試合巧者だった広島。FC東京は決めるべきところで決めていれば…【ルヴァン杯/コラム】

2024年6月5日、FC東京が味の素スタジアムでルヴァンカップのプレーオフラウンド第1戦に臨んだ。長友佑都、松木玖生、荒木遼太郎、野澤大志ブランドン、バングーナガンデ佳史扶の5人を代表活動で欠くそのサンフレッチェ広島戦、ホームチームはそれでも立ち上がりから仲川輝人や俵積田晃太らを軸に鋭い攻めを見せた。

そもそもタレントはいるのだ。例えば荒木と松木が不在の前線のポジションに起用されたのはディエゴ・オリヴェイラと仲川なのだから、豪華な布陣である。

しかしタレントがいるからといって、それだけで勝てないのがサッカー。実際、FC東京は10分に加藤陸次樹、直後の11分に松本泰志にゴールを決められ、劣勢を強いられてしまった。20分あたりから再びペースを握るものの、ゴールはD・オリヴェイラがPKで決めた1点のみで結果は1-2。先勝できなかった。

個人に目を向ければ、仲川の活躍は評価に値した。切れ味鋭いドリブルでチャンスを演出し、絶妙なスルーパスでPK奪取のきっかけも作った働きは見事だった。ただ、サッカーは個人競技ではない。あくまでチームスポーツだ。

この日の広島が特別素晴らしい出来だったとは思わない。それでもプレスで行くところは行っていたし、そこを剥がされてもDF陣が連動した守備でボールを奪い返していた。押し込まれた後半も粘り強いディフェンスで対抗。チームとして勝負どころをおさえていたのは広島だった。

FC東京が連動した崩しでシュートまで持ち込むシーンは1回や2回ではなかったし、決めるべきところで決めていれば、あるいは違う結果になっていたかもしれない。しかし、結果は1-2である。

チャンスをしっかりとモノにし、守るべき時間帯にしっかりと守った。この日の試合巧者は明らかに広島だった。

取材・文●白鳥和洋(サッカーダイジェストTV編集長)

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