老朽化するハッブル宇宙望遠鏡、NASAが運用計画を発表–30年以上も運用

米航空宇宙局(NASA)は現地時間6月4日、ハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope:HST)の将来的な運用計画について発表した。

1990年に打ち上げられたハッブル宇宙望遠鏡だが、2023年11月に姿勢を制御するジャイロスコープに問題が発生。その後、ジャイロスコープのうち1台のみを使用することで科学運用を継続している

今回のNASAの発表によれば、不具合が発生したハードウェアは修理不能であり、ハッブル宇宙望遠鏡の6台あるジャイロスコープのうち機能しているのは2台だけとなる。そのため、1台のジャイロスコープを実際の運用に、もう1台を予備として使用することになる。

NASA科学ミッション本部の天体物理学部門でディレクターを務めるPatrick Crouse氏は「ハッブル宇宙望遠鏡の少なくとも1台のジャイロスコープが2035年まで稼働する可能性は70%以上ある」と語っている。ただし、1台のジャイロスコープでは、観測目標を切り替えるのに時間がかかるため、スケジュール効率が12%低下する可能性がある。観測時間に関する柔軟性も低下すると述べている。

1999年12月に3回目の整備ミッションを終えてスペースシャトル「ディスカバリー号」から宇宙に放出されたハッブル宇宙望遠鏡(出典:NASA)

ハッブル宇宙望遠鏡は当初、15年程度の運用が計画されていたが、さまざまなハードウェアトラブルを経験しながらも、30年以上も運用が続けられている。

2022年9月に、Space Exploration Technologies(SpaceX)の宇宙船「Dragon」で軌道を修正できるか検討開始。2023年1月に、地球周回高度を高めて延命するための技術アイデアを公募した

軌道高度は約540kmだが、空気抵抗から高度は少しずつ低下しており、大気圏に再突入する可能性があるためだ。軌道修正プロジェクトについて、NASAは資金を投入しないことを明言、軌道修正は民間企業が担当する可能性があるとしている。

ハッブル宇宙望遠鏡は、シューメーカー・レヴィ第9彗星が木星に衝突する様子を観測、太陽以外の恒星の周りに惑星が存在する証拠を初めて捉えるなどの成果をもたらした。宇宙の膨張速度が加速しているという現在の宇宙モデルもハッブル宇宙望遠鏡の観測結果によるものだ。

関連情報
NASA発表
Space.com

© 朝日インタラクティブ株式会社