国交省がヤマハ発動機にも立ち入り、認証不正報道の裏にある“仕込み”[新聞ウォッチ]

ヤマハ発動機の本社

闇に包まれた自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件の真相究明もないままに、自民党が提出した政治資金規正法改正案が、きょうにも衆院本会議で可決され、衆院を通過する見通しという。野党からは「問題先送りの逃げ切り法案」とも批判されるなど、その生煮えの改正案から目をそらすには絶妙のタイミングで表沙汰になったのが、トヨタ自動車など大手5社による「型式指定」をめぐる不正問題である。

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例えば、きょうの読売の1面をみても、「規正法きょう衆院通過」のニュースよりも「認証不正6車種試験月内完了」の記事の方が大きい扱いだ。「国土交通省が不正のあった38車種のうち、不正が判明するまで生産・出荷していた6車種の安全性などの試験を月内に完了する方針を固めた」というもので「経済への影響を最小限に抑えるとともに、早期にユーザーの安全・安心を確保する必要があると判断した」という。

また、認証不正の関連記事としては、国交省が、トヨタに続いて静岡県磐田市のヤマハ発動機の本社にも、道路運送車両法に基づく立ち入り検査を開始。そのニュースも読売は6月5日夕刊の1面トップ記事で報じたほか、きょうの朝日や産経なども「ヤマハ発も立ち入り」などと取り上げている。ヤマハ発動機が全国紙の1面トップを飾るのも極めて珍しいことである。

このうち、日経は「マツダなど3社も近く」との見出しで、「不正が発覚したマツダ、ホンダ、スズキの3社も近く立ち入り検査し、行政処分の有無や内容を判断する」とも伝えており、自民党の裏金事件の話題から目をそらす効果の“仕込み”はしばらく続く。

たしかに、読者の中には不正が発覚した車種を所有する自動車ユーザーやメーカー関係者などは、国交省による立ち入り検査の情報も気になるだろうが、一方で抜け穴だらけの不誠実な改正案で、腐敗政治からの脱却が本当に図れるのかどうかも大いに気になる有権者も少なくないだろう。

2024年6月6日付

●認証不正、6車種試験月内完了、国交省、基準適合確認へ(読売・1面)

●規正法きょう衆院通過、改正案、自民、維新要望を反映 (読売・1面)

●静岡知事、リニア一定理解、水資源保全「両立を」JR東海と会談(読売・6面)

●出生率1.20過去最低、23年東京0.99「1」下回る(毎日・1面)

●社説、トヨタなどで認証不正、おごりが招いた法令軽視 (毎日・5面)

●トヨタきょう生産停止、不正3車種、ヤマハ発にも立ち入り (産経・10面)

●「不正」なのになぜ「安全」主張?国より厳しい基準でテスト、規制複雑化認識にずれ(東京・6面)

●認証不正日本品質の驕り、EVシフト検査負担増、多機能化進み工程複雑、コスト意識「試験1回で」(日経・2面)

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