イスラエル、ガザ中心部で新しい軍事作戦開始

イスラエル軍は5日、ガザ地区中心部のデイル・アル・バラフとブレイジ難民キャンプの東側にかけた地域を「指揮統制」下においたと明らかにした。現地では数十人のパレスチナ人が殺害されたとの情報がある。この間、停戦と人質解放のための新しい合意に向けて交渉を仲介しているアメリカ、エジプト、カタールの担当者たちが、ドーハやカイロで協議を続けている。

イスラエル軍によると、5日午前には空からの援護射撃を受けた地上部隊が「地上と地下において、テロリストとテロリストのインフラ」に対する軍事作戦を開始した。

イスラエル軍は5日、ブレイジとデイル・アル・バラフ東部で標的を限定した新しい作戦は、「イスラエルとの国境から数キロ離れた場所で、地上と地下にあるテロリストのインフラ」を解体するためのものだと説明した。

「軍事施設、武器貯蔵施設、地下インフラを含むテロ標的に対して、複数の空爆を実施することで行動を開始した」、「空爆中にハマスのテロリスト数人が排除された」ともイスラエル軍は述べた。

イスラエル軍はその後、別の声明で、部隊がブレイジ東部とデイル・アル・バラフ東部を「制圧」したと発表。この地域で「テロリストを排除」し、ロケット弾や迫撃砲の発射装置を破壊し、いくつかのトンネル坑道を発見したと付け加えた。

現地住民は、激しい砲撃があったと報告。国際医療組織「国境なき医師団(MSF)」によると、4日から24時間のうちに少なくとも死者70人と負傷者300人が、現地の病院に搬送されており、そのほとんどが女性と子供だという。また、多くの人が重度のやけどや砲弾の破片による裂傷や骨折などのけがをしているという。

ブレイジに住む男性はBBCアラビア語に、イスラエル軍の爆撃が4日に激化したため、家族は難民キャンプを脱出したと話した。

「陸軍がまたしてもブレイジに地上作戦を展開するなど、衝撃だった」、「すべての方向から砲弾が降ってきて民家や道路に落下し、複数の市民が殺された」と男性は言い、自分や子供たちの命を守るために自宅を離れたと話した。

パレスチナのWAFA通信は5日朝、医療者や救助関係者の話として、夜にかけてイスラエルの空爆でマガジ地区の複数の民家が破壊され、少なくとも11人が殺害されたと伝えた。さらにブレイジの入り口に近い民家への空爆で2人が殺されたほか、デイル・アル・バラフの南西にある地区への銃撃ではさらに2人が殺されたという。

MSFによると、デイル・アル・バラフのアル・アクサ病院で働く医療チームの話として、「この世の終わりのような」状況だと指摘した。

医療顧問として現地入りしているキャリン・ハスター看護師は、「救急室に今朝入ったとき、血のにおいに圧倒された。大勢が床や屋外に横たわり。白い遺体袋で運ばれてくる人たちを家族が見下ろし、祈っている。感情があふれて圧倒されてしまう状況だ。十分対応できる人などいない」と、音声メッセージで述べた。

5月6日にラファ侵攻作戦を開始した時点で、IDFは民間人に沿岸部のアル・マワシ地区からデイル・アル・バラフへ続く「拡大人道地区」に避難するよう指示した。

しかし、国連パレスチナ難民救済機関(UNRWA)は3日、デイル・アル・バラフで家族が避難できる場所はなくなりつつあると警告。「安全などない状況で、安全を求めて大勢が次々と来る」ものの、「生活状況は家族の避難や救急サービスにまったく適していないし、物資は限られている」としていた。

ガザには歴史的な難民キャンプが八つあり、ブレイジは特に小さいもののひとつ。面積は0.5平方キロで、戦前にはUNRWAに4万6000人の住民が登録していた。

この難民キャンプは、ワディ・ガザ(ガザ渓谷)の河川敷と、ガザ地区中心部を東西に走りガザを二分するイスラエル国防軍(IDF)の回廊のすぐ南にある。

ヌセイラット難民キャンプとマガジ難民キャンプもブレイジの近くにあり、デイル・アル・バラフの町はブレイジの南西約5キロにある。

この4地域は現在、他地域での戦闘から避難してきた住民で混雑している。中には1カ月前にガザ最南部ラファに対するイスラエルの地上作戦が始まったことで、逃れてきた100万人以上も含まれている。

IDFは今年1月にはガザ中心部のキャンプで、ハマス戦闘員に対する地上作戦を数週間にわたり実施した。

回答待ちの交渉

この間、停戦と人質解放のための新しい合意に向けて交渉を仲介しているアメリカ、エジプト、カタールの担当者たちが、ドーハやカイロで協議を続けている。

アメリカは4日、ジョー・バイデン大統領が1日に発表した停戦へのイスラエル案について、イスラム組織ハマスからの回答を今も待っているのだと明らかにした。

カタールは、提案内容をハマスの代表団に伝達し、ハマス側は今なおイスラエル政府からの明確な意思表示を待っているのだと指摘した。

ハマスの政治部門トップ、イスマイル・ハニヤ氏は5日、終戦とイスラエルによるガザ全面撤退を前提にした提案に「真剣かつ前向き」に取り組むと発言した。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は今のところ、ハマスを敗北させ、人質全員の解放が実現するまでは永続的な停戦に応じないと、従来の姿勢を示し続けている。5日にはイスラエルのヨアヴ・ガラント国防相が、「ハマスとの交渉はすべて戦火の中で行われる」と述べた。

ガザ地区の戦闘は、昨年10月7日にハマスがイスラエル南部を奇襲したことで始まった。ハマスは1200人を殺害し、251人を人質にした。これを受けてイスラエル軍はガザ地区攻撃を開始し、ハマスが運営する保健省によるとガザ地区ではこれまでに少なくとも3万6580人が殺害されている。

(英語記事 Israel launches new military operation in central Gaza

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