「攬炒十歩」で香港は憲法上の危機

民主派の予備選挙「35+」をめぐる国家政権転覆事件の判決が5月30日に下された。31日付香港各紙によると、3人の裁判官は30日に判決を下し、この事件で罪を認めた戴耀廷・被告が「35+」計画の首謀者であると指摘。立法会議員選挙で勝利するために民主派に投票分配メカニズムを導入し、議席の過半数を獲得した後、戴氏は民主派に財政予算案への拒否権を発動させ、行政長官に「5大要求」に応じなければ辞任を迫る考えだった。行政長官の辞任に至るまでの戴氏の構想「攬炒十歩(破壊活動のための10のステップ)」は、香港に「憲法上の危機」を引き起こすもので、「空想」ではなかったと主張した。

判決では、戴氏が2019年12月に『りんご日報』で自身の考えを発表し、2020年1月初旬までに民主派陣営が会合を開き、立法会の議席の過半数を獲得するための調整メカニズムを策定を決定したと述べている。そして戴氏は「35+」計画を提案し、これは「憲法上の大きな破壊兵器」であると表明した。戴氏は「35+」計画の首謀者であり、区諾軒氏は連絡と調整を担当している。同年3月から5月にかけて「35+」計画は5つの選挙区でそれぞれ直接選挙に関する「調整会議」を開催し、戴氏は全ての会議に出席し、区氏と趙家賢氏は一部の会議に出席した。戴氏はまた『りんご日報』に「35議席以上を目標にしよう」「議会の過半数が憲法上の殺傷力を持つ武器となる」などの記事をフェイスブックや新聞に投稿するなどして「35+」計画を推進した。当時、「35+」計画の目的は非常に明確で、現行の政治制度と香港特区が基本法と「一国二制度」政策に基づいて確立した制度を弱体化し、破壊し、あるいは転覆させる計画であった。

判決は、調整会議が当時、「予備選挙」の実施、選挙フォーラムの開催、目標議席数、補欠メカニズムという4つの合意に達したと続けた。しかし、4つの合意はすべて正式な立法会選挙前のプロセスの取り決めであって、「5大要求は不可欠」をどう実現するかは問われなかった。裁判官は、戴氏の最終的な目標を考慮すると、すべての調整会議を経て大多数の候補者が拒否権を行使することで合意に達するはずだったと考えた。さらに戴氏が作成した「調整メカニズム協定」には、ひとたび当選したら基本法に基づいて立法会に与えられた予算案に対する拒否権を積極的に行使する、あるいは利用することが明記されている。戴氏は記者会見で、多くの候補者が立候補資格を失うリスクを生じさせないため、候補者らは同意書に署名する必要はないと説明した。また戴氏は記者会見で、目的は予算案に拒否権を発動し、立法会を解散させることだと述べた。

2020年の立法会選挙は、新型コロナウイルス感染症の流行により最終的に延期された。しかし裁判官は、「35+」計画が推進され、民主派が35議席以上を獲得することに成功した場合、被告らの意図は行政長官に「5大要求」を迫り辞任させることであると指摘。戴氏の推進する「攬炒十歩」は行政長官が辞任する段階で終わりで、空想ではないと述べた。判決はまた、基本法で立法会解散時に行政長官が前年度を基準に臨時財源を充てることを認めているとしても、政府の権限が大きく損なわれ香港の「憲法上の危機」を引き起こすと指摘した。

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