球界一の「流し打ち名人」は誰だ?12球団打球方向ランキング

ⒸSPAIA

逆方向への打球が多いTOP10

外角球や外へ逃げる球を引っ張らず逆方向に打つ打撃を「流し打ち」と呼ぶ。その由来は定かではないが、右打者はライト方向へ、左打者はレフト方向へ打つにはボールを引き付けてミートしなければならず、高い技術が必要だ。

もちろん、中には振り遅れや打ち損じもあるだろうが、多くの打者は力の伝わりやすい、引っ張った打球の方が多い。全方位に打ち分ける打撃を「広角打法」と称えるのも、逆方向に打ち返すのは難しいことが大きいだろう。

そんな流し打ちの「名人」は誰だろうか。2024年シーズンの12球団規定打席到達者で逆方向への打球が多い打者TOP10を紹介しよう。

松本剛、門脇誠、田宮裕涼がTOP3

栄えある1位に輝いたのは松本剛(日本ハム)。なんと42.2%が逆方向への打球だ。帝京高から入団して13年目の30歳。2022年に打率.347で首位打者に輝き、今季はここまで打率.253だが主に2番として起用されている。

中堅方向が33%、引っ張りが25%と左へ行くほど割合が小さい。広角打法というより、やや右方向に偏っており、まさに「流し打ち名人」の称号に相応しいと言える。

2位は創価大からプロ入り2年目の門脇誠(巨人)。左打者のため39.7%がレフト方向で、中堅方向の32%、ライト方向の28%より多い。今季は打率.218と苦しんでおり、最近は代打などの途中出場が増えているが、奮起が期待される。

3位は今季ブレイク中の田宮裕涼(日本ハム)。37.3%がレフト方向で中堅方向は28%、ライト方向は35%となっている。打球方向の割合はバランスよく分散しており、左にも右にも打てる、まさに「広角打法」。打率.343でパ・リーグ首位打者をひた走るのも納得だ。

逆方向にも長打を打てる宮﨑敏郎

4位は亜細亜大から中日に入団して2年目の右打者・田中幹也。37.0%がライト方向で、中堅方向の35%、レフト方向の28%より多い。現在打率.236とセカンド守備での貢献度の方が高いが、バットを短く持ったコンパクトな打撃もさらに磨いていきたい。

球界を代表するスプレーヒッター、宮﨑敏郎(DeNA)は5位だった。36.0%が右方向で、中堅方向が35%、レフト方向が29%と見事に打ち分けている。しかも、宮﨑はライト方向にも長打を打てるのが強み。過去2度の首位打者に輝いた35歳はまだまだ元気だ。

6位は35.3%が逆方向の宗佑磨(オリックス)。中堅方向が32%、ライト方向が33%とほぼ均等に弾き返している。ここまで打率.252だが、広角打法でプロ初の3割を目指したい。

7位は小郷裕哉(楽天)で34.9%がレフト方向。立正大から入団6年目の今季はパ・リーグ4位の打率.282と好調だ。チームの切り込み隊長として欠かせない存在になっている。

スラッガー・細川成也もランクイン

TOP10で唯一の助っ人外国人がドミンゴ・サンタナ(ヤクルト)だ。ライト方向が34.7%と最多で、中堅方向の33%、レフト方向の32%を上回っている。セ・リーグ首位打者を走る好調の要因は、この広角打法にあると言えるだろう。

上位8人は逆方向の打球が最多だったが、9位の今宮健太(ソフトバンク)はライト方向(34.7%)以上にレフト方向(39%)が多い。力負けすることなく引っ張れるが、2番を打つことが多いためおっつけることもできる器用さの証明だろう。

10位は少し意外な気もするが、中日のスラッガー・細川成也が入った。長距離砲らしく引っ張りが43%と多いものの、ライト方向にも34.6%と打ち分けている。昨季24本塁打、今季も8本塁打30打点をマークしている要因はこんなところにもありそうだ。

参考までに、逆方向の打球が少ない打者を調べてみると、17.4%の岡本和真(巨人)、17.5%のホセ・オスナ(ヤクルト)、18.4%の山川穂高(ソフトバンク)と右の長距離砲が並んだ。やはり引っ張った方がパワーを最大限に発揮できるのだろう。

その逆を行く「流し打ち名人」たちは、プロならではの技術の持ち主と言える。今後も巧みなテクニックでファンを楽しませてほしい。

※成績は6月5日終了時点



© 株式会社グラッドキューブ