東京都・小池百合子知事に聞く/都市の強靱化を加速、40年代までに17兆円投資

強靱で持続可能な首都づくりを強力に進める東京都。2023年12月には防災対策のレベルを上げる「TOKYO強靱化プロジェクト」をアップグレード。総事業費を増額し、対策目標を引き上げた。都内各地では再開発プロジェクトも活況で、都は4月に築地市場跡地(中央区)再開発の事業予定者を選定。民間の力を最大限活用し、ベイエリアの発展に寄与するまちづくりが本格化する。小池百合子知事に話を聞いた。
--強靱化の取り組みを一層加速させる。
「40年代の完了を目標に、総事業費で計17兆円(従来15兆円)を投じる。このうち当初の10年間(23~32年度)で7兆円を充てる。風水害対策では新たな地下調節池の事業化を進め、必要な貯留量を確保する。長時間降り続く豪雨に対応するため、地下調節池を連結し、海までつなげる地下河川の事業化に向けて取り組んでいる」
「洪水を防ぐには降った雨を全て川に流すのではなく、地下に水を染み込ませることも重要だ。24年度は30カ所の公共施設でレインガーデンなどを先行設置する。区市町村や個人がグリーンインフラを導入する場合、都が費用を補助する制度を始めている」
--強靱化予算をどう確保する。
「都が展開する全事業に『終期』を設定し、終期が来る事業の検証を徹底している。見直しや再構築により、毎年度約1000億円の財源確保につなげている。それを防災分野などに投資し、都民の命と安全を守る。同時に健全な財政運営を続ける」
--築地市場跡地の再開発の方向性は。
「東京のアイコンになる水辺の景観を創出するとともに、新しい文化を創造・発信する拠点になることを期待している。事業予定者からは大規模集客・交流施設、MICE(国際的なイベント)施設、シアターホールなど多様な機能を導入すると聞いている。イベント開催の有無にかかわらず人が集まる、魅力のある場所にしていく」
「築地まちづくりが前進することで周辺地域の付加価値が向上するなど波及効果も期待できる。東京の持続的な成長につなげ、都民にとっても価値のある場所にしていきたい」
--アクセス性をどう高める。
「事業予定者の計画では、都の防災船着き場整備に合わせ、待合機能やにぎわい機能を持つ舟運利便施設や新たな船着き場を造る。さらに、地下鉄の新駅開設を見据えた交通広場のほか、空飛ぶクルマのポートの整備も示されている。陸海空の広域の交通結節点を形成し、交流を促していく」
--4月から建設業に時間外労働上限規制が適用された。働き方改革の対応がさらに求められている。
「都は公共工事の発注者として、働き方改革を後押しする役割がある。施工時期を平準化するほか、本年度から原則として全ての発注工事で週休2日を導入した。社会保険労務士といった専門家による無料の巡回相談などを展開し、中小企業への支援も強化する」
「人材確保もしっかり後押ししていきたい。建設業へ人材のシフトを促すため、求職者と企業のマッチングイベントを開く。国や業界団体と連携し、業界の魅力発信にも力を入れる」。

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