6月10日施行の改正入管法で一体、何が変わるのか?|和田政宗 不法滞在者や不法就労者をなくす私の取り組みに対し、SNSをはじめ様々な妨害があった――。だが、改正入管法施行の6月10日以降、誰が正しいことを言っているのか明らかになっていくであろう。(写真提供/時事)

難民申請が実質2アウト制で最長1年に

昨年成立した改正入管法が6月10日に施行され、現在審議中の入管法再改正案と技能実習法改正案が成立すれば、外国人の不法滞在や不法就労を将来、なくすことができるようになる。私は参院法務委員会筆頭理事として、改正入管法に基づく送還の確実な実施、現在審議中の法案成立に力を尽くしていく。

6月10日施行の改正入管法では、これまで無制限に繰り返すことができた難民申請が実質2アウト制となる。3回目の難民申請も可能であるが、正当な理由がなければ即座に強制送還対象となる。
これまで難民申請を繰り返していた外国人については、回数は通算で数えられ、新たに3回の難民申請が可能となるものではない。

例えば、現在4回目の申請をしている人物については、その審査が終われば国外退去対象となり、新たに5回目の申請をすれば、即座に強制送還対象者となる。

6月10日の施行日以降、順次送還を実施するということで良いかと本日6日の参院法務委員会で質問したところ、法務大臣より「在留が認められない者については、改正法の規定を適切に運用して迅速な送還を実施したい。被退去強制者ごとに退去のための計画を策定し、旅券の有無や送還便の確保、関係機関との調整など実務的な準備を行い、順次送還を実施したい」と具体的な話があった。

送還対象者を速やかに帰国させ、不法滞在者を減らす。そして、現在は回数無制限で難民申請できることから難民申請が積み上がり、1回目の難民審査が終了するまで約3年かかっているが、これを迅速化し1回の審査が6か月で終了するようにする。

すなわち2回の難民申請を行っても日本に滞在できるのは最長1年となる。もし3回目の申請を行っても、正当な理由がなければ即座に強制送還対象となるので最長1年は変わらない。

当初は積み上がっている難民申請分があるので、すぐに1回の審査が6か月で終了とはならないが、難民申請回数が制限されるとともに難民と認められなかった人物の送還が進むことから、積み上がっている分の審査が終われば、1回の審査の6か月終了が実現できる。

さらに、現在審議中の入管法再改正案と技能実習法改正案では、不法就労助長罪の厳罰化や現在の技能実習生(法改正後は育成就労者)の失踪を防ぐための制度が強化される。また、外国人永住者が税や保険料納入を故意に滞納するなど悪質と判断された場合には永住許可を取り消すことができるようになる。

なぜかこの法案を「移民法」と言う人がいるが、「技能実習」を実態に即し「育成就労」と変更するものであり、正規就労の特定技能1号や、将来の永住許可にもつながる特定技能2号の枠組みに変更があるわけではない。なお、特定技能2号は熟練した技術や能力を持つ人物であり、現在48人しかいない。

我が国は移民政策を取るべきでなく、当該法案に関連して先月24日の参院本会議で私から岸田総理に質問したところ、「移民政策を取る考えはない」と総理は答弁で明言した。

どうなる、靖国神社への落書き、放尿事件

こうした法改正によって、不法滞在や不法就労をなくしていくが、そもそも不法滞在狙いの外国人の日本入国を防ぐ枠組みも作っていく。それが、私の要請で導入が確定した日本版ESTA(電子渡航認証システム)と、iAPI(相互旅客事前認証システム)である。ESTAは米国等が導入しており、事前に渡航目的や本人の属性などが審査され、問題のある人物を不認証とする。

ESTA導入前には、iAPIが先行して導入される。日本に渡航予定の外国人が海外の空港で搭乗手続きをする際、我が国の入管庁が航空会社から旅客情報の送信を受け、入管庁が要注意外国人情報と照合し、該当すれば搭乗を拒否する。必要な予算を今年度予算で確保したので、早ければ秋にも導入される見込みだ。

こうした入管体制の強化は、靖国神社への落書き、放尿事件を起こした中国人にも適用される。外務省は、今月4日の自民党外交部会・外交調査会合同会議で、我々が当該中国人の入国禁止を求めたのに対し、「手の内を明かしたくないので現時点では明言しない」と回答した。これは有り得ず、入国禁止にした上でさらに厳しく対処すればいいわけであって、外務省が何に配慮しているのか全く不明である。

これを受け、出入国在留管理庁に、「日本版ESTAが導入された際には当然入国禁止にすべき」と要請したところ、入管庁は「入国禁止対象となる」と明言した。外務省は時に「外交的配慮」という言葉を使うが、法執行機関である入管庁は、法令に基づいて当然に入国禁止とするのである。

現在は、日本への渡航ビザは外務省が管轄し、ビザなし短期渡航が可能な国からの入国者は、これから導入される日本版ESTAを含め入管庁が管轄する。私はこうしたことから、日本への外国人入国者については最終的に入管庁が全てを束ねるべきであると考える。制度整備を行っていきたい。

こうした不法滞在者や不法就労者をなくす私の取り組みに対し、SNSをはじめ様々な妨害があったが、私は粛々と実行していく。改正入管法施行の6月10日以降、誰が正しいことを言っているのか明らかになっていくであろう。

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和田政宗

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