口ワクチン入りの餌を散布する豚熱対策を行いました。こちらが豚熱のワクチンが入った餌で、イノシシが好むトウモロコシなどで作られています。この対策は豚熱の感染源の一つとされる野生のイノシシに免疫をつけさせることで養豚場へのウイルスの侵入を防ごうと2年前から県が主体となって行っているものです。鼻を使って地中の餌を探すイノシシの習性に合わせて穴に埋めていきます。久保田さんらは1か所につき穴を10個合計20個のエサを埋めて今後、イノシシが食べたかどうかを定期的に観察します。県では野生のイノシシで豚熱の感染が確認された周辺をメッシュ状に感染確認区域として設定しています。

2022年4月に宮城県との県境付近で確認された野生イノシシの豚熱感染はその後、奥羽山脈に沿って北上し2023年からは県北や沿岸部でも確認されるようになりました。雫石町農林課の村上敦美さんは鳥獣被害対策専門員として狩猟や有害駆除の最前線に立って4年目になります。町内では2022年7月、捕獲された野生イノシシから初めて豚熱の感染が確認されました。

(村上敦美さん)
「いよいよ雫石にも来てしまったかという感じで、緊急で皆さんに集まってもらって、ここからは消毒の徹底を皆さんにお願いしました」

町内での野生イノシシの豚熱感染は今年度、5件に上っています。捕獲したイノシシが豚熱に感染しているケースもあることからウイルスとの接触に神経をとがらせています。捕獲によってイノシシの頭数を適正に保つことと経口ワクチンの散布や消毒の徹底による豚熱のまん延防止。野生動物と人間の暮らしの境界線を守る取り組みが続けられています。

© 株式会社アイビーシー岩手放送