陸奥湾ホタテの稚貝確保へ漁師協力 有望海域に採苗器投入

小湊沖から引き揚げた採苗器を油川沖に沈める乗組員たち=5日午後0時半ごろ、青森市

 昨夏の高水温などによる親貝不足の影響で、近年出現が少ない陸奥湾ホタテガイのラーバ(稚貝となる浮遊幼生)を確保するため、湾内の漁業者が協力関係を築いている。より多くの稚貝の付着が見込める漁協の海域に採苗器(稚貝が付着する網状の袋)を投入することで、来年以降の安定的な水揚げ確保を目指す。

 5日は、ホタテ養殖の山神水産(青森市)の社長で、青森市漁協・油川支所に所属する神武徳さん(45)が平内町の小湊沖に沈めていた採苗器を引き揚げ、油川沖に投入した。

 青森市漁協では昨夏の高水温で9割以上の稚貝が死んだ。これに伴い今年の同社の半成貝(1年貝)の水揚げは、例年の600~700トンから計1.7トンに激減。保有する残りの半成貝5~6トンは親貝確保のため、今年は出荷しない予定だ。来年以降も養殖を継続するには、親貝となる成貝(2年貝)づくりを同時に進める必要があるためだ。

 対策として同社は今年、知り合いの漁師や漁協を通じて協力を依頼。4月下旬までに、より多くのラーバの付着が見込める平内町漁協の小湊支所、横浜町漁協や野辺地町漁協、脇野沢村漁協など計6カ所の海域に採苗器を投入した。

 同社の従業員は5日、平内町の小湊沖から、1ミリほどの稚貝が付着した1500袋の採苗器を回収した。保冷トラックで油川漁港に運び、船で沖合2キロの海域に沈めた。採苗器は稚貝が1センチに成長する7月中旬ごろまで海中に沈めておく。

 神社長は「他の漁師と協力することで来年以降のホタテの再生産(水揚げ)につながる。今年は一枚でも多くの稚貝が生き残り、来春の水揚げが回復してくれたら」と語った。

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